要点

対象:AIに発注や下書きを任せ始めた会社の担当者

  1. 発注を受ける窓口も契約の条項も、日本では見つからない
  2. Copilotの修正は6月から変更履歴に出る
  3. 人のレビュー時間を数える機能は9月25日にあった

このサイトの未来予想の記事では、最後に、この未来が近づくなら先に起きるはずのことを「兆し」として挙げています。

この記事の目次(10節)
  1. 確かめ方
  2. 発注を受ける窓口と契約の条項は、まだ見つからない
  3. AIの責任者を決める話は前からあり、組織図には載っていない
  4. AIの修正を変更履歴で見せる機能は、Wordに6月からある
  5. 承認の待ち日数を、会社が公表した例は見つからない
  6. 5つの兆しのいま
  7. 兆しとは別に、待ち時間の数字を1つ
  8. ここから先は想像です
  9. この未来が近づくなら、先に現れる兆し
  10. 自分で試せること

今回は、AIに発注を任せる取引と、AIの仕事を人が確かめる流れにかかわる兆しを、3本の記事から5つ選びました。

  • 9月28日の記事: 仕入れ先や外注先が、AIエージェントからの見積もり依頼や発注を受け付ける窓口や様式を用意し始める
  • 9月28日の記事: 業務委託契約や取引基本契約に、AIエージェントが発注や契約締結をした場合の扱いを定めた条項が入り始める
  • 10月13日の記事: 組織図で、AIの名前の隣に、確認する人の名前が並ぶ
  • 10月20日の記事: AIの下書きに、変更点や根拠、見てほしい所を添える機能が標準になっていく
  • 10月20日の記事: 承認が済むまでの待ち日数を、月ごとに数えて報告する会社が出てくる

確かめ方

先週(10月18日)の兆しの点検と同じく、兆しを挙げた日より後に起きたことだけを「現れた」と数えます。挙げる前からあったものは、数えません。

5つとも、兆しの中身そのものが現れたとは言えませんでした。ただ、どの兆しにも似たものはありました。兆しごとに、似ていたものと違う点を書きます。

発注を受ける窓口と契約の条項は、まだ見つからない

2つの兆しは、9月28日の記事(AIエージェントが変える外注と内製)で挙げました。

発注を受ける側の窓口

見積もりや発注を受ける側が、AIからの依頼を受け付ける窓口を用意する、という兆しでした。日本の会社の発表は、探しても見つかりませんでした。

近い話は2つありました。1つ目は、建設業向けにコンクルーが2月28日に出した見積作成AIエージェントです。発注や協力会社との調整を担うエージェントは、これから増やす計画です。1

発表に、取引先がAIから依頼を送る窓口の説明はありません。1

2つ目は、Crossmintが10月8日に出した、AIに買い物をさせるための開発者向けのツールキットです。店の側が対応しなくても使えるのが特徴です。2

これは、店が窓口を用意する話ではありません。買う側のAIが、店に注文を送る仕組みです。紹介記事の書き方からは、ネット店舗での購入を想定しているように読めます。2

契約書の条項

契約書にAIエージェントの扱いを書く、という兆しは、条項の例を探しました。日本の弁護士による具体的な条項の解説は、見つかりませんでした。

AIエージェントを使う技術契約の多くでは、使う会社が最終的にAIの行為のリスクを負います。法律事務所Clifford Chanceが2月10日に指摘しました。3

そのうえで、AI固有の条項や、賠償の上限額を引き上げる交渉を勧めています。3 これは、9月28日より前の提案です。条項が実際に契約書に入り始めた例ではありません。

AIの責任者を決める話は前からあり、組織図には載っていない

10月13日の記事(AIを組織図に載せた会社の責任)では、組織図でAIの名前の隣に、確認する人の名前が並ぶ、と書きました。

JumpCloudは、10月9日更新の解説で、AIエージェントごとに責任を持つ人を決める役割を説明しています。この人は「Agent Owner of Record」と呼ばれ、導入から廃止まで、そのAIに責任を持ちます。4

この責任者は、AIのID情報を管理する台帳に、責任者の欄として載せるものです。解説に、組織図に載せるという話はありませんでした。4

10月9日は、兆しを挙げた10月13日より前なので、現れたとは数えません。

AIの修正を変更履歴で見せる機能は、Wordに6月からある

10月20日の記事では、AIの下書きに変更点や根拠を添える機能が標準になる、と書きました。見てほしい所を示す機能も挙げました。

Word上のMicrosoft 365 Copilotは、AIが直した所を、単語ごとの変更履歴で見せます。変更履歴は、最初から表示されます。5

メッセージセンターの6月8日の案内によると、一般提供は6月上旬に始まっています。5 10月20日より前からある機能です。

案内には、確認が要る箇所に印とコメントを付けるよう、AIに頼む例があります。ただ、根拠を示す専用の機能としては書かれていません。AIの変更を人が承認する専用の流れも、書かれていません。5

承認の待ち日数を、会社が公表した例は見つからない

同じ10月20日の記事で、承認が済むまでの待ち日数を、月ごとに数えて報告する会社が出てくる、とも書きました。

GitHubは9月25日、GitHub Copilotの利用状況を見るデータに、プルリクエスト(コードの変更を提案し、レビューを受ける仕組み)のレビュー時間を足しました。6

段階は3つです。最初のレビューまで、最初から最後のレビューまで、最後のレビューから取り込み(マージ)までです。それぞれ、真ん中の値(中央値)と、長い側の値(90パーセンタイル)が見られます。6

数えるのは人のレビューだけで、GitHub Copilotや他のボットのレビューは入りません。6 このレビュー時間の集計機能も、10月20日より前に出ています。ただ、数えるための機能です。会社が自社の数字を公表した例ではありません。

5つの兆しのいま

5つの兆しのいま(10月25日) 兆しを挙げた記事 9月28日 発注を受ける窓口を用意する 似たもの: 買う側のAIが店へ注文を送る部品(10月8日) まだ 兆しを挙げた記事 9月28日 契約書にAIの発注の条項が入る 似たもの: 入れるよう勧める解説(2月) まだ 兆しを挙げた記事 10月13日 AIの名前の隣に確認者の名前 似たもの: 責任者を名簿に記録する解説(10月9日) まだ 兆しを挙げた記事 10月20日 AIの下書きに変更点や根拠を添える 似たもの: Wordの変更履歴(6月から) まだ 兆しを挙げた記事 10月20日 承認の待ち日数を会社が報告する 似たもの: レビュー時間を数える機能(9月25日) まだ
兆しを挙げた記事の日付と、10月25日の時点で現れたか、似たものは何かを並べました。

兆しを挙げてから、長くても27日しかたっていません。

兆しとは別に、待ち時間の数字を1つ

確かめる途中で、LinearBの調査を見つけました。810万件を超えるプルリクエストを、4,800チームから集めたものです。7

AIエージェントが作った変更AIを使わない変更
レビュー担当者が着手するまでの待ち時間(長い側の値)17.6時間3.4時間

AIが作った変更のうち、30日以内に取り込まれたのは32.7%でした。AIを使わない変更は84.4%でした。7

このページには日付の記載がなく、いつの調査かは確かめられませんでした。多くのチームを合わせた集計で、1社が公表した待ち日数でもありません。

ここから先は想像です

確認の待ちは、まずコードの世界で数えられるようになりました。書類やメールの世界でも、同じように数える仕組みが出てくるのかもしれません。

そのとき、数字を出す会社が先に現れるのか、数える仕組みが先に広がるのかは、分かりません。Wordの変更履歴のように、仕組みのほうが先に来る気がします。

数字が出れば、「AIで速くなった」ではなく「確認が済むまで何日かかったか」で、会社を比べる人も出てくるのではないでしょうか。

この未来が近づくなら、先に現れる兆し

  • 日本の取引先の窓口や発注の様式に、「AIからの依頼」を扱う旨が書かれる
  • 日本の弁護士の解説に、AIエージェントによる発注を想定した契約の条項の例が載る
  • 会社の組織図や担当者名簿に、AIの名前と並べて、確認する人の名前が載る
  • 会社が、AIで作った書類の確認待ちの時間を、月ごとに公表する
  • Wordやメールの機能に、AIが直した理由や、確認してほしい所を示すものが加わる

自分で試せること

この1か月に、AIに頼んだ書類や返信のうち、人の確認が済むまでに2日以上かかったものを探してください。

見つかったら、確認を待っていた日数をメモします。確認する人が1人に偏っていないかも見てください。偏っていれば、次に頼むとき、AIに「確認してほしい所を3つ書き添えて」と頼んでから渡してみてください。

出典

  1. ASCII.jp「コンクルー、見積作成AIエージェントを提供開始」(2026年2月28日)(参照 2026-10-25)
  2. Agile Brand Guide「Yesterday’s MarTech, AI & CX News | October 9, 2026」(Crossmintの発表を紹介)(参照 2026-10-25)
  3. Clifford Chance「Agentic AI and the liability gap your contracts may not cover」(2026年2月10日)(参照 2026-10-25)
  4. JumpCloud「What Is an Agent Owner of Record?」(2026年10月9日更新)(参照 2026-10-25)
  5. Microsoft 365 メッセージセンター「MC1384426 - Microsoft 365 Copilot in Word: Improved support for complex edits」(2026年6月8日)(参照 2026-10-25)
  6. GitHub Changelog「Usage metrics API adds pull request review stages」(2026年9月25日)(参照 2026-10-25)
  7. LinearB「AI in software development: what the 2026 data shows」(日付の記載なし)(参照 2026-10-25)