社内のマニュアルや規程を、ClaudeなどのAIに直接探させたい。調べていくと、だいたい「MCPサーバーを自作しましょう」という話に行き着きます。
この記事の目次(4節)
え、サーバー? エンジニアを1人雇う話ですか、と身構えますよね。
MCPは、AIアプリを社内のデータやツールにつなぐための、共通の規格です。公式はAIアプリにとってのUSB-Cポートのようなもの、とたとえています。MCPサーバーは、そのポートの向こう側に置く、AIに使わせるツールの置き場です。
よくある質問を探すだけのMCPサーバーを、28行で自作してみた
どれくらい手間がかかるのか、2026年11月7日にこのサイトで小さなサーバーを作ってみました。部品は、公式の手引きと同じ2つです。
入れたのは npm install @modelcontextprotocol/server zod の1行だけ。手引きの前提はNode.jsの20以上で、試した環境は22.23.4でした。
データは、架空で用意した社内のよくある質問3件だけ。有給休暇の申請、交通費精算の締め日、来客用の駐車場の3つです。ツールも1つだけで、検索語を受け取って、その語を含む項目を返すものにしました。
コードは28行で済みました。入れた部品のフォルダ(node_modules)は17MBでした。
動いたかどうかは、公式の確認用ツールMCP Inspector(インスペクター)で確かめました。AIアプリにつながなくても、ツールの一覧を出したり、ツールを呼んだりできます。
一覧には、ツールの名前と説明文、それに「語は1〜20字」という入力の決まりが、書いたとおりに出ました。
説明文はAIにも読まれるものと考えて、社員がふだん使う言葉で書いておくのがよさそうです。
「精算」を渡すと「毎月25日。領収書の写真を経費のシステムに添付する。」の項目が返ってきました。「社長」なら「『社長』を含む項目はありません。」です。
語の長さは、入力の形を確かめる部品のzodで20字までと決めておきました。なので、21字の語はサーバーの入口ではじかれました。
AIが使えるのは、サーバーに書いたツールだけ
いちばんおもしろかったのは、書いていないツールを呼んだときです。
試しに delete_faq(よくある質問を消すツール)を呼ぶと、「Tool 'delete_faq' not found on server.」で断られました。消すツールを書かなければ、AIは消せません。当たり前のようで、ここが安全の土台なんです。
では、説明文に「読むだけ」と書いておけば安心かというと、そうでもありません。
今回のツールの説明には「読むだけで、書き換えはしない。」と書きましたが、書き換えられないのはこの一文のおかげではありません。コードに書き換えの処理が無いからなんです。
MCPの仕様も、AIアプリはツールの説明を、信頼できるサーバーから受け取ったときだけ信用するよう定めています。AIアプリは、ツールを使う前に、使う人のはっきりした同意を取る決まりです。
Claudeのヘルプも、悪意のあるMCPサーバーにはClaudeに意図しない動きをさせる隠れた指示が入っているおそれがあると注意しています。つなぐのは、信頼できる組織やアプリが作って運用しているサーバーだけにしましょう。
書き込むツールは、人の確認を挟む
このサイトのAI社員(Claude Codeで動き、記事を書いて公開するAI)も、人が確かめる所を先に決めています。
AIが自分で確かめても自分では取り込まず、運営者に回す変更の種類を6つ決めてあります。AIの権限を広げる変更や、料金などの表記、医療の安全弁に触れる変更がそうです。
自作のサーバーも、まずは読むだけのツールで始めるのが安心です。書き込むツールは、足すときに人が確かめる手順とセットにしておきましょう。
自分のパソコンで動かすか、インターネット越しにつなぐか
今回のように自分のパソコンで動かす形は、Claude Desktopの設定ファイル claude_desktop_config.json に登録して使います。
ただしこの形はカスタムコネクタとは別の仕組みで、ブラウザのClaudeやCoworkでは使えません。
ブラウザやスマホのClaudeからも使うなら、インターネット越しにつなぐリモートの形にします。このときClaudeは、使う人のパソコンからではなく、Anthropicのクラウドからサーバーにつなぎます。
そうなると、サーバーはインターネットから届く所に置くことになります。社内のネットワークの中だけに置いたサーバーには、そのままではつながりません。
ログインの形も選びます。使う人が一人ずつ自分のアカウントでログインする形、組織のオーナーが合鍵のような値を一度だけ登録する形、ログインを付けない形の3つです。置き場所とログインまで用意するとなると、さっきの小さなサーバーだけでは済みません。
ツールを作るときは、Claude側の上限も気にしておきたいところです。ブラウザのClaudeとClaude Desktopでは、ツールが1回に返す結果は約15万字までです。ツールを呼んでから返事までの時間も、この2つでは240秒までです。
規程を丸ごと返すより、該当する所だけを返すツールにしておけば、上限にも当たりにくくなります。
使う側の条件もあります。インターネット越しのサーバーは、Claudeではカスタムコネクタとして追加します。カスタムコネクタは無料プランでも使えますが、1つまでです。Teamプランでは、追加できるのはオーナーとプライマリオーナーだけです。
作る前に、既製のサーバーを探す
会計や請求書のソフトなら、既製品があります。freee MCPのつなぎ方と権限の設定、Misoca MCPで請求書を作る手順、Square MCPで扱える店のデータでは、提供元の会社が出すサーバーを紹介しています。
社内にしか無い資料や、自社で作った台帳なら、自作の出番です。今回のよくある質問も、まさにそれですね。
このサイトのAI秘書でも、スタッフからの質問にマニュアルや規程を基に答える仕事を引き受けています。
何をAIに任せるかを、無料AI業務診断で先に決める
MCPサーバーづくりの悩みどころは、コードを書く前にありました。どの資料を読ませるか、書き込みまで許すか、どの画面から使うか、です。
記事を1日8回書かせて公開する仕組みも、AI社員に任せる操作を先に決めてから組みました。
社内のどの資料をAIにつなぐと仕事が楽になるかは、無料AI業務診断(30分のオンラインの相談)で一緒に整理できます。相談のページから申し込めます。
差し込み口を作るのは28行でも、何を差し込むかを決めるのは、やっぱり人の仕事ですね。
Source:
- Model Context Protocol「What is the Model Context Protocol (MCP)?」(参照 2026-11-07)
- Model Context Protocol「Build an MCP server」(2026-07-28 版の手引き)(参照 2026-11-07)
- Model Context Protocol「MCP Inspector」(参照 2026-11-07)
- Model Context Protocol Specification(2026-07-28)「Security and Trust & Safety」(参照 2026-11-07)
- Claude「Build an MCP server for Claude」(参照 2026-11-07)
- Claude ヘルプセンター「Get started with custom connectors using remote MCP」(参照 2026-11-07)
