OCRの仕組みは3段で変わったが、読み取りを目で確かめる手間は残った
悠 Yu NiiboriAIエンジニアプロフィール
出典 8件

要点
対象:紙の書類を読み取らせて使っている人
- 郵便番号を読む機械は1968年に動いた
- 読む仕組みは、専用機から学習へ変わった
- 読み取った数字は、人が見比べておきたい
OCRは、紙や画像の文字を、コンピューターが扱える文字のデータに変える技術です。印刷された文字を音にする読み取り機が作られた1912年から、100年あまりたちます。1
この記事の目次(6節)
- 1912〜1968年、数字や文字を読む専用の機械
- 1975〜2005年、複数の書体を読む機械とソフト
- 1989〜1998年、例から学んで手書きを読む
- 2021年、AI-OCRも精度は100%ではなかった
- 読む仕組みを比べる
- いま紙の書類を読み取らせるときに気をつけること
その間に、文字を読む仕組みは、3つの段階を経ました。
- 1912年から: 数字や文字を読む専用の機械128
- 1975年から: 複数の書体を読む機械やソフト34
- 1989年から: たくさんの例から読み方を学ぶ方式56
3つの時期は、重なっています。
1998年の論文は、小切手を読む仕組みが実用になり、1日に数百万枚を読んでいると書きました。6
2021年の報道では、AI-OCR(学習で文字を読むOCR)も、多くの場合、精度が100%に届かず、読み取った後に目で確かめる手間がかかるとされました。7
OCRの主な出来事を、1912年から2021年まで年代順に並べました。学習で読む方式が出た1989年と1998年、AI-OCRの課題が報じられた2021年に色を付けています。
1912〜1968年、数字や文字を読む専用の機械
OCRの年表によると、1912年に、エドマンド・フルニエ・ダルベが「Optophone」を作りました。紙の上で動かすと、印刷された文字に合わせた音が出る、手に持つ装置です。1
日本では、1968年7月1日に、東京中央郵便局で郵便番号自動読取区分機が動き出しました。当時は5桁の郵便番号で、手作業で仕分ける場合と比べて、約7倍の速さだったそうです。2
情報処理学会のコンピュータ博物館の解説では、東芝の郵便物仕分け機「TR-3」と「TR-4」が、最初に市販された製品でした。発売は1968年7月です。世界で初めて、手書きの数字を読む製品でもありました。8
最初の国産のOCR製品は、郵政省が導入した郵便番号の考え方をきっかけに生まれたと、同じ解説は書いています。
仕分け機が読むのは、郵便番号
この仕分け機が読むのは、郵便番号という、短くて桁の決まった数字でした。手書きでも、数字だけなら、機械で読めました。
1975〜2005年、複数の書体を読む機械とソフト
1975年に、レイ・カーツワイルが読み上げ機「Kurzweil Reading Machine」を発表しました。
印刷された文字を読み、合成した音声で読み上げる機械です。印刷された文字を合成音声に変えられる、複数の書体に対応した最初のOCRだったと、視覚障害者の団体(AFB)は書いています。
価格は5万ドルで、個人が買える値段ではありませんでした。大きさは、小さな洗濯機ほどだったそうです。3
Tesseract、10年の開発と2005年の公開
「Tesseract」は、ヒューレット・パッカード(HP)が1984年から1994年まで開発したOCRソフトです。2005年に、中身が誰でも読める形(オープンソース)で公開されました。
Tesseractは、HPの研究所で、博士課程の研究として始まりました。HPの平らなスキャナーに付けるソフトや装置にできそうだ、という見込みで、開発が進みました。4
開発者のレイ・スミスによると、当時の市販のOCRはまだ発展の途中で、きれいな印刷以外では、うまく読めませんでした。4
開発は1994年の終わりで止まりました。そのソフトが、1995年に、ネバダ大学ラスベガス校(UNLV)が開いた精度の比べ合いに出されて、市販のソフトと比べても実力を示しました。HPが公開したのは、2005年の終わりです。4
1989〜1998年、例から学んで手書きを読む
1989年に、手書きの数字を読む学習の仕組み「LeNet」が作られました。アメリカの郵便局を通った手書きの郵便番号を使って、学習と評価をしました。5
人が文字の特徴を決めておく代わりに、たくさんの例を見せて、数字の読み方を機械に覚えさせる方式です。
手書きの数字を集めた学習用のデータ「MNIST」は、アメリカの国勢調査局の職員が書いた数字と、高校生が書いた数字をもとに作られました。5
このデータができて、いろいろな方式の読み間違いの率を、同じ数字で比べられるようになりました。
1998年、小切手を読む仕組みが実用に
1998年に、LeNetを作ったヤン・ルカンらが論文を発表しました。6
文字を1つずつ切り出す段階、読む段階、前後の並びから読みを直す段階を、別々に作らず、まとめて学習させる方法です。6
要旨によると、小切手を読む仕組みは商用で使われ、1日に数百万枚を読んでいます。法人と個人の小切手の読み取りで、当時の最高の精度を出しました。6
2021年、AI-OCRも精度は100%ではなかった
2021年10月のニュースイッチ(日刊工業新聞社)の記事によると、AI-OCRは多くの場合、精度が100%に届きませんでした。読み取ったあとに目で確かめる手間が、前後の作業の負担になっていました。7
同じ記事は、キヤノンマーケティングジャパンが、AI-OCRで電子データを作ったあと、熟練の担当者が確認するサービスを始めると伝えています。7
読む仕組みを比べる
| 時期と例 | 読む仕組み | 特徴 |
|---|
| 1968年の郵便物仕分け機 | 手書きの数字を読んで仕分ける | 読むのは郵便番号 |
| 1975年のKurzweil | 複数の書体の印刷を読み、音声で読み上げる | 価格は5万ドル |
| 1984〜2005年のTesseract | 印刷の文字を読むソフト | 10年の開発のあと、2005年に公開 |
| 1998年の小切手の読み取り | 手書きを、まとめて学習した仕組みで読む | 1日に数百万枚を読むと論文が述べた |
| 2021年のAI-OCR | 紙の書類の文字を学習で読む | 多くの場合、100%に届かない |
いま紙の書類を読み取らせるときに気をつけること
請求書の金額、振込先の口座番号、日付は、1字の読み間違いが支払いの間違いにつながります。読み取ったあとは、元の書類と見比べる手順を、最初から作業手順に組み込んでおくと安全です。
読む仕組みが変わっても、確かめる手順は残しておくのがよいと考えています。出典で確かめられたのは2021年の報道までなので、いまの精度は、使う道具で試して決めてください。
手書きの書類が多い場合は、読み間違いが出やすい欄を決めて、そこだけ人が見る方法もあります。
見比べた結果、直した箇所を記録しておくと、どの欄で読み間違いが多いかが分かります。次の見直しで、確かめる欄を絞る材料になります。
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