要点
対象:社内の書類をAIに読ませたい会社
- 非表示のシートやメモも文字で出る
- スキャンの書類は空で返る
- 無料で、通信を切っても動く
AIに社内の書類を読ませる仕組みを開発会社に頼むと、「まず書類を文字に直すツールを挟みます」と言われることがあります。そのとき名前が出やすいのが、Microsoftが公開している「markitdown」です。
この記事の目次(4節)
便利ですが、試してみると、画面に見えない中身が出る場合と、何も言わずに空で返る場合がありました。
どんなツールか
書類を、AIが読みやすい文字に直す
markitdownは、Word・Excel・PowerPoint・PDFなどを、Markdown(マークダウン)という、見出しや表を記号で書き表す文章の形に変えます。1
AIはMarkdownを読み慣れているので、見出しや表の区切りが伝わりやすい、とREADMEは説明しています。1
人が読む書類をきれいに作る用途には、最適でないかもしれません。AIに渡す前の下ごしらえと考えてください。1
なお「README」は、ツールの公式ページに載っている説明書きのことです。
無料で、パソコンの中で動く
利用条件はMITライセンスで、仕事で使っても無料です。2026年9月21日に、バージョン0.1.8が公開されました。23
動かすにはプログラミング言語のPythonが必要です。入れるのは開発会社の仕事です。使うときは、markitdown 請求書.docx のようにファイル名を付けて実行します。1
READMEの比較表は、標準の変換を「オフライン」「手元の計算だけ」と書いています。つまり、書類を外に送らず、変換する機械の中だけで済みます。1 通信を使わない点は、通信を切って確かめました。
書類5種類で試す
試したこと
2026年10月11日に、バージョン0.1.8を、クラウド上の作業用サーバーで動かしました。書類は、この記事のために作った架空のものです。
Wordの請求書、Excelの売上表、PowerPointの説明スライド、文字のPDFの見積書、画像だけのPDFの領収書の5種類です。社内の書類が外に出ないかを見るため、通信を切った状態でも変換できるかも見ました。
図の1〜4は変換でき、5だけが空でした。通信を切っても4つとも変換でき、合わせて約3秒でした。
Wordの表もPDFの文字も、ほぼ崩れずに出る
Wordの請求書は、見出し・本文・表が残りました。品名と数量と金額の表は、縦棒で区切った表になります。この請求書をPDFに直してから変換しても、表の形は崩れませんでした。
見積書の文字のPDFも、金額と有効期限の行がそのまま出ました。パソコンで作ったWordやPDFを読ませるだけなら、問題はありませんでした。
見えない中身も文字になる
PowerPointには、スライドのノート欄に発表者メモを入れておきました。「価格は口頭で伝える」と入れたメモが、スライドの文字に続けて出ました。
Excelでも同じことが起きました。非表示のシートに作った給与の列が、ほかのシートと並んで出ました。非表示にした行も出ました。
ファイルに入っている文字は、画面で見えなくてもAIに渡りました。見せないつもりの情報は、渡す前に確かめてください。
Excelは、数字を読み違えることがある
数式の入った表は、注意が要ります。Excelで開いて保存し直していないファイルでは、計算結果の欄が「NaN」(数値ではない、という表示)で出ました。
Excelで保存し直したファイルでは、前月比は25%ではなく「0.25」、マイナス12%ではなく「-0.12」と出ました。見出しのない列には「Unnamed: 3」のような名前が付きます。空の欄はNaNと表示されます。
AIにそのまま読ませると、数字の意味を取り違えるおそれがあります。売上表のような数字の表は、変換のあとに人が一度確認してください。
スキャンした書類は、何も出ない
画像だけのPDFと、画像のファイルは、何も出ませんでした。エラーの表示もなく、成功として終わります。
AIは文字を受け取っていないので、答えが的外れになります。AIの出来が悪いように見えても、原因は文字が渡っていないことかもしれません。
READMEには、画像の文字を読み取る別のプラグインがあります。AIの画像認識を使う作りで、画像の中身がそのサービスに渡ります。1
このプラグインは試していません。
向いている場面
社内の決まり、過去の見積書、議事録のように、Word・Excel・PowerPointで残っている書類をAIに読ませたい場面に向きます。書類を探して答える仕組みは、院内マニュアルをAIに扱わせる記事で説明しています。
変換した文字から近い書類を探す部分は、EmbeddingGemma 2の試用記事が扱っています。変換は、その前の段階にあたります。
紙のスキャンが中心の会社は、このツールだけでは足りません。カメラで書類をPDFにするChatGPTの機能のように、読み取りの工程を別に考える必要があります。
開発会社に頼む前に確かめること
変換した文字を、人が見る工程はあるか
非表示のシートや発表者メモが混ざるので、AIに渡す前に、変換した文字を人が開く工程があるか、開発会社に聞いてください。給与や取引先の情報が入った表は、必ず対象にします。
紙の書類は、どう文字にするのか
スキャンした書類が空で返るので、紙の書類を読ませたいなら、文字の読み取りをどうするかを先に決めます。読み取りにAIのサービスを使うなら、画像が社外に送られることを前提に、社内の情報の取り扱いルールと照らし合わせます。
外から届いたファイルを、そのまま通さないか
動かした人と同じ権限でファイルなどにアクセスするため、信頼できない入力はそのまま渡さないよう、READMEは注意しています。1
メールで届いた添付を自動で変換する仕組みなら、受け付けるファイルの種類と保存先を絞っているか、開発会社に確かめてください。
変換した文字を、どのAIに渡すのか
このツールが手元で動いても、変換した文字を外のAIサービスに送れば、送った先では、そのサービスの規約が適用されます。入力した内容をAIの学習に使うかどうかを確かめてください。
社員が私用のAIに書類を入れてしまう場合の対応は、個人情報を入力してしまったときの記事にまとめています。
非表示のシートやメモを入れた書類を一つ用意し、開発会社と一緒に変換結果を開いて確認してください。
出典
- microsoft/markitdown(GitHub・READMEとLICENSE)(参照 2026-10-11)
- microsoft/markitdown のLICENSE(MIT License・Microsoft Corporation)(参照 2026-10-11)
- markitdown(PyPI・版0.1.8は2026年9月21日公開)(参照 2026-10-11)

