要点

対象:AIに長い作業を任せたい職場

  1. 楕円曲線の計算でゲート数が17分の1
  2. 8種類の課題で最良の回路を上回る
  3. 任せる前に、答えの確かめ方を作る

AIの「Claude Mythos 5」が量子コンピュータの回路を設計し、これまでに公表された最良の回路を上回りました。Anthropicが10月16日に発表しました。1

この記事の目次(4節)
  1. ゲート数は最大で17分の1に
  2. 人・Claude・評価プログラムの役割
  3. 気をつけたい点
  4. 仕事でAIに長く任せるときに要るもの

楕円曲線の点の足し算の回路では、ゲート数が17分の1になりました。この課題で人が渡した指示は1段落ほどで、Claudeは53時間続けて作業しました。1

ゲート数は最大で17分の1に

量子ビットは、量子コンピュータが情報を持つ最小の単位です。その量子ビットに、ゲートと呼ばれる簡単な操作を順に加えて計算します。どちらも少ないほど計算が軽くなり、実用化が早まるかもしれません。1

課題は、化学・最適化・数論など8種類です。発表では、このうち2つを詳しく説明しています。1

回路比べた相手結果
楕円曲線の点の足し算量子ビット数が最も少なかった従来の設計ゲート数は17分の1、量子ビット数は12%増
最適化の問題を解く方法(DQI)の復号の部分Googleが以前に発表した設計ゲート数は約12分の1

楕円曲線の回路は、量子ビット数が従来の設計より12%多くなった代わりに、ゲート数を大きく減らしました。表のDQIを含む残りの7つの課題では、ゲート数と量子ビット数がどちらも大きく減りました。2

人・Claude・評価プログラムの役割

分担 01 02 人(研究者) Claude 評価プログラム 求めることを ふつうの言葉で渡す 回路をPythonで書き、 点数を見て直す 正しく計算するかを判定し、 採点して返す 往復をくり返す(楕円曲線の課題で53時間) 1回ごとに人は口を挟まない ときどき 探す範囲を広げるよう促す
この研究で人・Claude・評価プログラムが受け持ったことです。人は最初に指示を渡し、ときどき探す範囲を広げるよう促しました。Claudeが回路を直すたびに、評価プログラムが判定して採点しました。
担い手したこと
人(研究者)回路に求めることを文章で書いて渡した。いくつかのやり方を並行して試すことも、最初の指示に入れた
Claude回路をPythonで書き、点数を見ては直す作業をくり返した
評価プログラム回路が正しく計算するかを判定し、量子ビット数とゲート数を掛けた値で採点した

Claudeが直しては採点を受ける間、人が1回ごとに口を挟むことはありませんでした。最初の指示のほかには、ときどき探す範囲を広げるよう促した程度です。1

簡単な規則が大きな数で崩れ、数学から組み直した

楕円曲線の回路で、Claudeが最初に試した簡単な規則は、小さな数ではうまくいきました。ところが、実際に使う大きな数では外れました。1

そこでClaudeは、新しい等式をいくつか証明して、そこから規則を導きました。その規則を大規模な計算で試し、最後にLean(証明が正しいかを機械で確かめる言語)で書き表しました。1

初期の実験では、Claudeは慎重すぎる傾向があり、よくなったように見える結果を何度も確かめ直しました。よく知られたやり方に流れやすかったため、研究者は別のやり方も並べて試させ、ときどき促しました。1

気をつけたい点

論文は10月15日に論文の公開サイトarXivに出たもので、査読はまだ受けていません。2

回路を小さくしても、量子コンピュータをすぐ実用化できるわけではありません。計算中の誤りを直す仕組みや、機械の制御も要ります。1

Claude Mythos 5は、Anthropicの審査を通った組織しか使えません。仕様と料金は、一般に使えるClaude Fable 5と同じです。3

仕事でAIに長く任せるときに要るもの

今回の回路の計算は、入力ごとに答えが1つに決まり、ふつうのコンピュータで正しいかを判定できます。研究チームは、Claudeにこの課題が向く理由の1つにこの点を挙げています。1

評価プログラムが毎回判定したから、Claudeは53時間続けられたとみています。仕事でも、結果を機械で照らし合わせられる作業ほど、AIに長く任せやすいはずです。

たとえば、請求書の合計が明細と合うか、表の行数が元のデータと同じかは、プログラムで照らし合わせられます。そうした仕組みを作れない作業は、どこで人が見るかを先に決めておくとよいでしょう。

人がどこまで確認するかの考え方は、AIに書かせた下書きを人がどこまで確認するかで取り上げました。AIどうしで点検させるときの注意は、AIにレビューさせるときに確かめることにあります。

AnthropicのClaude Codeチームは、AIが出したレビューの承認を人の承認に数えていません。

このサイトも、記事の公開をAIに任せています。運用の記録では、任せる範囲を決め、AIが止まったと気づける仕組みを持つことが大事だと書きました。

AIに任せたい作業を1つ選び、その結果をどう確かめるかを1行で書いてみてください。

出典

  1. Anthropic「Designing more efficient quantum circuits with Claude」(2026年10月16日)(参照 2026-10-19)
  2. Andi Gu ほか「Discovering state-of-the-art quantum circuits with large language models」(arXiv:2610.22367、2026年10月15日)(参照 2026-10-19)
  3. Claude Platform Docs「Claude Mythos 5」(参照 2026-10-19)
  4. Anthropic の X の投稿(2026年10月16日)(参照 2026-10-19)