要点

対象:Slackで社内の質問や報告を受けている人

  1. 作業時間を月1,200時間超削減
  2. 起票の前に重複と情報の不足を確認
  3. データの項目を絞り回答の精度を上げた

ElevenLabsは、社内のSlackに導入したAIエージェント(頼まれた作業を自分で進めるAI)で、社員の作業時間を月1,200時間超減らしています。1

この記事の目次(7節)
  1. SlackのAIエージェントに任せている仕事
  2. バグ報告の受付から割り当てまで
  3. 公表された数字
  4. 回答の精度を上げた工夫
  5. ブログから分からないこと
  6. Slackにつなぐ前に確認すること
  7. 精度を支えたのは、渡すデータの絞り込み

エージェントは質問に答え、バグ報告を受けると、チケット(対応する課題を1件ずつ記録したもの)を起票して担当チームに割り当てます。1

ElevenLabsは、AIで音声を作るツールを売っている会社です。AIエージェントを作る製品「ElevenAgents」を社内でどう使っているかを、10月29日に自社のブログで公開しました。1

数字はいずれも同社の発表で、記事は自社製品の宣伝も兼ねています。1

SlackのAIエージェントに任せている仕事

同社の社内エージェントは、もともと社内の資料や取引先の履歴を、Slackで調べるために作られました。いまは起票やデモの作成もこなします。1

使う部署エージェント任せている仕事Slackでの依頼の例
営業取引先の質問用取引先に関する質問に答える「英国・フランス・ドイツで、ロゴ掲載の許諾がある主要顧客は?」
営業製品の質問用製品の質問に答え、顧客向けのデモを作る「営業担当の代わりに商談の予約を取るAIを見込み客が作るなら、どんな連携が要る?」
サポートと開発起票用バグ報告と機能要望からチケットを起票し、担当チームに割り当てるブログに例は無い
プロダクトとプロダクトマーケティング分析用データ分析の依頼を受け、結果を同じスレッドに返す「米国の個人契約で、無料から有料に移った割合はこの半年でどう変わった?主な理由は?」

製品の質問用のエージェントが作るデモは、見込み客の用途に合わせて実際に動くAIエージェントです。Slackのメッセージ1通から組み立てます。1

バグ報告の受付から割り当てまで

ElevenLabsは、課題管理ツールのLinearにチケットを起票しています。以前は、サポートと開発の担当者がかなりの部分を手作業でやり取りしながら、起票と割り当てをしていました。1

起票用のエージェントは、機能要望とバグ報告で手順書(Procedures)を使い分けます。手順書には、1つの仕事について、いつ使うかと何をするかを書きます。13

バグ報告を受けたときの流れは次のとおりです。

  1. Slackの中から、報告に関係するやり取りを探す
  2. 重複するチケットがないか確認する
  3. 原因を調べられるだけの情報がそろっているか確認する
  4. 優先度を付けて、Linearにチケットを起票する
  5. チームの担当表を見て、担当チームに割り当てる
  6. 割り当てが済んだら、チケットの記入欄と担当チームが正しいかを確かめる1

担当表は、エージェントが参照する資料(ナレッジベース)に登録してあります。1

バグ報告から起票・割り当て・確認まで(出典:ElevenLabsのブログ) 社員 Slackでバグを報告 AIエージェント:起票の前の準備 1 Slackの中から関係するやり取りを探す 2 重複するチケットがないか確認する 3 原因を調べられるだけの情報がそろっているか確認する 4 優先度を付けてLinearにチケットを起票する 5 担当表を見て、担当チームに割り当てる 6 割り当ての後に、記入欄と担当チームを確かめる ブログ公開前の1か月で 起票したチケット 150件超
Slackに届いたバグ報告から、AIエージェントがチケットを起票し、担当チームに割り当て、記入欄と担当チームを確かめるまでの流れです。ElevenLabsのブログの説明をもとに作成しました。

公表された数字

項目数字
減らした作業時間月1,200時間超
答えた質問月5,000件超
起票したチケットブログ公開前の1か月で150件超
作った顧客向けのデモ数十件

回答の精度を上げた工夫

同社によると、社内向けのエージェントは、最初から正確で頼れるものでないと、社員は使わなくなり、信用もしなくなります。1

エージェントはみんなが見るチャンネルで答えるので、うまくいった答えも同僚の目に入ります。それが、社内で使う人が増える助けになりました。1

  • データの項目を絞る:社内の情報を調べるエージェントでは、AIに読ませる表の列(データの項目)を減らしたときに、回答の精度がいちばん上がりました。プロンプトのどの調整より効きました。項目が1つ増えるたびに、AIが当て推量で間違える余地が増えるためです。1
  • 選択リストの値を先に読み込む:Salesforceの商談の「フェーズ」のような選択リスト項目は、選べる値が決まっています。放っておくと、AIは実在しない値をそれらしく作ってしまうことがあります。そこで同社は、エージェントを動かし始めるときに正しい値の一覧を読み込み、AIが選べる値をその一覧だけに限りました。1
  • 割り当ての後に確かめる:チケットの記入欄と担当チームを確かめる手順を入れて、ときどき起きていたチケットの中身の誤りや、割り当て先の誤りを抑えました。1

ブログから分からないこと

  • 1,200時間を、何と比べてどう数えたか
  • チケットや回答を、人が途中でどこまで確かめているか
  • 間違えた回答やチケットが、何件あったか
  • エージェントを動かす費用

Slackにつなぐ前に確認すること

つなぎ方は、ElevenLabsが用意したアプリを入れる方法と、自社で作ったアプリを使う方法の2つです。用意されたアプリを入れる人には、ワークスペースにアプリを追加する権限が必要です。2

自社のアプリを使う方法は、自社の名前とアイコンで表示したいときに向いています。2

用意されたアプリでは、エージェントはチャンネルでメンションされるとスレッドで返信し、会話の流れはスレッドごとに分けて保持します。2

Slack連携では、会話を残さない設定(ゼロリテンションモード)は使えません。社内の情報を扱わせる前に、会話がElevenLabs側にどう残るかを確かめておくとよいでしょう。2

精度を支えたのは、渡すデータの絞り込み

この事例の数字を支えているのは、AIに任せる仕事を増やしたことより、AIが間違える余地を減らした工夫だと考えています。同社がいちばん効いたと書くのは、プロンプトの調整ではなく、データの項目を減らしたことでした。

社内のデータ分析基盤への質問にAIが答える例は、Bayerの事例にあります。テストの失敗をAIに振り分けさせた例は、Rescaleの事例にあります。

Slackで社内の規程の質問に答えるサービスは、freee AIヘルプデスクの記事で取り上げました。

Slackで受けている報告をAIに任せるなら、まずはAIに読ませるデータの項目を、判断に要るものだけに絞ってみてください。

出典

  1. ElevenLabs Blog「How we use ElevenAgents to save 1,200 hours a month in daily operations」(2026年10月29日)(参照 2026-10-30)
  2. ElevenLabs Documentation「Slack」(ElevenAgents の連携)(参照 2026-10-30)
  3. ElevenLabs Documentation「Procedures」(参照 2026-10-30)