電話のテイクアウト注文の8割を、AIだけで受け付けられたとするサービスが出てきました。 客の側でも、AIツールが薦めた店に足を運ぶ人が出てきました。
この記事でわかること
- AIツールで店を選ぶ人の8割以上が、掲載情報の不備で店を候補から外したことがあります
- AI電話応対が使えるかは、注文管理システムの調理時間や品切れの情報をAIが読めるかにかかっています
- 受注量の上限と衛生管理の記録は、AIを入れても店主が担います
この記事の目次(10節)
AIツールで店を選ぶ客
AIツールが薦めた店に実際に行った割合(来店率)は60%でした。 インバウンドや口コミ対策の情報を扱う訪日ラボが、2026年10月1日に発表した調査です。AIツールを普段から使い、店選びにも使ったことがある20〜50代の483人が、9月7〜9日に答えました。1
AIツールの情報だけで店を決めたことがある人は、約28%でした。多くの人は、ほかのサイトも見て情報の真偽や場所を確かめています。掲載情報の不備で店を候補から外したことがある人は、8割を超えました。1
AIで知った店、6割近くが「2回に1回は行く」
それより前の2026年1月には、COLLINSが、1人3,000円以上の外食を3か月に1回以上する1,049人に聞いています。ChatGPTなどのAIツールで店を知る人は1割を超えました。AIツールで店を知ると答えた人のうち、6割近くが、薦められた店に「2回に1回は行っている」と答えています。2
AIで店を知る人は、まだ少数です。それでも、グルメサイトや地図アプリとは別の、新しい集客の経路になりつつあります。
米国では、AIが利用者の代わりに店へ電話をかける機能の試験提供も始まりました。日本ではまだ使えません。詳しくはGeminiが店に電話をかける機能の記事で取り上げています。
電話注文を受ける音声AI
tacomsは2026年6月1日、電話のテイクアウト注文をAIが受け付ける「Camel AI Call」を正式に提供し始めました。 とんかつの「かつや」とラーメンの「8番らーめん」での実証実験を経たものです。実証実験では、電話のテイクアウト注文のうち8割を、AIだけで受け付けられたとしています。3
調理時間と品切れを見て注文を受ける
Camel AI Callは、同社の注文一元管理サービス「Camel」と連携しています。AIは、営業時間や調理にかかる時間、品切れの情報をその都度確かめてから、注文を受けるかどうかを決めます。tacomsは今後、デリバリーや予約の問い合わせにも対象を広げる予定です。3
例えば、昼の12時台に注文が立て込んでいる店なら、受け取り時間を30分後と伝えたり、品切れの品の注文を断ったりしなければなりません。電話に出た人が厨房に確かめて決めていたことを、AIが店のデータをもとに決めることになります。電話の取り次ぎが機械に置き換わってきた経緯は、電話交換手から自動交換機への移り変わりの記事にまとめました。
AIを使ったことがある店は4軒に1軒
飲食店の求人・開業支援サイトを運営するシンクロ・フードは、2025年6月に飲食店の経営者・運営者326人に聞きました。AIを積極的に利用している店は16.3%でした。「利用してみたが、うまく使いこなせていない」(10.4%)を合わせると、利用経験がある店は26.7%です。4
今後も利用する予定がない店に理由を聞くと、「具体的な用途がイメージできない」が62.2%で最も多くなりました。利用経験がある店の73.5%は「非常に満足」か「やや満足」と答えています。使い道が分かれば、利用が広がる余地はあります。4
人手不足、和らいだがなお高水準
AIで電話や事務の手間を減らしたい背景には、人手不足があります。帝国データバンクの2026年4月の調査では、飲食店の非正社員の人手不足割合は59.1%で、業種別で2番目に高い割合でした。2024年4月の74.8%、2025年4月の65.3%からは下がっています。同社は改善の背景に、DXやスポットワークの普及に加え、物価高や来客数の落ち着きを挙げています。5
AIが使われ始めた業務と店主が担う業務
飲食店の業務を4つに分けると、AIが使われ始めたのは図の上の2つです。
| 業務 | いまの課題や勧められていること | AIとの関わり |
|---|---|---|
| 電話のテイクアウト注文 | ピークの時間帯に電話を取りきれない | 調理時間や品切れを見て、AIが受け付けるサービスがある3 |
| 店舗情報 | 掲載情報の不備が、店を候補から外す理由になっている1 | 客がAIツールで店を探す |
| 受注量の判断 | 処理できる量を超える受注は控えるよう、手引書が勧めている | 上限は店主が決め、AIはその範囲で受け付ける |
| 衛生管理の記録 | 1日の最後に実施結果を記録し、定期的に振り返るよう、手引書が勧めている | AIは関わらず、店が続ける |
下の2つは、後の節で取り上げる衛生管理の手引書に書かれています。表の右の列のとおり、AIが動くのは店主が決めた範囲の中です。
筆者の見立て
ここからは筆者の見立てです。 今後数年で大きく変わるのは、店舗情報の更新と、電話注文の受付だとみています。
店舗情報はAIが読むことを前提に整える
AIで店を探す客が増えると、情報が正しくない店は候補に入りにくくなりそうです。営業時間、定休日、席数、予約の可否などは、地図アプリやグルメサイトで同じ内容にそろえておく必要が出てきます。
掲載先が多い店なら、掲載先ごとの食い違いをAIで洗い出す使い方があります。使い道が分からないと答えた店にとっても、試しやすい使い道の一つになりそうです。
音声AIは店のデータ連携が前提
音声AIは、注文を受けるかどうかを決めるデータが店になければ、正しく判断できません。調理時間や品切れをシステムで管理している店ほど、早く効果が出るでしょう。紙の伝票で回している店では、先にPOSレジや注文管理システムを整えることになりそうです。
受注量と衛生管理の記録は店主の仕事
2021年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者に、HACCPに沿った衛生管理が求められています。衛生管理計画を作り、実施状況を記録して保存しなければなりません。6
小規模な飲食店は、業界団体が作り、厚生労働省が確認した業種別手引書に沿って取り組めばよいとされています。日本食品衛生協会の手引書は、1日の最後に実施の結果を記録するよう勧めています。できれば日々の点検をした人とは別の人(店主など)が、1か月程度ごとに記録を振り返ることも挙げています。67
処理できる量を超える受注は控える
同じ手引書は、普段から処理できる量を超えて作業すると食中毒にもつながるとして、無理な受注を控えるよう勧めています。7 AIが電話注文を受けるなら、1時間に何件まで受けるかという上限は、店主が決めてAIに設定することになります。
メニューや仕入れ先が変わったときに衛生管理計画を見直すのも、手引書が挙げる店の仕事です。7 メニューが変われば、AIの受付の条件も店主が直す必要があります。AIは、与えられた条件のまま受付を続けるからです。
予約客の個人情報
電話の予約や注文では、客の名前や電話番号を扱います。個人情報保護委員会は、生成AIに個人情報を入力する場合、利用目的の範囲内かを十分に確かめるよう求めています。8 どの情報をAIに渡すかを決めるときは、IPAが挙げる生成AIのセキュリティ対策が参考になります。
導入費用と補助金
導入の費用には、デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)が使える場合があります。通常枠の6次締切は2026年10月30日17時、交付決定は12月10日の予定です。9 店が自分で申し込んだChatGPTの料金が対象になりにくい理由は、ChatGPTと補助金の記事にまとめました。
導入前に確かめること
AIに任せる前に、その業務で店が決めている条件を書き出しておくと、任せる範囲を決めやすくなります。
| 手間のかかっている業務 | 最初に確かめること |
|---|---|
| ピーク時の電話注文 | 調理時間と品切れの情報が、注文管理システムやPOSレジに入っているか |
| 予約の電話 | 予約を受ける席数と時間帯を決め、ネット上で確かめられるようにしてあるか |
| 店舗情報の更新 | 営業時間・定休日・予約の可否が、地図アプリとグルメサイトで同じか |
| 受注量の判断 | 1時間に受けられる注文の上限を、店主が数字で決めてあるか |
| 衛生管理の記録 | 記録の振り返りを、誰がどのくらいの間隔でしているか |
電話を取りきれない時間帯がはっきりしている店は、注文管理システムが調理時間と品切れを扱えるかどうかが出発点です。電話とネット予約のどちらに寄せるかで迷うなら、クリニックの受付を例に、AIが応答する製品とネット予約を比べた記事が参考になります。掲載先ごとに店舗情報が違っている店は、AIを入れる前に、その違いを直すところからになります。
出典
- 訪日ラボ「AIツール推奨店への来店率は60%!訪日ラボ、AIツールが飲食店選定に与える影響度レポートを公開」(2026年10月1日)(参照 2026-10-01)
- COLLINS株式会社「【飲食店の選び方】2026年最新調査結果を発表!AIがどの程度『飲食店選び』に関与しているかも明らかに。」(PR TIMES、2026年2月24日)(参照 2026-10-01)
- 株式会社tacoms「飲食店の電話テイクアウト注文の80%をAIが自動完結、かつや・8番らーめんでの実証を経て『Camel AI Call』が正式リリース」(PR TIMES、2026年6月1日)(参照 2026-10-01)
- 株式会社シンクロ・フード「約半数の飲食店がAI導入で飲食店の仕事が変わると回答〜飲食店のAI活用状況調査〜」(PR TIMES、2025年7月15日)(参照 2026-10-01)
- 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」(PR TIMES、2026年5月19日)(参照 2026-10-01)
- 厚生労働省「HACCP(ハサップ)」(参照 2026-10-01)
- 公益社団法人日本食品衛生協会「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)概要版」(令和6年1月改訂)(参照 2026-10-01)
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日)(参照 2026-10-01)
- デジタル化・AI導入補助金2026「スケジュール」(参照 2026-10-01)

