シンガポールの飲食店、請求書のAI読み取りで処理が80%速くなった
悠 Yu NiiboriAIエンジニアプロフィール
出典 5件

要点
対象:仕入れの請求書を手で打ち込んでいる飲食店
- 請求書の処理が80%速くなった
- 棚卸しの時間も40%減った
- 別の受賞企業は単価の食い違いを社員が確認
仕入れ先の請求書を、品名・単価・数量まで手で打ち込んでいると、閉店後に打ち込みの作業が残りがちです。
この記事の目次(7節)
- 受賞した会社と、受賞の公式ページの数字
- 導入の前は、請求書と棚卸しに人手を取られていた
- 読み取った値段で、レシピの原価を更新する
- 数字は会社が出し、現地審査で確かめる
- 同じ部門のYou Tiao Manは、n8nとClaudeで自前の仕組みを作った
- 日本の飲食店が試す前に調べておくこと
- 仕入れの請求書をAIに任せられるか、無料AI業務診断で確かめる
シンガポールで複数の飲食店ブランドを運営するThe Gourmet Factorは、請求書をAIで読み取るサービスを導入し、請求書の処理が80%速くなりました。読み取った仕入れ値で、メニューの原価も計算し直しています。1
日本で試すなら、まず1か月に届く納品書と請求書の枚数と、手で打っている項目を数えます。
受賞した会社と、受賞の公式ページの数字
シンガポールの政府機関と経済団体が選んだ30社の1社
The Gourmet Factorは、2026年10月13日に中小企業向けの賞「SME AI Impact Awards」を受賞しました。1
賞は、シンガポールの情報通信メディア開発庁(IMDA)とシンガポール・ビジネス連盟(SBF)が共同で主催し、今年が1回目です。12
応募は290件あり、30社が選ばれました。応募した会社の業種は21でした。2
The Gourmet Factorは、飲食店向けのサービス「Restoke.ai」を使っています。受賞の部門は、市販のAIを入れた会社が対象の「Adoption Excellence」です。1
請求書・棚卸し・投資の数字
受賞の公式ページには、次の3つの数字が載っています。1
| 何が変わったか | 数字 |
|---|
| 仕入れ先の請求書の処理 | 80%速くなった |
| 棚卸しにかかる時間 | 40%減った |
| 投資の効果 | 5か月以内に、かけた費用と同じ額の利益が出た(投資利益率100%) |
従業員の数や、何時間が何時間になったかは、受賞の公式ページからは分かりません。
導入の前は、請求書と棚卸しに人手を取られていた
棚卸しと、仕入れ先の請求書の処理に、多くの人手がかかっていました。そのぶん、もっと大事な仕事に回す時間が減っていました。1
在庫の記録がばらばらで、いまどれだけあるかがつかみにくく、欠品や発注のしすぎ、過剰在庫につながっていました。1
仕入れ値が、処理していない請求書の中に埋もれていた
最新の仕入れ値は、まだ処理していない請求書の束の中にありました。そのため、メニュー1品ごとの原価(レシピの原価)を正しく保つことも、仕入れ値の値上がりに手を打つこともできずにいました。1
読み取った値段で、レシピの原価を更新する
読み取った仕入れ値でレシピの原価を更新する。棚卸しは別の作業で、スマートフォンで数えて記録する。数字と機能は受賞の公式ページ、撮影とメールでの送り方はRestokeのページから。
Restoke.aiでできること
Restoke.aiは、仕入れ先の値段・在庫・レシピを1つのサービスにまとめます。受賞の公式ページでは、機能を次の4つに分けて紹介しています。1
| 機能 | 中身 |
|---|
| 請求書の処理 | 文字を読み取る技術(OCR)と機械学習で、仕入れ先の請求書の中身を取り出す |
| 棚卸し | スマートフォンなどで数えた在庫を記録し、店ごとの在庫の記録を1か所にまとめる |
| レシピの原価 | 仕入れ先のいまの値段で、レシピの原価を更新する |
| 発注 | 在庫と原価の記録を、発注を決める手がかりにする |
請求書はスマートフォンで撮るか、メールで送る
店の人は請求書をスマートフォンで撮るか、メールで送ります。請求書は、品名・単価・数量が1行ずつ並んだ明細として取り込まれ、いつでも見直せます。3
The Gourmet Factorで、誰がどの段階で読み取りの結果を確かめているかは、主催者の公式ページからは分かりません。
数字は会社が出し、現地審査で確かめる
応募の条件と審査のしかた
応募の条件の1つは、AIを入れてから6か月以上たち、成果が出ていることです。ほかに、シンガポールで登記した会社であることや、売上高か従業員数の上限があります。1
審査では、生産性やお金の面の効果のほか、社員への教え方や、仕事の手順がどう変わったかも見ます。現地審査の対象に選ばれた会社には、SBFが出向いて、応募の内容とAIを使っている様子を確かめます。1
現地で確かめてはいますが、「80%」が何件の請求書を、どの期間で比べた数字かは、受賞の公式ページからは分かりません。
同じ部門のYou Tiao Manは、n8nとClaudeで自前の仕組みを作った
揚げパンの製造と卸の会社
同じ部門で受賞した飲食の会社に、You Tiao Manがあります。請求書の処理の数字も出しています。1
You Tiao Manは、油条(冷凍の揚げパン)など、アジアの軽食を作っています。ホテルや飲食店、仕出しの会社、スーパーに卸しています。1
単価の食い違いは社員が確かめる
同社は、自動化のツール「n8n」と、AIの「Claude」を使って自前の仕組みを作りました。請求書の中身を取り出し、登録してある単価と比べて、食い違いを社員に知らせます。社員が承認した請求書は、会計のシステムに送ります。1
| 項目 | The Gourmet Factor | You Tiao Man |
|---|
| 仕事 | 飲食店ブランドの運営 | 軽食の製造と卸 |
| 使ったもの | 飲食店向けのRestoke.ai | n8nとClaudeで組んだ仕組み |
| 請求書の処理 | 80%速くなった | かかる時間が83%減った |
| 会社全体で浮いた時間 | 公式ページに記載なし | 1週間にのべ40時間 |
| 人が決めること | 公式ページに記載なし | 単価の食い違いの確認と、承認 |
請求書の食い違いを人がどう確かめるかは、米国の物流会社の例でも取り上げました。
日本の飲食店が試す前に調べておくこと
枚数と打っている項目
AIを選ぶ前に次の4つを調べておくと、打ち込みの時間がどれだけ減りそうか、見当がつきます。
| 調べること | 調べる理由 |
|---|
| 1か月に届く仕入れ先の納品書と請求書の枚数 | 打ち込みにかかっている時間の見当がつく |
| 手で打っている項目(品名・単価・数量) | Restokeは、請求書を品名・単価・数量の明細にする |
| 打った単価を、原価計算やメニューの値付けに使っているか | The Gourmet Factorは、仕入れ値でレシピの原価を更新している |
| 単価の食い違いを、いま誰が見つけているか | You Tiao Manは、登録した単価と比べて食い違いを社員に知らせる |
原価の計算まで変わりそうなのは、The Gourmet Factorのように単価を原価に使っている店です。原価計算をしていない店で減るのは、打ち込みの手間が中心になりそうです。
日本では、インボイスの保存と登録番号も気にする
売上げの消費税から仕入れの分を差し引く(仕入税額控除)には、原則として、受け取ったインボイスを保存しておく必要があります。簡易課税などを選んでいる事業者は扱いが違うので、顧問の税理士に確かめます。4
相手がインボイス発行事業者として登録しているかは、国税庁の公表サイトで調べられます。登録番号の「T」のあとの13桁を入れて、一度に10件まで検索できます。5
日本の会社の例は、請求書の読み取りで工数を減らした坂善商事とコメリの記事にあります。読み取りの料金はマネーフォワードのAI-OCRの記事にあります。飲食店のほかの使い道は電話注文と店舗情報の記事で取り上げました。
当サイトのAI秘書も、受け取った請求書・領収書の読み取り、登録番号の照合、会計ソフトへの取り込みを受け持ちます。範囲はAI秘書の請求・経理に載せています。
仕入れの請求書をAIに任せられるか、無料AI業務診断で確かめる
請求書の事務をどこからAIに任せられるかは、お店ごとに、無料AI業務診断(30分のオンラインの面談)で確かめられます。申し込みは相談のページからどうぞ。