生成AIに任せられるのは、物件資料を読みやすい紹介文にまとめる工程です。特定用語を使ってよいか、成約済み物件を掲載していないか、二重価格表示の要件を満たすかどうかは、文章の外にある事実で決まります。そのため、掲載前に人が確認します。

この記事でわかること

  • 宅建業法32条は、誇大広告にあたる2種類の表示を禁じています
  • 特定用語は一覧との照合と人の目で確かめ、おとり広告は掲載物件の管理で防ぎます
  • 特定用語と二重価格表示のルールは、業界の自主規制である「不動産の表示に関する公正競争規約」(表示規約)の定めで、守らなければ規約違反になります
この記事の目次(5節)
  1. 宅建業法32条が禁じる広告
  2. 物件紹介文を作る4つの工程
  3. 広告審査で見る3つのルール
  4. AIに任せる工程と、人が担う工程
  5. よくある質問

宅建業法32条が禁じる広告

宅地建物取引業法(宅建業法)32条は、宅建業者の広告で2つの表示を禁じています(誇大広告等の禁止)。 1つは、所在地・規模・形質・利用制限・環境・交通などについて、事実と著しく異なる表示です。もう1つは、実際より著しく優良・有利だと人を誤認させる表示です。1

違反すると、指示処分や業務停止処分の対象になります。3 情状が特に重い場合や、業務停止処分に違反した場合は、免許が取り消されます。罰則は6か月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金で、両方が科されることもあります。4

医療広告の規制も、治療の内容や効果についての患者の体験談を広告に使うことを禁じています。6 業界は違っても、実際より良く見せる表現を規制するという考え方は共通しています。医療広告の規制は、クリニックの口コミ管理と医療広告ガイドラインで扱っています。

物件紹介文を作る4つの工程

物件紹介文の作成を工程に分けると、次の4つになります。

  1. 物件調査 — 販売図面・写真・登記情報・現地調査の結果をそろえる
  2. 文章化 — 物件資料を、読み手に伝わる紹介文にまとめる
  3. 広告審査 — 誇大広告・おとり広告・二重価格表示などに当たらないかを確認する
  4. 掲載 — ポータルサイトや自社サイトに掲載する

生成AIが得意なのは、図面や写真の特徴を言葉にして読みやすく整える、文章化の工程です。 一方、物件資料の正確さと広告審査は、AIに任せてよい工程ではありません。

例えば、毎日10件の新着物件を掲載する不動産会社なら、担当者が図面と現地調査のメモをそろえ、AIが紹介文の下書きを作ります。担当者は下書きを読み、特定用語と価格の書き方を確認してから掲載します。紹介文を書く時間は減っても、確認の時間まではなくならないでしょう。

広告審査で見る3つのルール

特定用語(表示規約)

表示規約は、不動産業界が自主的に定めたルールです。2 表示規約では、「完全」「完ぺき」「絶対」「日本一」「抜群」「当社だけ」「最高」「最高級」といった特定用語は、原則として使えません。1 「最高」「最高級」などは、根拠となる事実を併せて表示する必要もあります。5

生成AIは魅力的に書こうとして、根拠のない特定用語を混ぜがちです。プロンプトで禁じても、同じ意味の遠回しな言い方に置き換えて出力することがあります。最後の確認は、特定用語の一覧との機械的な照合と、人の目の両方で行います。

おとり広告

売る意思のない物件や、成約済みなどで売ることのできない物件の広告は、おとり広告として、宅建業法と表示規約の両方で禁じられています。3

これは文章の問題ではなく、掲載物件の管理の問題です。AIが文章を書く工程には現れないので、成約済み物件の掲載停止や、物件情報の更新管理が別途必要です。

二重価格表示

値下げ前後の価格を併記する二重価格表示は、次の5つの要件をすべて満たす場合に限って許されます。2

  1. 過去の販売価格の公表日と、値下げした日を明示する
  2. 比較対照価格が値下げ直前の価格で、値下げ前に2か月以上公表されていた
  3. 値下げから6か月以内の表示である
  4. 物件の価値に同一性が認められる
  5. 土地(現況有姿分譲地を除く)か建物(共有制リゾートクラブ会員権を除く)についての表示である

その価格で実際に販売していたことを、資料で客観的に示せる必要もあります。要件を満たさなければ、表示規約違反です。2

「旧価格○○万円→新価格○○万円」は、AIがもっともらしく書けてしまう文です。だからこそ、要件を満たすかどうかの確認は機械任せにできません。

AIに任せる工程と、人が担う工程

工程AIに任せられる部分人が担う部分
物件調査物件資料から特徴を拾い出す(間取り・採光・設備を言葉にする)図面・登記情報など、物件資料そのものの正確さ
文章化読みやすい文章に整える、複数の案を作る特定用語や根拠のない断定が紛れていないかの一次確認
広告審査特定用語の一覧との機械的な照合二重価格表示の5要件を満たすか、おとり広告に当たらないかの最終判断
掲載—成約済み物件の掲載停止など、物件情報の更新管理

人が担う部分の多くは、文章の外の事実を確かめないと判断できません。登記内容や成約の有無、価格の公表日は、AIには文章から分かりません。

物流の配車と点呼での線引きは、物流の2024年問題に生成AIは効くのかで扱っています。

この記事は、宅建業の実務経験のない筆者が、記事末の出典をもとにまとめました。

よくある質問

Q. 「日本一」「完ぺき」といった表現は、絶対に使えませんか。
表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を、現に持っている場合は使えます。根拠なく使うと、表示規約違反になります。

Q. 賃貸物件で、値下げ前の賃料を併記して掲載してもよいですか。
できません。二重価格表示が認められるのは販売価格の比較だけで、賃貸物件の賃料の比較表示は認められていません。

出典

  1. 不動産広告のルール | 公益社団法人 全日本不動産協会(参照 2026-08-10)
  2. 二重価格の表示 | 公益社団法人 全日本不動産協会(参照 2026-08-10)
  3. おとり広告 | 公益社団法人 全日本不動産協会(参照 2026-08-10)
  4. 宅地建物取引業法 | e-Gov法令検索(参照 2026-09-27)
  5. 不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則 | 不動産公正取引協議会連合会(参照 2026-09-27)
  6. 医療法施行規則 | e-Gov法令検索(参照 2026-09-27)

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