白油知

不動産の物件紹介文をAIに書かせるときに、宅建業法で気をつけること

不動産の物件紹介文を生成AIで作るときに、宅建業法32条の誇大広告禁止と不動産の表示に関する公正競争規約が具体的に何を禁じているかを整理し、AIに任せてよい部分と人が確認すべき部分を分ける。

物件紹介文の生成AI活用で最初に踏むべき前提は、宅建業法32条の誇大広告禁止である

宅地建物取引業法(宅建業法)32条は、宅建業者が広告をするときに①所在地・規模・形質・利用制限・環境・交通などについて著しく事実に相違する表示、②実際のものより著しく優良・有利であると人を誤認させる表示、の2つを禁じている(誇大広告等の禁止)。違反すると指示処分・業務停止処分の対象になり、情状が重い場合や業務停止処分に違反した場合は免許取り消し、刑事罰としては6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科され得る(全日本不動産協会)。

このメディアは医療とAIをテーマにしてきたが、本記事はあえて医療の知見が一切効かない不動産分野を選んで書いている。「指示すればどんなジャンルでも書ける」という主張を実際の出力で裏づけるための検証記事であり、運営者に不動産業界の実務経験はないため、判断材料は出典のみに絞る。

医療広告ガイドラインが「治療効果を保証する表現」「誇張した体験談」を禁じるのと同じ構造で、不動産広告にも「著しく優良と誤認させる表現」を禁じる法律がある。業界は違っても、規制の骨格は似ている。生成AIに物件紹介文を書かせるとき、この構造を理解しているかどうかで、リスクの持ち方が変わる。

物件紹介文を書く工程を分解する

物件紹介文の作成を工程に分けると、次のようになる。

  1. 素材の収集 — 図面・写真・登記情報・現地確認結果などの一次データ
  2. 文章化 — 素材から読者に伝わる紹介文を組み立てる
  3. 表現のチェック — 誇大広告・おとり広告・二重価格表示など法令・規約に抵触しないか確認
  4. 公開 — 媒体への掲載

生成AIが得意なのは②の「素材から文章を組み立てる」部分である。図面や写真の特徴を言語化し、読みやすい文章に整える作業は、AIに向いている。一方、①の素材そのものの正確性と、③の表現チェックは、AIが代替してよい領域ではない。以下、③で具体的に何を確認すべきかを、規制ごとに見ていく。

表現チェックで確認すべき3つの規制

1. 誇大広告の禁止(宅建業法32条)

「完全」「完ぺき」「絶対」「日本一」「抜群」「当社だけ」「最高」「最高級」といった最上級・断定表現は、合理的根拠がない限り不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)でも禁止されている(全日本不動産協会)。生成AIは「魅力的に書く」ことを最適化しがちで、根拠のない最上級表現を作文に混ぜ込みやすい。プロンプトで最上級語を禁止しても、AIが同義の婉曲表現に言い換えて出力することがあるため、最終チェックは語彙リストとの機械照合+人の目の両方が要る。

2. おとり広告の禁止

売る意思のない物件や、既に成約済みの物件を広告に出し続け、問い合わせてきた客に別の物件を紹介する行為は「おとり広告」として宅建業法・表示規約の双方で禁止されている(全日本不動産協会)。これは文章表現の問題ではなく、広告の「在庫管理」の問題であり、生成AIが文章を書く工程には現れない。成約済み物件を広告システムから外す運用(データの鮮度管理)が別途必要になる。

3. 二重価格表示の規制

値下げ前後の価格を並べて表示する「二重価格表示」は、次の5条件をすべて満たさない限り許されない:①過去価格の公表日と値下げ日を明示、②比較対照価格が値下げ直前の価格で値下げ前2か月以上公表されていたこと、③値下げから6か月以内の表示、④物件の価値の同一性、⑤土地または建物についての表示(全日本不動産協会)。しかも賃貸物件の賃料比較には、この二重価格表示自体が認められていない。これは生成AIが文章として自然に書けてしまう領域(「旧価格○○万円→新価格○○万円」)だからこそ、条件を満たしているかの確認を機械任せにできない箇所である。

AIに任せてよい部分・人が持つ部分

工程AIに任せられる部分人が持つべき部分
素材の収集一次データからの特徴抽出(間取り・採光・設備の言語化)図面・登記情報など素材そのものの正確性の担保
文章化読みやすい文章への整形、複数パターンの生成最上級表現・根拠のない断定が紛れていないかの一次チェック
表現チェック禁止語リストとの機械的な照合二重価格表示の5条件充足、おとり広告に該当しないかの最終判断
公開成約済み物件の広告取り下げなど在庫の鮮度管理

表にすると分かるとおり、AIが文章を「もっともらしく」作れることと、その文章が広告規制に適合していることは別問題である。とくに二重価格表示のように、条件を満たせば書いてよいが満たさなければ違法になる表現は、AIが文法的に正しく生成できてしまうからこそ、公開前チェックの対象から外せない。

まとめ

物件紹介文の生成AI活用は、素材を文章に変換する工程では有効だが、宅建業法32条の誇大広告禁止・おとり広告の禁止・二重価格表示の5条件という3つの規制は、いずれも文章の巧拙ではなく事実関係・在庫状態・公表履歴という「AIの外側にあるデータ」に依存している。AIに書かせた文章をそのまま公開せず、この3点を人が確認する工程を残すことが、法令適合の最低ラインになる。

よくある質問

Q. 生成AIが書いた物件紹介文をそのまま掲載してよいですか? A. 望ましくない。最上級表現の混入や、二重価格表示の条件充足は文章の巧拙とは別に確認が必要で、公開前の人によるチェック工程を残すべきである。

Q. 「日本一」「完璧」といった表現は絶対に使えませんか? A. 合理的根拠があれば使える場合もあるが、根拠なく使うと表示規約違反になり得る(全日本不動産協会)。

Q. 値下げ前後の価格を両方載せたいのですが? A. 公表日・値下げ日の明示、値下げ前2か月以上の公表、値下げから6か月以内、物件の価値の同一性など5条件をすべて満たす必要があり、賃貸の賃料比較はそもそも認められていない。

Q. この記事は不動産業界向けのサービス紹介ですか? A. いいえ。医療×AIを専門とするこのメディアが、ジャンルを問わず出典に基づいた記事を書けるかを検証するために、あえて不動産分野を選んで書いた記事である。

出典

  1. 不動産広告のルール | 公益社団法人 全日本不動産協会(参照 2026-08-10)
  2. 二重価格の表示 | 公益社団法人 全日本不動産協会(参照 2026-08-10)
  3. おとり広告 | 公益社団法人 全日本不動産協会(参照 2026-08-10)