要点

対象:AIエージェントに業務の手順を任せたい担当者

  1. 実行の開始先は1つのステートマシンに固定
  2. ステータスの確認と停止はStandardだけ
  3. タスクに結果を返す3つの操作はIAMで絞れない

Step Functionsのワークフローを、AIエージェント(自分で判断してツールを使うAI)のツールとして呼べるようになりました。AWSが10月29日に発表しました。以下「AI」と書きます。1

この記事の目次(7節)
  1. Step FunctionsとAgentCore Gatewayでできること
  2. チュートリアルの例:AIが送るものと返ってくるもの
  3. どんな仕事に向くか
  4. 権限の絞り方と、IAMで絞れない3つの操作
  5. 料金と、使えるリージョン
  6. 試す前に確かめること
  7. 承認の要る仕事をAIに任せられるか確かめる

AIとStep Functionsの間には、AgentCore Gatewayが入ります。いつ実行を開始し、何を入力に渡すかはAIが決めます。

ステップをどの順に進めるかはStep Functionsが決めるので、AIはステップを飛ばしたり入れ替えたりできません。2 返金してよいかの確認・上長の承認・返金の実行のように、順番を変えてはいけない仕事に向いています。1

ただし、待機中のタスクにAIが結果を返す3つの操作(SendTaskSuccess など)は、IAMで対象を絞れません。2

Step FunctionsとAgentCore Gatewayでできること

Step Functionsは、仕事のステップを並べて、決めた順に自動で進めるAWSのサービスです。ステップの並び全体を、AWSではステートマシンと呼びます。2

AgentCore Gatewayには、Step Functions用の組み込みのコネクタが加わりました。AIはGatewayからツールの一覧を受け取り、その中のツールを呼び出します。2

Lambda関数もMCPサーバーも、自分で書く必要はありません。ツールの定義も、Gatewayが作ります。2

ツールとして公開できる操作は10個です。このうち4つは、対象のステートマシンを1つ固定します。2

固定するのは、StartExecution・StartSyncExecution・ListExecutions・DescribeStateMachine です。

固定は、ターゲット(Gatewayにつなぐ先の設定)を作るときに必ず設定します。設定しないと、そのツールは毎回失敗します。2

AIが受け取るツールの説明には、固定したステートマシンを指定する欄がありません。AIが別のステートマシンを指定して送っても、Gatewayはエラーを返して拒否します。2

AIがすることAPI名対象
実行を開始するStartExecution・StartSyncExecution固定したステートマシン1つ
実行の一覧を見るListExecutions固定したステートマシン1つ
ステートマシンの中身を読むDescribeStateMachine固定したステートマシン1つ
1回の実行のステータスと実行履歴を見るDescribeExecution・GetExecutionHistoryAIが渡す実行ARN(実行を指す識別子)。サービスロールのIAMポリシーで絞れる
実行を止めるStopExecutionAIが渡す実行ARN。サービスロールのIAMポリシーで絞れる
待機中のタスクに完了か失敗を返す/作業中であることを知らせるSendTaskSuccess・SendTaskFailure・SendTaskHeartbeatタスクトークン。IAMポリシーでは絞れない

6月に出たマネージドハーネスとの統合とは向きが逆

6月3日には、Step FunctionsとAgentCoreのマネージドハーネス(使うAIとツールを設定で決めて動かす仕組み。当時はプレビュー中)との統合が加わっています。こちらは、ステートマシンの中のステップでAIを動かす機能です。4

6月3日に出たハーネスとの統合10月29日に出たStep Functionsコネクタ
向きステートマシンがAIを呼ぶAIがステートマシンを呼ぶ
東京リージョン6月の発表では、対象の4つのリージョンに入っていなかった使える(AgentCore Gatewayのあるリージョンすべて)

チュートリアルの例:AIが送るものと返ってくるもの

Step Functionsのデベロッパーガイドに、ステップが1つだけのステートマシン「AgentHelloWorld」をGatewayにつなぐチュートリアルがあります。3

ステートマシン、Gateway用のサービスロール、Gatewayとターゲットの順に作ります。チュートリアルでは、10個の操作のうち6つをツールとして設定しています。3

AIが送るもの返ってくるもの
ツール一覧の取得(tools/list)設定した6つのツール。実行を開始するツールで渡せるのは input だけ
hello___StartExecution に {"who": "agent"}実行ARNと、開始の時刻
hello___DescribeExecution に実行ARNと includedData の ALL_DATAステータスが SUCCEEDED、出力が Hello from Step Functions

includedData を付けないと、出力は返らず、ステータスなどの情報だけが返ります。CloudTrailには、呼び出し元としてGatewayのサービスロールが記録されます。3

どんな仕事に向くか

AWSの発表にある返金の例を、図にしました。1

AIとステートマシンの役割 AIが決める AgentCore Gateway ステートマシンが進める いつ開始するか 何を渡すか 開始できるのは 固定したステートマシン 1つだけ。AIは変えられない 01 02 03 返金してよいか 確かめる 上長が承認する 返金を実行する AIはステップを 飛ばせない・入れ替えられない Standardなら、進んだステップが 実行履歴に残る
返金の例。AIが実行を開始したあとは、ステートマシンが決めた順にステップを進めます

Standard(標準)タイプのステートマシンは、最長1年実行できます。AIのセッションが終わっても、仕事を続けられます。進んだステップは、すべて実行履歴に残ります。2

Expressタイプは、StartSyncExecution で実行を開始し、同じ呼び出しで結果を受け取れます。ただし、実行のステータスの確認・停止と、途中で止めて結果を待つ設定(コールバック)は使えません。2

したいことStandardExpress
実行を開始し、同じ呼び出しで結果を受け取るできないできる
実行のステータスの確認と、実行の一覧できるできない
実行を止めるできるできない
コールバックを待って、結果を受けて進むできるできない

8月29日にQiitaに載った記事では、Slackへ投稿する処理をGatewayのツールにして試しています。今回の発表より2か月前で、Step FunctionsではなくLambdaをツールにしています。8

試した範囲では、利用者の発言に投稿を促す言葉が無いと、システムプロンプトで投稿を指示してもツールは呼ばれませんでした。書いた人は、毎回必ず実行したい処理はAIに呼ばせず、決めた流れの中に組み込むのがよさそうだとしています。8

権限の絞り方と、IAMで絞れない3つの操作

実行を一時停止して、AIが作業した結果を待たせたいときは、.waitForTaskToken でコールバックを待ちます。一時停止するときに、Step Functionsがタスクトークンという文字列を作ります。2

この文字列を、AIを動かすアプリケーションに届ける処理(SQSのキューや、Step Functionsのアクティビティ機能など)は、自分で組みます。AIは作業を終えたら SendTaskSuccess で結果を返し、ステートマシンが先へ進みます。2

終えられないときは SendTaskFailure で失敗を返します。長い作業の途中では、SendTaskHeartbeat で作業中であることを知らせます。コールバックを待つ設定は、Standardタイプだけで使えます。2

この3つの操作は、特定の実行だけに対象を絞れず、IAMでリソースを「*」(すべて)にして許可するしかありません。正しい文字列を持っていれば、どのAIでもそのタスクを終えられます。2

この文字列は秘密として扱い、そのタスクを担当するAIにだけ送るよう、AWSは勧めています。2 上長の承認のように人が決めるステップなら、タスクトークンを人の承認の画面にだけ届け、AIには渡さないこともできると考えます。

1つのGatewayにつないだターゲットは、どれも同じサービスロールを使います。ステートマシンごとにIAMの権限の範囲を変えたいなら、Gatewayを分けます。3

AIに渡すものを、承認した分だけに絞る別の例は、Bitwarden Agent Accessの記事にまとめました。

当サイトのAI秘書でも、振込データの作成は引き受け、振込そのものは依頼したお客様が承認する形にしています(AI秘書の請求・経理)。

料金と、使えるリージョン

Step FunctionsとAgentCore Gatewayの通常の料金がかかります。1

項目料金(Step Functionsは米国東部(バージニア北部)の例)
Standardの状態遷移(ステップを1つ実行するごとに1回。再試行も数える)1回0.000025ドル。無料利用枠は月4,000回
Expressの実行リクエスト数と、実行時間・メモリの量
GatewayのAPI呼び出し(ツール一覧の取得・ツールの実行など)1,000回で0.005ドル

無料利用枠の月4,000回は、アカウントの全ステートマシンの状態遷移を合わせた数から引かれます。返金の申し出が月1,000件あり、ほかにステートマシンが無い場合を計算すると、次のとおりです。

前提回数料金
1件あたり状態遷移が5回月5,000回(無料利用枠を引いて1,000回)0.025ドル
1件あたりGatewayの呼び出しが2回(実行の開始・ステータスの確認)月2,000回0.01ドル

ツール一覧の取得も、Gatewayの呼び出しに数えます。AIを動かす生成AIの利用料は、この表とは別にかかります。56

AgentCore Gatewayは、東京リージョンでも使えます。Gatewayが呼べるのは同じリージョンのStep Functionsだけなので、ステートマシンとGatewayは同じリージョンに作ります。37

社内のデータについての質問に答えるAIを、AgentCoreで作った会社の例は、Bayerの事例の記事にあります。

試す前に確かめること

開発を頼む会社や、社内のAWSの管理者と、次のことを確かめておきましょう。

確かめること理由
毎回必ず実行したい処理を、AIの判断に任せていないかAIが呼ばない限り、実行は開始されません
StandardとExpressのどちらのタイプにしたかステータスの確認・停止・コールバックを待つ設定は、Standardだけです
実行ARNを受け取る操作(ステータスの確認・実行履歴・停止)を、公開するステートマシンの実行だけに絞ったかこの3つは、サービスロールのIAMポリシーで絞ります
タスクトークンを誰に届けるか決めたか持っていれば、どのAIでもタスクを終えられます

AIがツールを呼ぶときの流れと、呼ぶ前の承認の設定は、AIがほかのツールを使う仕組みの記事にまとめました。

承認の要る仕事をAIに任せられるか確かめる

どのステップをAIに任せ、どこで人が承認するかは、無料AI業務診断(30分・オンライン)で一緒に整理できます。

返金や支払いのように順番を変えてはいけない仕事を1つ選び、いまの流れと承認する人を、相談のページからお知らせください。

出典

  1. AWS Step Functions workflows can now be used as AI agent tools(AWS What's New・2026年10月29日)(参照 2026-10-30)
  2. AWS Step Functions as Connector Target(Amazon Bedrock AgentCore 開発者ガイド)(参照 2026-10-30)
  3. Use your Step Functions workflows as tools for AI agents(AWS Step Functions 開発者ガイド)(参照 2026-10-30)
  4. AWS Step Functions に AgentCore を使用したエージェント推論ステップが追加されました(AWS の最新情報・2026年6月3日)(参照 2026-10-30)
  5. AWS Step Functions Pricing(AWS)(参照 2026-10-30)
  6. Amazon Bedrock AgentCore Pricing(AWS)(参照 2026-10-30)
  7. Supported AWS Regions(Amazon Bedrock AgentCore 開発者ガイド)(参照 2026-10-30)
  8. AgentCore Gateway と Lambda で決定論的な処理をツール化する AI エージェントの「Workflow as Tools」を理解(Qiita・2026年8月29日)(参照 2026-10-30)