「このAIの費用、どのお客さんの仕事で使った分ですか?」
法律事務所や会計事務所、設計事務所では、かかった時間や費用を、お客さんや案件ごとに付けていきます。AIの利用料も、本当はそこに入れたい費用です。
でも、AIの請求書は月に1枚です。誰がどの案件で使ったかまでは、ふつう分かりません。
AnthropicはClaude Enterpriseに、この悩みに効く「プロジェクトタグ」をベータ版として追加しました。11月6日付のリリースノートに載っています。
プロジェクトに、社内ですでに使っている案件番号や費目コードを付けておけば、そのプロジェクトで使ったAIの費用を、コードごとに見られるんです。ただし、数えない費用もあります。
プロジェクトに案件番号を付けて費用を見る
Claudeの「プロジェクト」は、資料や指示をまとめておく作業部屋のような機能です。今回のタグは、その部屋に札を下げるようなものです。
札に書くのは2つです。1つはタグで、何で分けるかを表す名前です。例えば「client_matter」(案件番号)や「cost_code」(費目コード)です。名前は英小文字で付け、あとから変えられません。
もう1つは値で、「CC-1042」のような実際のコードです。
1つのプロジェクトに付けられるタグは16個まで。値は、1つのタグに1つだけです。細かい決まりはヘルプのページにまとまっています。
タグは、組織のオーナーが設定画面の「Project tags」で作ります。選べる値をあらかじめ決めておくこともでき、その一覧は1列のCSVファイルから取り込めます。
Webで新しく作るプロジェクトなら、タグの値を必須にする設定もあります。値は、そのプロジェクトを編集できる人なら誰でも入れられます。
費用は、設定画面の「Usage」→「Spend by project」で確かめます。「Group by」でタグを選ぶと、案件番号ごとの費用が並びます。CSVに書き出せるので、請求の集計表にそのまま持っていけそうです。
もっとも、画面に出るのは前日までの費用です。区切りは世界の標準の時刻(UTC)の0時で、日本時間なら朝9時に当たります。タグを付けてから反映されるまでにも、2時間ほどかかります。付ける前の費用は、さかのぼってタグには乗りません。
非公開のプロジェクトは、この画面とCSVでは名前が伏せられ、「Private project」と出ます。社内の会計システムに毎日流したいなら、APIでタグごとの費用を取り出すこともできます。こちらもベータ版です。
タグに乗らない使い方のほうが多いかも
この機能、プロジェクトの中の費用しか数えないんです。
プロジェクトの外でのチャットは、「Not in a project」という別の行に入ります。
Office向けのClaude(Claude for Office)や、Chrome・Slack・Teamsの中で使うClaude、Claude Designも対象外です。アーティファクトや音声モードも入りません。
APIの利用も入りません。Web版のClaude Codeや、BedrockやVertex AI経由のClaude Codeも同じです。
いまのEnterpriseの料金は、シート料金に、APIと同じ単価で計算する利用料を足す形です。シート料金は年払いで、1人あたり月20ドル。契約は最低20シートからです。
シート料金の中でまかなわれる利用があれば、その分はタグでは数えません。そうした利用が多いプロジェクトだと、費用がほとんど出ないこともあるそうです。
ターミナルやデスクトップのClaude Codeは、タグに乗せられます。ただし、プロジェクトを選ぶ画面がありません。
代わりに、使う人が設定ファイル .claude/settings.json の attributionProject に、プロジェクトのIDを書きます。
カンマを1つ余計に打つだけで、Claude Codeが動かなくなることもあるとのこと。
書き忘れた分は、タグの無い費用になります。しかも警告は出ません。
このサイトでも、記事を書くAIにClaude Codeを使っています。ブラウザから登録して、クラウドで毎日8回動かしています。その環境のClaude Codeのバージョンは2.1.319で、ヘルプが求める2.1.305以上は満たしています。
ただ、リポジトリの設定ファイルに attributionProject の項目はありません。
このサイトのAIは、ブラウザのclaude.aiから登録して、Anthropicのクラウドで動かしています。ヘルプが対象外に挙げる「Web版のClaude Code」は、こうしてクラウドで動かすClaude Codeのことだと見ています。
このサイトの動かし方のままだと、仮にEnterpriseでタグを使っても、記事づくりの費用はタグに乗らない側に入りそうです。
使えない組織もあります。米国の医療の情報の法律(HIPAA)に対応した構成の組織や、会話のデータを残さない設定(ZDR)の組織です。データを米国の外に置く組織や、暗号化の鍵を自社で管理する組織(CMEK)なども対象外です。
請求に使う前に決めておくこと
お客さんごとの請求に使うなら、まず「1案件に1プロジェクト」と決めておくのがよさそうです。
今回のベータ版では、1つのチャットだけにタグを付けることも、費用を2つの案件に分けることもできません。複数の案件の話を同じプロジェクトでしてしまうと、あとから分けられないわけです。
値の中身にも気をつけましょう。タグの名前と値は、組織の全員に見えます。お客さんの名前ではなく、案件番号のようなコードにしておくほうが安心です。
それに、値を必須にしていないタグは、プロジェクトを編集できる人なら変えたり消したりできます。タグをロックする方法はありません。
Webで新しく作るプロジェクトなら、値を必須にしておくと消されることは防げます。ただ、値を別のものに変えることはできてしまいます。
画面の金額は、割引を反映した額です。クレジット(支払いに充てる残高)は、まだ引かれていません。請求書と合わないことがあり、月末から1週間ほどは数字が動くこともあるそうです。お客さんへの請求には、数字が固まるのを待ってから使うのが無難です。
10月28日には、同じEnterpriseで費用の使い道を見るSmart reportsと、グループ予算の機能の一般提供も始まっていました。今回のタグは、その費用の見え方を案件の単位まで細かくするもの、と読めます。
AWSのBedrockでAIを使っているなら、Bedrockでタグを付けて部署ごとの費用を追う方法もあります。税理士事務所でのClaudeの使いどころは、Claude Coworkの記事にまとめています。
AIの費用を案件に付けられる時代になっても、札を下げ忘れた部屋の分は、誰の仕事か分からないまま月末にやってきます。
Source:
- Release notes(Claude のヘルプセンター・2026年11月6日の項)(参照 2026-11-08)
- Track spend by project with tags(Claude のヘルプセンター)(参照 2026-11-08)
- Plans & Pricing(Claude の料金のページ)(参照 2026-11-08)
