要点

対象:月末の報告書づくりに追われている訪問看護の事業所

  1. 報告書の作成時間が90%短くなった
  2. 離職率は83.3%から7.7%に下がった
  3. 測った件数と期間は書かれていない

訪問看護の仕事には、月末に報告書を作る作業があります。1

この記事の目次(6節)
  1. DXセレクション2026のグランプリはプーラビダ
  2. 月末の報告書に、利用者1人あたり1時間以上かかっていた
  3. Geminiで報告書の時間を減らし、教え合って社内に広げた
  4. 90%は取組事例の数字で、測り方は書かれていない
  5. 訪問看護の事業所で試すなら、報告書1件の時間から
  6. 報告書づくりをAIに任せられるか、無料AI業務診断で確かめる

北九州市で訪問看護ステーションを運営するプーラビダ株式会社が、「DXセレクション2026」のグランプリに選ばれました。2

同社は生成AI「Gemini」を使い、月末の報告書を作る時間を90%短くしました。1

訪問看護の事業所で試すなら、まず1か月に書く報告書の数と、1件にかかる時間を調べておきます。

DXセレクション2026のグランプリはプーラビダ

経済産業省とIPAが選ぶ、中堅・中小企業のDXの手本

DXセレクションは、DX(デジタル技術で仕事のやり方を変えること)で成果を出した中堅・中小企業を、手本として選ぶ取り組みです。経済産業省が2022年から行い、IPA(情報処理推進機構)も2025年度から一緒に進めています。24

2026年の最終選考と表彰式は、5月20日に開かれました。全部で11者が選ばれました。グランプリのほかに、準グランプリが2者、優良事例が8者です。4

準グランプリは、三行合成樹脂株式会社(新潟県)と株式会社ヒューマングループ(長崎県)です。3

「DXグランプリ」で調べると、「DX銘柄」という別の取り組みの賞も出てきます。こちらは2026年の分が4月に発表されたもので、DXセレクションのグランプリとは別の賞です。8

評価されたのは「人が輝くDX」

プーラビダは2013年に設立され、2014年に訪問看護ステーションを開きました。従業員は28名(2026年5月末)です。12

同社は「人が輝くDX」を掲げ、看護師の人手不足の中で働きやすさと定着率を高めました。この点が評価されました。報告書業務の「完全自動化」を進めたことも、評価の理由に挙がっています。3

DXの前と後で変わった4つの数字

BEFORE AND AFTER THE DX 何が変わったか DXの前 DXの後 01 02 03 04 月末の報告書の作成 離職率 営業利益 生産性 利用者1人あたり 83.3% 1,500万円の赤字 ― 1時間以上 90%短縮 7.7% 1,400万円の黒字 1.5倍
プーラビダのDXの前と後の4つの数字。報告書の時間はJ-Net21の取組事例、離職率・営業利益・生産性は北九州市のお知らせから。測った件数と期間は、J-Net21と北九州市のページに書かれていない。
何が変わったかDXの前DXの後
月末の報告書の作成利用者1人あたり1時間以上90%短縮
離職率83.3%(業界平均16%)7.7%
営業利益1,500万円の赤字1,400万円の黒字
生産性―1.5倍

報告書の数字は、中小企業基盤整備機構のサイト「J-Net21」の取組事例から、残りは北九州市のお知らせから取っています。12同社は利益率が10%を超え、2年続けて臨時の賞与を出せるようになりました。1

月末の報告書に、利用者1人あたり1時間以上かかっていた

月末の報告書と、主治医に出す訪問看護報告書

介護保険の運営基準(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)では、看護師等が訪問看護報告書を作り、事業者がそれを主治医に出すことになっています。5

報告書には、訪問した日や、提供した看護の内容などを書きます。5

同じ基準では、事業所の管理者が、報告書の作成について必要な指導と管理をすることになっています。5

プーラビダでは、月末に作る報告書に、利用者1人あたり1時間以上かかっていました。この「月末の報告書」が、上の訪問看護報告書だけを指すのかは、取組事例に書かれていません。1

組織が大きくなり、離職率は83.3%に

社員が40人規模になったころ、社長・管理職・訪問を担うスタッフの階層ができ、話が食い違うようになりました。社長がほかの事業に関わる時間も増えていました。1

コロナ禍のあとは社員が疲れ、退職が続きました。離職率は83.3%に達しました。J-Net21は「会社存続の危機とも言える状況」と書いています。1

Geminiで報告書の時間を減らし、教え合って社内に広げた

使うツールをGoogle WorkspaceとiPadにそろえた

プーラビダは、費用の高い既存のシステムをやめ、Google Workspaceの有料版とGeminiに切り替えました。全従業員にiPadを貸し出しています。2

Google Workspaceは、メール・予定表・文書・表計算などをまとめて使えるGoogleの仕事向けのサービスです。Geminiは、その中で使えるGoogleの生成AIです。

変えた仕事と使ったもの

仕事使ったもの公表された変化
月末の報告書の作成Gemini作成時間が90%短縮
保険点数の計算と収益の把握自社で組んだ社内ポータルアプリ「ほぽたくん」すぐに計算でき、赤字は赤で表示
手順書の共有「ほぽたくん」と、全従業員に貸したiPad社内で手順書を共有
社内の取り組み手当付きのDXサークル・感謝アプリ組織のDXを進めた

保険点数は、処置ごとに決まり、利用者が入っている健康保険によっても計算が変わります。1

同社は「誰一人取り残さない」を合言葉に、社員どうしで教え合う仕組みと、失敗を許す風土を作りました。ITツールは、嫌がっていた社員にも無理なく広がりました。1

報告書をGeminiでどう作り、誰が確かめているか

Geminiに何を入れて報告書を作っているかは、J-Net21も北九州市も書いていません。主治医に出す前に誰がどう確かめているかも、どちらのページにも載っていません。12

受賞のニュースは「報告書業務の完全自動化を進める」と書いています。ただ、取組事例の数字は「90%もの時間短縮」です。数字のうえでは、報告書の手間が無くなったのではなく、時間が9割短くなったということです。13

90%は取組事例の数字で、測り方は書かれていない

何件をどの期間で比べたかは分からない

90%という数字は、J-Net21が会社の取り組みとして紹介したものです。何件の報告書を、どの期間で比べたかは載っていません。1

従業員の数は、北九州市のお知らせでは28名、J-Net21では30人(パートを含む)です。数えた時点が違います。12

厚生労働白書の病院と介護の事業所の数字と並べる

令和8年版の厚生労働白書にも、記録の時間が減った例が載っています。6

事例使ったもの何の時間前後
私立大学病院(950床規模)音声入力や生成AI等業務時間外の記録時間(日勤1回あたり)平均92.2分59.2分(約36%削減)
介護の事業所(国の効果測定の事業)介護記録ソフト・スマートフォンやタブレットでの入力・音声入力等記録・文書作成・連絡調整(職員1名・1勤務あたり)49.1分43.2分(約6分削減)

白書の2つの例は、病院と介護の事業所で記録の時間を測ったもので、訪問看護の報告書の時間とは違います。白書の数字は、同じ仕事の比べではなく、ほかの職場で記録の時間がどれくらい減ったかの目安です。6

介護記録の別の例は、CUCがGeminiのケア記録アシストを試した記事で取り上げました。

訪問看護の事業所で試すなら、報告書1件の時間から

先に確かめておくこと

報告書づくりの時間をAIで短くできるかは、次の4つが分かっていると見当をつけやすくなります。

確かめること理由
1か月に書く報告書の数と、1件にかかる時間プーラビダの「1人あたり1時間以上」と比べられる
報告書の元になる訪問の記録が、どこに・どの形であるか記録がばらばらだと、AIに渡す前の手間が残る
主治医に出す前に、誰が読んで直しているか基準では管理者が報告書の作成を指導・管理する
利用者の情報をAIのサービスに入れてよいか事業所の個人情報の決まりと、使うサービスの扱いを先に確かめる

利用者の情報を扱う前に確かめること

Google Workspaceの生成AIに入れたデータは、契約した組織が許可または指示しない限り、AIのモデルを鍛える学習には使われません。Geminiとのやり取りが、組織の外に開示されることもありません。7

この説明は、仕事向けのGoogle Workspaceに当てはまります。個人のGoogleアカウントで試すなら、データの扱いが同じかどうかを改めて確かめてください。

自分で入れるか、頼むか

記録システムをすでに使っている事業所は、そのシステムに報告書を作る機能があるかを先に確かめてください。訪問看護の記録システムの選び方は、記録システムを選ぶ記事にまとめました。

Google Workspaceを使っているなら、契約しているプランでGeminiが使えるかを確かめたうえで、プーラビダのように報告書で試せます。社内に任せられる人がいなければ、仕組みづくりを外部に頼むこともできます。

当サイトのAI秘書でも、日報・作業記録の清書を引き受けています。範囲はAI秘書の社内・総務に載せています。

公的な事例集に載った別の例は、別府市の生成AI活用事例の記事にあります。

報告書づくりをAIに任せられるか、無料AI業務診断で確かめる

月末の報告書のどこまでをAIに任せられるかは、事業所ごとに、無料AI業務診断(30分のオンラインの面談)で確かめられます。申し込みは相談のページからどうぞ。

出典

  1. J-Net21(中小企業基盤整備機構)「離職率83.3%のどん底から『人が輝くDX』で成果」(2026年9月18日)(参照 2026-11-05)
  2. 北九州市「経済産業省『DXセレクション2026』グランプリを受賞しました!」(2026年6月3日)(参照 2026-11-05)
  3. J-Net21(中小企業基盤整備機構)「DXセレクション2026 グランプリにプーラビダ株式会社を選定」(2026年5月21日)(参照 2026-11-05)
  4. 情報処理推進機構(IPA)「DXセレクション」(参照 2026-11-05)
  5. e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)(参照 2026-11-05)
  6. 厚生労働省「令和8年版 厚生労働白書」第1部第2章(参照 2026-11-05)
  7. Google Workspace 管理者ヘルプ「Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ」(参照 2026-11-05)
  8. MONOist「グランプリ3社を含む『DX銘柄2026』30社を発表、プラチナ企業2社も選定」(2026年4月28日)(参照 2026-11-05)