問い合わせの返事、ぜんぶAIがやってくれたら楽ですよね。でも、聞いてきたお客さんのほうは、それで本当にいいんでしょうか?
この記事の目次(4節)
答えから言うと、届いた問い合わせの振り分けと、よくある質問への答えや返事の下書きまでなら、AIに任せやすいです。込み入った相談への返事と、最後に送るかどうかの判断は、人がするほうが安全です。
問い合わせ対応の自動化というのは、メールやフォーム、チャットで届く質問への対応を、ソフトやAIに任せることです。チャットボットに答えさせる、届いたメールを種類ごとに分ける、返事の下書きを作らせる、とやり方はいくつかあります。
お客さんは「AIでもいい、ただし場面による」
HubSpot Japanが6月3日に出した調査では、企業のカスタマーサービスのAI対応を「利用したい」と答えた利用者は69.9%でした。
内訳は「積極的に」が28.2%で、「場面や内容によっては」が41.7%です。条件つきの賛成のほうが多いんですね。
人に対応してほしい場面でいちばん多かったのは「自分の状況に合わせた柔軟な対応が必要なとき」の47.1%でした。次が「複雑な技術的トラブルを解決したいとき」の45.6%です。
どんな場面でも人がいい、という人は16.0%だけでした。AIがイヤなのではなく、AIで済む話と済まない話を分けてほしい、というのが本音に近そうです。
FAQやチャットボットのような人がいない窓口の不満は、MMD研究所とPKSHA Technologyが2025年7月に出した調査で見えてきます。
この窓口に不満を感じた人に聞くと、「知りたい情報が見つからない」が69.1%で最多でした。
しかも、この窓口に不満を感じた人のうち、それでサービスをやめたことがある人は50.8%でした。電話やチャットで人が答える窓口に不満を感じた人では、やめたのは34.2%です。人がいない窓口のほうが、お客さんが離れやすいんです。
そうしてやめた人に、何が不満だったかを聞くと、ここでも「知りたい情報が見つからない」が73.2%で最多でした。答えが見つからない窓口は、お客さんを逃してしまうわけです。
社員向けのチャットボットでも、答えられない質問を誰が引き取るかは、先に決めておきたいところです。引き継ぐ先と返事の期限の決め方は、社内チャットボットの失敗を防ぐ記事にまとめました。
担当者がAIに任せたいのは、決まった答えと振り分け
同じHubSpotの調査では、カスタマーサービスの担当者618人にも聞いています。
AIに任せたい仕事の上位は、よくある質問への決まった答え(64.2%)と、顧客データや対応履歴の集計・分析(60.5%)でした。3番目が、問い合わせの記録・分類・振り分けの56.3%です。
反対に、人に任せたい仕事の1位は「顧客の感情に寄り添った共感的な対応」で、53.2%でした。「クレーム対応・エスカレーションの判断」も、人に任せたい割合が比較的高い仕事でした。エスカレーションは、上司や担当の部署へ引き継ぐことです。
お客さんと担当者、ほぼ同じところで線を引いているんです。
返事の振り分けを、このサイトの仕組みで試した
このサイトにも、届いたメールを振り分ける仕組みがあります。AIが送った営業メールに返事が来たら、それを受け取って種類ごとに分けます。お客さんからの問い合わせとは向きが逆ですが、届いたメールを分けて人に渡す作りは同じです。
届いた返事は、すぐにはAIに読ませません。まずはAIを使わず、決まりに当てはめて、届かなかった通知・不在の自動応答・配信停止の求めを分けます。言い回しが決まったメールなら、AIに読ませなくても見分けられるからです。
残った「人が書いた返事」だけを、AIが6つの種類に分けます。興味あり・今は不要・担当違い・時期違い・拒否・その他の6つで、迷えば「その他」に入れます。
AIが残すのは、種類と、相手が書いた課題・質問・反論・要望の要約だけです。要約は1つにつき100字までです。返事の本文・件名・相手のアドレスは保存しません。
AIの答えが決まった形で返ってこなかったときは、種類を付けずに残し、運営者が読んで記録します。
11月7日、AIに渡す前の振り分けに、架空の返事6通を試しに通してみました。不在の自動応答・届かなかった通知・「今後のご連絡は不要です。」は、それぞれ狙いどおりに分かれました。
「一度お話を伺えますか」という返事は、人が書いた返事として、AIが分ける側へ回りました。
英語の不在の返事も、自動応答として拾えました。こちらは件名が「Out of Office」だけで、メールの見えない部分(ヘッダー)に自動応答の印はありません。
決まりで拾えなかった返事もありました。「現在は検討しておりません。」です。これは配信停止にならず、人が書いた返事のほうへ流れました。
試した範囲では、はっきり断る言葉は拾えても、遠回しな断りは拾えませんでした。こういう返事は、その先でAIが種類を見分けます。ただ、返事は分ける前に全部、運営者の受信箱へ転送されるので、最後は人が目を通します。
相手への返信は運営者が送り、仕組みからは送りません。このサイトの場合、返信の下書きもAIではなく、あらかじめ決めた文を使っています。
迷惑メールの報告が1件でも来たら営業メールの送信は全部止まり、運営者が手で再開するまで動かない、という決まりも10月26日の開発日誌に書いています。
送る前に人が確かめるやり方は、事務作業をAIに任せるときの分け方と同じです。このサイトのAI秘書の顧客対応も、受付と振り分けはAIに任せ、個別の問い合わせへの返信は人が確認してから送る形です。
自社の問い合わせを、どこまでAIに任せられるか30分で確かめる
自分の会社で始めるなら、まずは先月の問い合わせを、種類ごとに数えてみるのがおすすめです。営業時間・料金・予約の変更のように、毎回同じ答えで返しているものなら、AIに任せやすいです。
ひとつひとつ事情が違う相談や、怒っているお客さんへの返事は、人が受け持ちます。そのうえで、AIが答えられなかった問い合わせを引き取る人を1人決めておくと、「情報が見つからないまま放置」を防げます。
小さな教室なら、授業中に届いた問い合わせにまず受付の自動返信を送り、日程の返事はAIの下書きを見て送る、という分け方もできます。具体的な指示文は塾の問い合わせの返信の記事で試しています。
どこまでAIに任せるか迷ったら、無料AI業務診断(30分のオンライン)で一緒に決められます。
振り分けはAIに、ひと言の気づかいは人に任せるのが、いまのちょうどいい分け方です。
