要点

対象:AIに仕事を任せ始めた会社の経営者

  1. AIなしの技能評価は予測の段階
  2. 補助金の加点に相談の利用が8月までに加わった
  3. 小規模企業の調査結果は3月に出ていた

未来予想の記事では、その未来が近づくときに先に起きそうなことを、最後に「兆し」として挙げています。

この記事の目次(10節)
  1. 確かめ方
  2. AIを使わずに仕事ができる人を求める求人は、日本語の求人では見つけられなかった
  3. AIを使わない日や訓練を公表した会社は、確認できなかった
  4. 補助金の加点に、相談の利用が8月までに加わっている
  5. 小規模企業の調査結果は、3月に出ていた
  6. 4つの兆しのいま
  7. 兆しと逆向きに見える例が1件ありました
  8. ここから先は想像です
  9. この流れが強まるなら、現れそうな兆し
  10. 自分で試せること

今回は、2026年9月27日に出した2本の記事から、兆しを4つ選びました。

仕事をAIに任せると、難しい技能から先に失われていくかもしれないの兆し

  • 「AIなしでも仕事を回せる人」を条件にした求人が出てくる
  • AIを使わない日を設けたり、AIなしの訓練を取り入れたりする会社が出てくる

生成AIの効果は、なぜ業績に表れないのかの兆し

  • 補助金の審査や白書の調査に、ITツールの導入だけでなく、業務の見直しも問う項目が加わる
  • 小規模企業ほど効果を感じている、という調査結果が相次ぐ

確かめ方

1週間前(10月25日)の兆しの点検と同じく、兆しを挙げた9月27日より後に起きたことだけを「現れた」と数えます。

結果は、4つとも「見つからず」でした。ただ、どの兆しにも似た動きはあります。兆しごとに、似た動きがどこまで兆しに近いかを見ていきます。

AIを使わずに仕事ができる人を求める求人は、日本語の求人では見つけられなかった

日本語の求人や募集要項で、AIを使わずに仕事ができることを条件にした例は、探した範囲にありませんでした。

近い内容の予測はあります。ガートナーが2025年10月に、2026年までに世界の組織の50%が、AIを使わない技能評価を求めるようになると予測しました。1

この予測は、兆しを挙げた約11か月前のものです。実際に何割の組織が求めているかは分かりません。読めたのは、発表を紹介した記事だけで、ガートナーの発表そのものは開けませんでした。

AIを使わない日や訓練を公表した会社は、確認できなかった

AIを使わない日や、AIなしの訓練を取り入れた会社の公表も、確認できませんでした。

Aalto大学のページ(2025年9月29日)は、2023年の論文を紹介しています。会計事務所で、自動化のシステムを外したところ、従業員が中核の会計業務をこなせなくなっていた、という研究です。2

研究者は対策として、例えば、定期的なワークショップや、自動化なしで練習できる環境を挙げています。どちらも研究者の提案で、会社が実際に取り入れた例は載っていません。2

補助金の加点に、相談の利用が8月までに加わっている

3つ目の兆しは、補助金の審査項目や白書の調査項目に、業務の見直しも問う項目が加わる、というものでした。補助金と白書に分けて見ます。

デジタル化・AI導入補助金

デジタル化・AI導入補助金(通常枠)の公募要領には、審査事項に次の2つがあります。3

  • 自社の状況や課題分析、将来計画に対して、改善すべきプロセスが、導入するITツールの機能で期待される効果と合っているか
  • 内部プロセスの高度化、効率化と、データ連携による社内横断的なデータ共有・分析などを取り入れ、継続的な生産性向上と事業の成長に取り組んでいるか

1つ目は改善すべき業務を、2つ目は業務の高度化への取り組みを問う項目です。いつからあるかは確認できていません。改訂履歴は2026年2月27日の新規作成から始まり、この2つが追加された記録は見当たりませんでした。3

2026年の改訂で、加点の対象が次のように変わっています。

  • 2026年5月15日の改訂で、「デジタル化セカンドオピニオン」の取り組み(確認者との面談)を交付申請までに済ませることが加わりました(第3回公募回から)
  • 2026年8月28日の改訂で、中小機構の「IT戦略ナビwith」のほかに、「IT経営サポートセンター」を使っても加点されるようになりました(第6回公募回から)

どちらも、交付申請の前に済ませておく取り組みです。セカンドオピニオンの中身は、別のマニュアルで公開される予定とされていて、公募要領からは分かりません。3 改訂はどちらも9月27日より前なので、現れたとは数えません。

中小企業白書

2026年版の白書は、日刊工業新聞の6月22日付の記事で読みました。白書の本文は開けていません。4

記事は、全社的な業務課題の洗い出しが不十分なまま導入しても、大きな効果は得にくいと伝えています。4 課題の洗い出しの必要性は書かれていますが、調査項目に何が加わったかは、記事から確かめられませんでした。

小規模企業の調査結果は、3月に出ていた

4つ目の兆しは、小規模企業ほど効果を感じている、という調査結果が相次ぐことでした。

帝国データバンクは2026年3月17日から31日に、全国2万3,349社を対象に調べ、1万312社が有効回答を寄せました。5

業務での生成AIの活用率は、大企業が46.5%、小規模企業が28.0%です。活用している企業の86.7%が、業務に効果があると答えました。5

AIsmileyの記事の規模別の数字では、小規模企業の29.7%が「大いに効果が出ている」と答え、大企業を上回っています。5 この割合が、何社のうちのものかは、記事から確かめられませんでした。帝国データバンクの発表そのものも、開いていません。

兆しは、調査結果が相次ぐことでした。見つかったのは3月の調査1つで、兆しを挙げる前に出ています。

4つの兆しのいま

4つの兆しのいま(11月1日。2026年9月27日の記事の兆し) AIを使わずに働ける人を求める求人(日本語) 似たもの: AIなしの技能評価を求める予測(2025年10月) 見つからず AIを使わない日・AIなしの訓練 似たもの: 研究者の提案(2025年9月) 見つからず 補助金や白書に業務の見直しを問う項目 似たもの: 相談の利用を加点する補助金(5月・8月) 見つからず 小規模企業ほど効果を感じている調査 似たもの: 帝国データバンクの調査1つ(3月) 見つからず
兆しごとに、11月1日の時点で現れたかどうかと、似たものを並べました。

兆しを挙げてから5週間です。短い期間なので、見つからなかっただけでは、兆しが外れたとは言えません。

兆しと逆向きに見える例が1件ありました

AIなしの評価とは逆向きに見える動きがありました。

HackerRankは2026年10月5日、AI面接官「Chakra」の一般提供を始めました。応募者は、AIの助手がついた画面で、実際のコードを使った課題に取り組みます。6

応募者はAIを使えます。不審な行動として検知された件数は、従来の試験より70〜80%少なかったそうです。同社の説明です。減り方は、地域や応募者の職位によって差があるといいます。6 記事はAIなしの評価には触れていません。

これは開発者向けの面接の話で、AIなしの評価が広がるかどうかは、この例からは分かりません。

ここから先は想像です

AIを使わずに仕事ができる人を求める動きは、AIを使うのが前提の仕事から出てくるかもしれません。

AIに任せた仕事は、人が手を動かす機会が減ります。そのままでは、人がAIなしでできるかどうかを、確かめる機会もなくなります。確かめるための仕組みを、わざわざ作る必要が出てきそうです。

補助金では、申請より前に相談すると加点になります。同じように、AIを入れた後の人の技能の確認が、加点や取引の条件になる日が来るかもしれません。そうなれば、AIなしでやる練習を重ねている会社は、取引先に「できます」と答えやすくなります。

この流れが強まるなら、現れそうな兆し

  • 日本の会社の募集要項に、AIを使わない業務の経験を求める、またはAIなしの試験を課すと書かれる
  • 会社が、AIを使わずに仕事をする訓練の日数や回数を、採用や研修のページで公表する
  • 補助金の審査項目や取引先の調査票に、AI導入後の人の技能の維持を尋ねる項目が加わる
  • 小規模企業と大企業の効果を比べた調査が、別の機関から相次いで出る

自分で試せること

AIに任せている仕事を1つ選び、AIを使わずに、人だけで1回やってみてください。

かかった時間と、つまずいたところをメモしてください。手間取った箇所が多ければ、手順を書き残してください。AIなしでも追える形にしておくためです。

出典

  1. IT Brief Australia「Gartner forecasts AI-driven changes in jobs, money & global rules」(2025年10月22日。ガートナーの発表を紹介)(参照 2026-11-01)
  2. Aalto大学「Researchers warn that skill erosion caused by AI could have a devastating and lasting impact」(2025年9月29日)(参照 2026-11-01)
  3. 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」(改訂履歴は2026年8月28日まで)(参照 2026-11-01)
  4. ニュースイッチ「2026年版中小企業白書、省力化投資・AI活用を後押し」(2026年6月25日。日刊工業新聞の6月22日付の記事)(参照 2026-11-01)
  5. AIsmiley「帝国データバンク『生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)』」(帝国データバンクの調査を紹介)(参照 2026-11-01)
  6. TechCrunch「HackerRank's AI interviewer offers a glimpse into what job interviews could become」(2026年10月5日)(参照 2026-11-01)