要点

対象:AgentCoreの使われ方を知りたい人

  1. AIが調べ、設定を変える前に人が承認
  2. 質問の7割はAIモデルを呼ばずに振り分け
  3. チケットの数字はU Mobile自身の集計

マレーシアの携帯電話会社U Mobileは、契約者の不具合の原因調査を、AIエージェント(頼まれた作業を自分で進めるAI)に任せています。

この記事の目次(7節)
  1. AgentCoreとは
  2. 1件の不具合で、担当者が複数のシステムを行き来していた
  3. 「海外でデータ通信ができない」という問い合わせでは
  4. 質問の7割は、AIモデルを呼ばずに振り分ける
  5. 試作から1年足らずで、150を超える対応の場面に
  6. チケットの減り方
  7. 同じ形を社内のヘルプデスクに当てはめるなら

AIエージェントが複数のシステムを調べ、対処の手順案まで示します。担当者は、契約者の設定を変える前に確かめて承認します。1

現場の担当者が使い始めたのは、今年の7〜9月です。開通とネットワークのチケットは、月ごとの件数が今年9月までに84.5%減りました。比べる起点は1月なので、現場で使い始める前の減り方も含んでいます。1

AgentCoreとは

AgentCore(Amazon Bedrock AgentCore)は、AIエージェントを作って動かし、監視するためのAWSのサービスです。2

既存のシステムをAIエージェントが呼べるツールに変える機能(Gateway)や、会話を覚えておく機能(Memory)があります。2

U Mobileの情報システム部門は、AWSと、AWSのパートナー会社Axrailと組んで、この上に社内向けのヘルプデスク「AiDaH」を作りました。社員は、ふだん使うMicrosoft Teamsから質問できます。ウェブの画面もあります。1

1件の不具合で、担当者が複数のシステムを行き来していた

契約者から「データ容量を追加で買えない」と問い合わせがあると、担当者はまずエラーログを探します。次に、購入できる契約かを別のシステムで確かめ、社内のナレッジベースで適用ルールを調べます。1

それでも分からなければ、裏側のシステムを受け持つIT担当にエスカレーションします。そのぶん、契約者の待ち時間が延びます。1

「海外でデータ通信ができない」という問い合わせでは

AiDaHは、次の順に動きます。1

  1. 契約者の海外ローミング(海外で使うための設定)を確かめる
  2. 海外でデータ通信ができる契約かを確かめる
  3. どこで止まっているかを特定する
  4. 対処の手順案を作る。どのサービスをリセットし、どの設定を送り直すか、ネットワークの担当にチケットを出すべきかも含める
  5. 担当者が確かめて承認すると、AiDaHが実行する

別の問い合わせでは、追加のデータ容量を買えない原因が、処理待ちのまま残った注文だと突き止めました。1

この件では、契約者が3日のあいだに、複数の経路から同じ購入を30回以上試していたことも、AiDaHが見つけました。AiDaHは、原因と対処の手順案を1回の返事で示しました。1

U Mobileの社内ヘルプデスクAiDaHの流れ 担当者が Teamsで質問 約70%:キーワードとの照合 20%:軽いAIモデル 10%:取りまとめ役のAI 専門のAIエージェントが 社内のシステムを調べる 原因と対処の手順案を示す 担当者が承認すると実行 契約者の設定を変える前に、担当者が確かめる 出典:AWS Machine Learning Blog(2026年11月4日)
U Mobileの社内ヘルプデスクAiDaHで、担当者の質問が専門のAIエージェントに届き、原因と対処の手順案が示され、手順案を担当者が承認するまでの流れ。約7割はキーワードとの照合で振り分け、AIモデルを呼ばない。

質問の7割は、AIモデルを呼ばずに振り分ける

AiDaHは、質問を3段階で振り分けます。確実に扱える方法のうち、費用のいちばん安いものを使います。1

段階割合振り分け方
1約70%キーワードとの照合。AIモデルを呼ばない
220%軽いAIモデルで種類を分ける
310%取りまとめ役のAI(オーケストレーター)が判断する

振り分けた先には専門のAIエージェントが8つあり、顧客の管理、番号ポータビリティ(MNP)、注文とSIMの手続き、経理の業務などを受け持ちます。1

よくある質問については、聞き方のひな形を配りました。「何でも聞いて」ではなく「請求の確認はこう聞く」と決めると、使い始めのためらいが減ったそうです。社内の調査では、使いやすさが5点中4.6点でした。1

試作から1年足らずで、150を超える対応の場面に

時期規模
2025年の終わり2つのAIエージェントで構想を始める
2026年1〜3月社内のIT問い合わせ窓口で試行。4つのAIエージェントと20の対応の場面
2026年の半ば6つのAIエージェント
2026年7〜9月コールセンターと支店で二次対応をする50人が使い始める。8つのAIエージェント

いまは6部門・150を超える対応の場面を扱っています。二次対応の標準作業手順書にも組み込まれました。1

チケットの減り方

U Mobileの集計では、チケットの月の件数は、2026年1月と比べて9月に次のように減りました。1

チケットの種類減った割合
開通とネットワーク84.5%
一般の問い合わせ81.6%
請求と課金48.7%

AiDaH以外の理由で減った分を除いた数字かどうかは、AWSのブログには書かれていません。

AWSのブログを書いたのは、U Mobileの技術部門の責任者、AWSの技術者、Axrailの技術者の3人です。AWSはAgentCoreを売る会社、Axrailはその導入を請け負う会社です。1

U Mobileは、対応できる分野を増やす計画です。人が関わらずに問題を見つけて直す段階は、その先の長い目標としています。1

同じ形を社内のヘルプデスクに当てはめるなら

AIが自分で決めるのを「調べて手順案を出すまで」に区切り、実行は人の承認の後にした点は、ほかの会社でもまねしやすいと見ています。

  • 調べる作業は、どのシステムの何を見るかを業務ごとに書き出してから任せます
  • 契約者の設定を変える操作は、担当者の承認を通します
  • 決まった言い回しの質問は、AIモデルを呼ばずに振り分けます

先月の問い合わせのうち、1件で2つ以上の画面を行き来した件数を数えてみてください。AIに調べさせる業務を選ぶ目安になります。

出典

  1. AWS Machine Learning Blog「How U Mobile built agentic telco operations with Amazon Bedrock AgentCore」(2026年11月4日)(参照 2026-11-05)
  2. What is Amazon Bedrock AgentCore?(Amazon Bedrock AgentCore 開発者ガイド)(参照 2026-11-05)