「AI導入補助金」という名前なら、事例にもAIがずらっと並んでいるはず。そう思って公式の事例のページを開くと、ちょっと拍子抜けするんです。

この記事の目次(6節)
  1. 公式の事例34件のうち、AIのタグが付いたのは2件
  2. AIのタグが付いた2件の数字は、どの仕事のものか
  3. AIのタグが無い5件は、手作業をソフトに置き換えていた
  4. 事例の数字を読むときに気をつけること
  5. 申し込む前に、自社でやっておく3つのこと
  6. どの仕事から任せるか、無料AI業務診断で確かめる

事務局の「ITツール活用事例」は34件あり、AIのタグが付いているのは建設業の2件だけでした。1

その2社が減らしたのは、給与計算の人員と作業時間、見積書を作る期間です。ただ、どちらもAIを含むソフト全体を入れた後の数字で、AIの機能だけで減った分は分かりません。34

この記事で取り上げたほかの5件の数字は、手書きやExcelでの管理、打刻のための移動をソフトに置き換えた仕事で出ています。69

公式の事例34件のうち、AIのタグが付いたのは2件

デジタル化・AI導入補助金は、IT導入補助金から名前が変わった補助金です。事務局のサイトには、補助金でITツールを入れた会社の事例が載っていて、業種ごとに絞り込めます。12

事例のPDFの見出しには、補助金を使った年度が書かれています(下の表)。

事例は過去の年度のものなので、そのとき使えたツールが、いまの補助金でも対象になるとは限りません。事例のページは、申請を考えているなら交付規程・公募要領などを必ず確かめるよう求めています。1

見るところ公式の事例ページの中身
件数34件(建設業5件・卸売業と小売業5件・医療と福祉5件など)
AIのタグが付いた事例2件(株式会社ニッセイ・有限会社田中住建)
多いツールクラウド会計・販売管理・勤怠管理・業種ごとの管理ソフト
事例の年度PDFで確かめた分は、どれも名前が変わる前のIT導入補助金2020・2021・2024

いや、AIの事例は2件だけなんかい、と思っちゃいますよね。ただ、これは「AIが役に立たない」という話ではありません。小さな会社の困りごとの多くは、AIを使うより手前の段階にあるんだと思います。

AIのタグが付いた2件の数字は、どの仕事のものか

AIのタグが付いた2件は、どちらも建設業の会社です。表の右端の列に、導入前後の数字がどの仕事のものかを並べました。

会社(業種・従業員)入れたツールAIの使い方前後の数字数字が指す仕事
ニッセイ(建設・25人)マネーフォワードクラウド ビジネスAIが勘定科目を提案し、自動で仕訳する人員は最大3名から1名、作業時間は5日から1日給与計算
田中住建(建設・3人)ALTA RevolutionAIで図面を3D・VRにする約1.5か月から最短5日見積書の作成

ニッセイの数字は、給与計算の人員と作業時間

ニッセイは、クラウド会計ソフトを入れました。AIがビッグデータをもとに勘定科目(交通費・消耗品費のような、取引を分ける項目の名前)を提案し、自動で仕訳します。この自動仕訳で、経理処理の「大幅な効率化」を実現したとしています。3

このソフトは、AIの仕訳のほかに、勤怠・給与計算・振込を一続きで処理できます。ニッセイの導入前後の数字は、AIの仕訳ではなく、この給与計算の人員と作業時間です。3

PDFには、AIの仕訳で減った時間の数字がありません。

田中住建は、AIを図面の3D・VR化に使った

田中住建は、住宅営業支援システムを入れました。プランの作成から積算・見積もり、設計までを1つのシステムで行えます。成果の欄には、見積書を作る期間が短くなったと書かれています。4

図面はAIで3D・VRにしています。完成イメージが分かりやすくなり、お客様の満足度も上がりました。4

AIのタグが無い5件は、手作業をソフトに置き換えていた

AIのタグが無い事例にも、導入前後の数字が並んでいます。下の表の5件は、どれも手書きの帳簿・別々のExcel・打刻のための移動・歩いての調査といった手作業を、ソフトに置き換えています。56789

会社(業種・従業員)入れたツール前の困りごと前後の数字
天女山(林業・13名)3D GISツール歩いて木を1本ずつ調べ、Excelに入力調査の人員が1haあたり約10名から2名
小幡建設工業(建設・39名)就業管理ソフト打刻のためだけに本社へ出社・帰社残業時間が3分の1に、勤怠管理の時間が2日から1日に
エヴァーズ(貸衣装・45名)貸衣装管理ツール付属品をExcelなどで別に管理残業時間が約10分の1に
ケーズメタル(製造・33名)クラウド会計会計事務所とのやりとりが紙試算表の作成が2か月から1か月
山藤運輸(運輸・43名)販売管理システム売上・入金・請求をExcelと手書き伝票で管理売上集計の処理時間が30%以上短縮

表の数字には、ソフトのほかの取り組みも入っています。天女山はドローンを別の補助金で入れ、小幡建設工業は就業規則も改めました。56

事例の数字を読むときに気をつけること

事例は、事務局のサイトが紹介している会社の取り組みです。前後の数字をどう測ったかは、この記事で取り上げたPDFのどれにも書いてありません。

「最短」「最大」が付いた数字は、いつも同じ結果になるとは限りません。田中住建が見積書を作る期間は「最短5日」です。ニッセイの人員は「最大3名から1名」です。34

表に入れていない事例では、かがし屋(小売)の棚卸時間が「50%削減見込み」です。削減した結果ではなく、見込みの数字です。10

どれも1社ずつの結果なので、自社で同じ数字になるとは言えません。それでも、どの仕事から手を付けたかは、そのまま参考になります。

申し込む前に、自社でやっておく3つのこと

事例を読んだら、次の3つを済ませておくと、IT導入支援事業者との話が早く進みます。IT導入支援事業者は、ツールの導入と申請を一緒に進める事業者です。

  1. 手書き・Excel・別のソフトに、同じことを2回書いている仕事を1つ選ぶ
  2. その仕事に、毎月だれが何時間かけているかを書き出す
  3. 使いたいツールが補助の対象になるかを、事務局のサイトの「ITツール検索」で調べ、IT導入支援事業者にも確かめる

通常枠で申請できるのは、会計・販売・給与のように、決まった仕事の流れ(業務プロセス)を受け持つソフトです。何にでも使える汎用のツールだけでは申請できないので、3つ目は飛ばさずに確かめてください。11

補助の対象は、ソフトウェア購入費やクラウド利用料(最大2年分)などです。11

ChatGPTを自分で契約した分の扱いは、ChatGPTの月額が補助の対象になるかの記事に書いたとおりです。

ニッセイの事例のように、経理の入力にAIを使いたい会社もあると思います。当サイトのAI秘書でも、受け取った請求書や領収書の読み取りから会計ソフトへの取り込みまでを引き受けています(AI秘書の請求・経理)。

会計ソフトのAI仕訳で、どの書類から仕訳を作れるかは、ジョブカン会計のAI仕訳の使い分けにまとめています。経費の申請をAIでチェックする場所は、経費精算のAIチェックの組み込み方で比べています。

どの仕事から任せるか、無料AI業務診断で確かめる

二度手間になっている仕事が見つかっても、ツールを入れるか、AIに任せるかで迷うことがあります。

無料AI業務診断(オンラインで30分の相談)では、その仕事をAIに任せられるかを一緒に確かめられます。相談のページから申し込めます。

補助金の前に、まず時間を数える。事例の34件が教えてくれるのは、そこなんです。

出典

  1. デジタル化・AI導入補助金2026「ITツール活用事例」(参照 2026-11-06)
  2. デジタル化・AI導入補助金2026 トップページ(参照 2026-11-06)
  3. 株式会社ニッセイ「IT導入補助金2024 活用事例」(PDF)(参照 2026-11-06)
  4. 有限会社田中住建「IT導入補助金2024 活用事例」(PDF)(参照 2026-11-06)
  5. 有限会社天女山「IT導入補助金2020 活用事例」(PDF)(参照 2026-11-06)
  6. 小幡建設工業株式会社「IT導入補助金2020 活用事例」(PDF)(参照 2026-11-06)
  7. 株式会社エヴァーズ「IT導入補助金2021 活用事例」(PDF)(参照 2026-11-06)
  8. ケーズメタル株式会社「IT導入補助金2021 活用事例」(PDF)(参照 2026-11-06)
  9. 有限会社山藤運輸「IT導入補助金2020 活用事例」(PDF)(参照 2026-11-06)
  10. 株式会社かがし屋「IT導入補助金2020 活用事例」(PDF)(参照 2026-11-06)
  11. デジタル化・AI導入補助金2026「通常枠」(参照 2026-11-06)