要点

対象:AIエージェントを運用し始めた担当者

  1. 点検は5段。人は治療や薬の記事だけ読む
  2. 差し戻しの多くは、出典と食い違う文
  3. 書いたAIとは別のAIに、出典を開かせる

AIエージェントの運用保守というと、止まったときの対応や監視を思い浮かべます。この記事で扱うのは、AIエージェントが書いた記事を、誰がどう点検するかです。止まったときの対応は、別の記事にまとめました。

この記事の目次(9節)
  1. 人の確認を、すべての記事では省いている
  2. 5段で、誰が何を見るか
  3. 書いたAIには点検させない理由
  4. 点検役が差し戻した数
  5. 差し戻しの中身
  6. 止まったこと・直したこと
  7. まだ分かっていないこと
  8. 人に残した仕事
  9. 自社で始めるなら

このサイトでは、記事を書くAIの出力を、公開前に5つの段に分けて点検しています。事実が出典と合っているかは、書いたAIとは別に立ち上げたAIが見ます。

2026年10月24日時点の流れ 1 機械の検査(品質採点・題名・語の濃さ・テスト) 2 日本語の校閲(別のAI) 3 読者役の試し読み(別のAI 2人) 4 公開前の点検役(別のAI・出典を開く) 5 マージ前の機械の確認 すべて通れば、書いたAIがマージして公開 70点未満は出さない 通るまで直す 挙がった箇所は直す 全部 2人とも挙げた文が 4つ以下 先頭行に承認か 差し戻しだけ 治療や薬に触れる 記事は人がマージ どの段で止まっても、直して同じ段をやり直します。2〜4段目は、書いたAIとは別に立ち上げたAIが担当します。
AIが書いた記事が公開されるまでに通る5つの段です(2026年10月24日時点)。

人の確認を、すべての記事では省いている

Googleは、AIが書いた記事を公開する前に、人の手で事実を確かめ、正確性と信頼性を確認することが重要だと説明しています。生成AIの出力には、ハルシネーション(不正確な情報)が含まれる可能性があります。1

このサイトの記事は、文書のファイルとして管理しています。記事を出すことは、プルリクエスト(PR。変更を取り込んでほしいという依頼)になります。取り込むこと(マージ)が、公開です。

9月25日より前は、事業主(このサイトの運営者)が1本ずつ確認してマージしていました。いまは、書いたAIが条件を確かめて、自分でマージします。

治療や薬に触れない記事では、Googleが勧める人の確認を省いています。その代わりに、機械の検査とAIの点検を5段に重ねています。

5段で、誰が何を見るか

段見るもの担当
1 機械の検査品質の採点(70点未満は出さない)・題名の型・専門語や英字の多さ・段落の字数・自動テスト機械
2 日本語の校閲主語と述語の食い違い・出典より強く書いた文。挙がった箇所は全部直す別のAI
3 読者役の試し読み別のAIが2回、別々に読み、意味が取れなかった文を挙げる。どちらの回でも挙がった文が4つ以下になるまで直す別のAI
4 公開前の点検役出典を3件以上開いて本文と見比べる。医療の判断・著者の経験・脚注の番号も見る別のAI
5 マージ前の機械の確認サイトの緊急停止中でない・PRがマージ前である・点検のあとに記事が書き換わっていない・公開用の自動ビルド(Workers Builds)が成功・承認がある機械

1と5の機械の検査は、書いたAIが回します。2〜4は、書いたAIが別のAIを立ち上げて任せます。このAIを、サブエージェントと呼びます。

サブエージェントは、書いたAIから独立した、もう1つのAIです。書いたAIが読んだ資料や考えた経緯は引き継がず、渡された依頼文をもとに動きます。2

たとえると、書き手の机を見ていない校正者に、依頼書だけを渡して読んでもらうようなものです。 点検役に渡すのは、点検する記事のPRと、依頼文だけです。

下書きのメモや、題を選んだ理由は渡しません。書いたAIの考えを見せないためです。

点検役は、コメントの先頭の行に、承認(APPROVED)か、直してから出し直すよう求める差し戻し(CHANGES_REQUESTED)の語だけを書きます。

5段目は、点検役が見たあとに記事が書き換わっていれば、合格にしません。承認は、見た時点の記事に対するものだからです。

治療や薬に触れる記事は、この5段のほかに、人が読んでマージします。10月24日に記事のファイルで数えると、公開した記事に、医療リスクが高いものは0本です。

書いたAIには点検させない理由

ある研究は、GPT-4やLlama 2に文章を評価させる実験で、AIが自分の出力に高い点を付ける傾向を報告しています。人の評価者は、同じ質だと見ていました。3

書いたAIに自分の記事を点検させると、甘くなるおそれがあります。そこで、点検役は書いたAIとは別に立ち上げ、書いたAIのメモを見せずに読ませます。

ただし、別に立ち上げただけで、この傾向が消えるかは確かめていません。点検役を書き手とは別のモデルにして比べたこともありません。

点検役が差し戻した数

次の表は、新しい記事のPR(題名が「記事:」で始まるもの)で、点検役の判定を数えたものです。どれもマージ済みです。表の2つの期間は、日本時間です。

項目10月6〜13日10月14〜24日
記事のPR54本72本
判定のコメントがあったPR53本70本
最初の判定が承認だったPR12本32本
承認の割合(承認の本数 ÷ 判定のコメントがあった本数)約23%約46%
差し戻しのコメント56件45件
差し戻しが2件以上になったPR9本6本
1本あたりの差し戻しの最多4件3件

数えたのは、PRに付いたコメントのうち、先頭の行が判定の語だけのものです。2026年10月24日の19時台に、GitHubで数えました。

期間の長さが違うので、割合で見ます。最初の判定が承認だった割合は、約23%から約46%に増えました。

この増え方が点検役のおかげかは、言い切れません。書き方の決まりをいくつか変えた日があり、増えた理由は切り分けられません。

差し戻しの中身

10月14日以降の差し戻し45件を読み返し、指摘の種類ごとに数えました。

指摘の種類件数
出典に無い・出典より強い・出典の条件が落ちている30件
本文に、書き手の見方の文が1つも無い12件
本文の最初の段落が、題名の下の囲み(要点)の言い直しになっている8件

1件の差し戻しに複数の指摘が入ることがあるので、件数は足し算できません。1つ目は、指摘の文面に「出典に」「強い」「条件」などの語があるものを数えました。

「月額」と「税込」が抜けていた(10月21日)

LステップのAI返信の記事に、「API連携を足す追加の料金は5,500円です」という文がありました。出典の表記は「追加料金 月額5,500円(税込)」です。

月額が抜けると、1回だけ払う料金にも読めます。税込が抜けると、総額が違って見えます。読者役の2回の試し読みも、この文を挙げていました。点検役は、「月5,500円(税込)」と書き、表の合計と合うことも示すよう求めました。

「設計されている」を「断ります」と書いた(10月22日)

Claude Duetの記事に、「クレジットカードの番号や身分証の情報を渡すよう頼まれても、断ります」という文がありました。Anthropicの発表も国内の報道も、断るように「設計されている」と説明しています。

「設計されている」は、断るよう作られているという説明にとどまり、必ず断るという約束ではありません。安全にかかわる文なので、点検役は、必ず断るという約束と受け取られない言い方に、直すよう求めました。

この種の差し戻しは、機械の検査では見つけにくいと考えています。出典を開いて本文と見比べると、見つかります。

止まったこと・直したこと

固さのパターンを、機械と点検役に分けた(10月11日)

AIが書く文章の固さを、8つのパターンに分けました。たとえば、出典の文末「〜としています」を同じ節で繰り返す文です。

数えやすい3つは機械に、残る5つは点検役に任せました。機械では、固くない文を固いと判定する例が多く出たからです(10月11日の開発日誌)。

点検役がこの5つを安定して拾えるかは、確かめていません。

点検で止まり、記事が出なかった(10月12日)

日本時間の9時と12時に記事を書く回で、読者役の試し読みが通りませんでした。2回とも挙がった文が、通る条件の4つ以下を超えたからです。試し読みが通らないときは、人の確認待ちにする決まりでした。そのため、記事は出ませんでした。

事業主が「必ず出すように」と求めたので、通らないときは、まず直し、次に書き直し、それでも通らなければ題を替えて、1本出すまで続ける手順にしました。基準は下げていません(10月12日の開発日誌)。

点検のやり直しが4回続いた(10月13日)

午前に出した1本で、点検のやり直しが4回続きました。AIの報告では、この点検に使った利用量を、定価の料金で計算すると約10ドルでした。この額は計算した値で、実際の請求額ではありません。

出た指摘は7件で、原因は3つに分かれました。

1つ目は、機械の検査の穴です。出典は、同じ会社のページを半分未満に抑える決まりです。この数え方で、同じ会社でも、サイトのアドレスが違うと別の会社として数えていました。

2つ目は、直した文が新しい誤りを生んだことです。出典を入れ替えたあと、脚注の番号がずれました。

3つ目は、決まりの当て方の食い違いです。段落の長さには上限があり、同じ段落を、点検役は空白も数えて125字とし、機械は上限の内側として通していました。

それぞれ、機械の検査を足しました。直すときに確かめることを、手順書に足しました。2回目からの点検役は、前回の指摘と、前回のあとに直した文だけを見るようにしました(10月13日の開発日誌)。

サブエージェントも、メインの会話と同じ使用制限(契約したプランで使える量の上限)の対象です。2 点検をやり直すほど、使う分も増えます。

まだ分かっていないこと

  • 点検役が承認した記事に、公開後に誤りが見つかった割合は、数えていません
  • 直した文だけを見る点検が、直していない文の見落としを増やすかは、分かりません
  • 点検役の指摘が、読者の役に立つ直しだったかは、PRのコメントからは見えません

人に残した仕事

  • 治療や薬に触れる記事を読んで、マージするか決める
  • 点検役が見る項目と、書き方の決まりを決める
  • 事業主が読んで「分かる」と言った記事を、書き方の手本として記録に残す。AIの判定が、人の読み方とずれていないかを確かめるためです

自社で始めるなら

最初から5段にそろえる必要はないと考えています。差し戻しの多くは、出典と食い違う文でした。数字や条件を出典と見比べると、見つかります。AIエージェントの出力を見張る最初の一歩は、次の2つにできます。

  1. 公開前に、AIエージェントが書いた本文の数字・料金・固有名詞を、出典のページと1つずつ見比べる
  2. その見比べを、書いたAIとは別に立ち上げたAIに頼み、渡すのは記事と出典の一覧だけにする

記事以外の成果物でも、数字や固有名詞を元の資料と見比べる点は同じです。

AIエージェントの出力を自社で見張るなら、数字で判定できる検査と、出典を開いて見比べる別のAIに、点検を分けるのがよいと考えています。

出典

  1. Google 検索セントラル「生成 AI コンテンツに関するガイダンス」(公式ドキュメント。2026年10月6日更新)(参照 2026-10-24)
  2. Claude Code「カスタムサブエージェントの作成」(公式ドキュメント)(参照 2026-10-24)
  3. Panickssery ほか「LLM Evaluators Recognize and Favor Their Own Generations」(2024年4月15日投稿の論文)(参照 2026-10-24)