Claude Codeに仕事を任せると、コマンドを実行してよいかを何度も聞かれます。同じ確認が何度も続くと、1回ずつ中身を読むのは難しくなります。この状態を、Claude Codeを作るAnthropicは「承認疲れ」と呼んでいます。

この記事の目次(6節)
  1. Claude Codeの承認疲れと、承認を減らす仕組み
  2. Amazon Quickは、人に確かめる操作をAIが選ぶ
  3. 同じ警告を何度も見ると、人は目を向けなくなる
  4. ここから先は想像です
  5. この未来が近づくなら、先に現れる兆し
  6. 自社で試せること

Claude Codeでは、/sandbox と打ってAIが動ける範囲を先に区切ると、その範囲の中のコマンドは承認なしで動きます。ただ、承認を減らすなら、AIが聞かずに済ませた操作を、人があとで見直す時間も作っておきましょう。

Claude Codeの承認疲れと、承認を減らす仕組み

押し続けると、何を承認しているかを見なくなる

開発のツール「Claude Code」を作るAnthropicによると、「承認」を押し続けると「承認疲れ」が起き、何を承認しているかをよく見なくなるおそれがあります。2025年10月の記事です。2

心理学では、同じ刺激をくり返し受けると反応が弱まることを「慣れ」と呼びます。承認疲れも、この慣れの一つだと考えると分かりやすくなります。

/sandbox で範囲を区切ると、承認を求める回数が84%減った

Anthropicは、AIが動ける範囲を先に区切る仕組み(サンドボックス)を、試験版として用意しました。始めるには、Claude Codeで /sandbox と打ちます。範囲の外に出ようとしたときだけ、知らせが出ます。2

Anthropicが社内で使ったところ、この仕組みで承認を求める回数は84%減りました。2

Amazon Quickは、人に確かめる操作をAIが選ぶ

依頼の中身と照らし合わせて決める

Amazon Quickの「Smart Approvals」は、AIエージェントがしようとする操作を利用者の依頼と照らし合わせ、自動で承認するか、利用者に確かめるかを決めます。AWSが2026年11月4日に紹介しました。1

AIが自動で承認しても、効くのはその1回の操作だけです。AIができることが増えるわけではなく、コネクタの設定で「人の承認が要る」とした操作は、これまでどおり人が承認します。利用者は、この機能を自分でオフにできます。1

人が見るべき操作の例として、AWSは社外への送信・アクセス権の変更・記録の削除・支払いの開始を挙げています。機能の詳しい設定は、Amazon Quickの承認の記事にまとめました。

承認が多すぎると、注意が薄れる

警告をくり返し見せると、注意も、警告に従う割合も下がることがあります。AWSは、その根拠に2018年の論文を引いています。1

AIを信じすぎるか、疑いすぎるかの話は、AIへの過信と不信を扱った記事で書きました。

同じ警告を何度も見ると、人は目を向けなくなる

警告への注意は5日のうちに弱まり、一晩あくと一部は戻った

AWSが引いた論文は、米国のブリガム・ヤング大学(BYU)の研究者5人が書き、2018年に経営情報学の学術誌に載りました。3

研究者は、参加者にセキュリティの警告を5日間見せました。脳の働きを映す装置(fMRI)と目の動きを追う装置で、警告への注意を測りました。3

注意は日を追って弱まりました。ただ、警告を見ない夜のあいだに、少なくとも一部は戻りました。3

警告の見た目を毎回変えると、注意の弱まり方はかなり緩やかになりました。3

実験の終わりに、警告に従った割合は55%と76%に分かれた

同じ研究者たちは、スマートフォンのアプリが権限の許可を求める警告でも調べました。参加者は15日間、毎日3つずつアプリを入れて評価しました。4

警告の出し方実験の終わりに警告に従った割合
毎回同じ見た目55%
見た目を変える76%

見た目を変えた警告でも従う割合は下がりましたが、下がり方はずっと小さくなりました。3

同じ警告をくり返すと、従う割合が下がる アプリの許可の警告・実験の終わりに従った割合(BYU、2018年) 毎回同じ見た目 見た目を変える 55% 76% 棒の長さは割合を表す AIエージェントの承認を減らす2つのやり方 Amazon Quick(2026年11月) Claude Code(2025年10月) 依頼と照らして、自動で承認するか 人に確かめるかをAIが決める 人の承認が要る設定は残る AIが動ける範囲を先に区切る 社内の利用で、承認を求める 回数が84%減った
同じ警告を何度も見せたときと、見た目を変えたときの違い。BYUの研究者が15日間、アプリが権限の許可を求める警告で比べた結果と、AIエージェントの承認の減らし方。

実際の利用の記録でも、警告の種類で先へ進む割合が違った

2013年には、カリフォルニア大学バークレー校とGoogleの研究者が、ブラウザの警告を見た利用者がどう動いたかを、大規模に調べました。5

Chromeで、Webサイトの証明書に問題があると知らせる警告では、利用者は、警告が出た回の70.2%で、そのまま先へ進みました。Firefoxで不正なサイトだと知らせる警告では、先へ進んだのは約1割でした。5

警告を無視するのは怠けではない、という見方もある

利用者がセキュリティの助言に従わないのは、損得で考えれば理にかなっている、という論文があります。Microsoft Researchのコーマック・ハーリーが2009年に書きました。6

ハーリーは、証明書の警告はどれも、危なくないのに出た誤報に見えると書いています。6 守っても得がほとんど無い警告なら、人が先へ進んでしまう理由は、慣れだけではなさそうです。

確かめる場面を選ぶと、作業が速くなった

AIに作業を任せたとき、どこで人が確かめるとよいかを決める研究があります。人とコンピューターの関わりを扱う学会CHIの2026年の大会に採録されました。研究者は、作業全体の時間がいちばん短くなるように、確かめる場所を決める方法を作りました。7

大学の関係者48人が、買い物かごに品物を入れる作業や画像の編集をAIに任せました。7

比べたのは、最後に1回だけ確かめるやり方と、この方法で途中に確かめる場所を置くやり方です。39人(81%)が、途中で確かめるほうがよいと答えました。作業にかかる時間も13.54%短くなりました。7

ただし、この研究は、操作のたびに確かめるやり方とは比べていません。7

ここから先は想像です

承認の回数が減れば、1回ずつの承認を読む余裕は戻りそうです。BYUの研究でも、警告を見ない時間をはさむと、注意が一部戻りました。

その代わり、何を人に聞くかを、AIが決めるようになるかもしれません。人は、AIが「聞くべき」と選んだ操作だけを見ることになります。

どこまで確かめれば足りるのか、という問いも残ります。人の確認の量を検査の歴史から考えた記事で扱ったのと同じ問いです。

AIが聞かずに済ませた操作は、誰の目にも触れないまま積み重なるかもしれません。聞かれなかった操作の記録を週に1回読む係を置く会社も、出てきそうです。

承認の画面も変わりそうです。見た目を変えた警告のように、操作の重大さに合わせて画面の形を変えれば、慣れを遅らせられるかもしれません。たとえば、支払いなら金額を自分で打ち直す、社外への送信なら宛先を一つずつ選び直す、といった形です。

さらに先では、人が確かめる力が落ちるかもしれません。聞かれる機会が減ると、いざ聞かれたときに、どこを見ればよいか分からなくなるおそれがあります。

この未来が近づくなら、先に現れる兆し

  • AIエージェントの製品の発表に、承認を求める回数を何%減らしたかが載るようになる
  • 自動で承認された操作の一覧を、管理者が画面で読めるようにする製品が増える
  • 支払いや削除など、操作の重大さに合わせて承認の画面の形を変える製品が出てくる
  • 社内の規程に、AIが必ず人に確かめる操作の一覧が書かれるようになる

自社で試せること

Claude CodeなどのAIのツールを使っているなら、1週間だけ、承認や「許可」を求められた回数を数えてみてください。そのうち中身を読まずに押した回数も、正直にメモしておきます。

読まずに押した回数が多ければ、自分が必ず見る操作を3つに絞って書き出します。社外へ送る・記録を消す・お金を動かす、のように取り消しにくい操作から選ぶと決めやすくなります。

残りの操作をAIに任せるなら、その操作の記録が残るツールを選び、記録を週に1回見返す時間を予定に入れておきましょう。

出典

  1. AWS Machine Learning Blog「Smart Approvals in Amazon Quick: Human oversight where it matters」(Steve Vinsik、2026年11月4日)(参照 2026-11-05)
  2. Anthropic「Making Claude Code more secure and autonomous with sandboxing」(2025年10月20日)(参照 2026-11-05)
  3. Anthony Vance・Jeffrey L. Jenkins・Bonnie Brinton Anderson・Daniel K. Bjornn・C. Brock Kirwan「Tuning Out Security Warnings: A Longitudinal Examination of Habituation Through fMRI, Eye Tracking, and Field Experiments」(MIS Quarterly、2018年6月)(参照 2026-11-05)
  4. ブリガム・ヤング大学 マリオット・スクール「Paying Attention to Notifications」(2018年)(参照 2026-11-05)
  5. Devdatta Akhawe・Adrienne Porter Felt「Alice in Warningland: A Large-Scale Field Study of Browser Security Warning Effectiveness」(USENIX Security '13、2013年8月)(参照 2026-11-05)
  6. Cormac Herley「So Long, And No Thanks for the Externalities: The Rational Rejection of Security Advice by Users」(NSPW '09、2009年)(参照 2026-11-05)
  7. Jieyu Zhou ほか「When Should Users Check? Modeling Confirmation Frequency in Multi-Step Agentic AI Tasks」(CHI '26 に採録、arXiv 2510.05307 v4、2026年9月15日)(参照 2026-11-05)