2024年4月、トラックドライバーの時間外労働に、年960時間の上限規制が適用されました。1 配車計画と点呼の2つの業務では、機械に任せる部分と人が担う部分の線引きが見えてきています。

この記事でわかること

  • 配車計画では、数理最適化で日ごとの配車を自動で算出する事例があります
  • 点呼は、国の認定を受けた機器を使い、事前に届け出れば、業務後の点呼を自動で行えるようになりました
  • どちらも、ルールそのものを決める判断は人に残ります
この記事の目次(6節)
  1. 物流の2024年問題とは
  2. 業務を5つの工程に分ける
  3. 配車計画は、組み合わせの探索を機械に任せる
  4. 点呼は、国の機器認定制度で自動化が進んだ
  5. 配車と点呼に共通する線引き
  6. よくある質問

物流の2024年問題とは

2024年問題は、上限規制で労働時間が短くなり、輸送能力が不足して「モノが運べなくなる」おそれがある問題です。1 時間外労働の上限規制は、働き方改革の一環として2019年4月(中小企業は2020年4月)から適用されました。自動車運転の業務には5年間の猶予があり、2024年4月から年960時間の上限が適用されています。5

全日本トラック協会が紹介する国の検討会の試算では、何も対策を行わなかった場合、営業用トラックの輸送能力は2024年に14.2%、2030年に34.1%不足する可能性があります。1

2030年の34.1%は、およそ3分の1にあたります。人を増やそうにも採用は難しく、労働時間を延ばす道は規制で塞がれています。残るのは、同じ人数・同じ時間で今より多く運べるようにする効率化です。ここに、AIやシステム化への期待が集まっています。

業務を5つの工程に分ける

「物流にAIを入れる」という言い方では、何がどう変わるのか判断できません。トラック運送事業者の日々の業務を工程に分けると、次のようになります。

  1. 受注・荷主との調整 — いつ・どこへ・何を運ぶかを決める
  2. 配車計画 — どの車両とドライバーに、どの順路で割り当てるかを決める
  3. 点呼 — 業務の前後に、ドライバーの健康状態・酒気帯びの有無・車両の状態を確認する法定の業務
  4. 運行 — 実際に走る
  5. 記録・報告 — 運行の記録を作り、荷主に報告する

このうち、AIや自動化の検討が具体的に進んでいるのは、性質が対照的な配車計画と点呼です。

配車計画は、組み合わせの探索を機械に任せる

配車計画はもともと、ベテランの配車担当者が、経験で身につけた言葉にしていない知識(暗黙知)を頼りに、手作業で組んできた業務です。「この荷主の荷物はこの時間帯に積むと荷待ちが少ない」「このドライバーはこの経路に慣れている」といった知識です。

ブレインパッドは、この業務を数理最適化(制約条件を満たす組み合わせを計算で探す方法)のモデルに置き換えた事例を、自社のメディアで紹介しています。この仕組みでは、日ごとの配車計画(車両台数とルート)を自動で算出します。導入の前には、現場の担当者へのヒアリングから業務プロセスを棚卸ししたとしています。4

この事例で機械に任せたのは、制約条件を満たす組み合わせの探索です。納品時間の指定・積載量・拘束時間の上限などのうち、どれを守るべきルールとするか、例外的な荷主の要望に応じるかどうかは、人が決めます。

配車計画のAI化は、ベテランの勘をまねるというより、ベテランが頭の中でしていた組み合わせの探索を、明文化した制約条件のもとで機械に任せる仕組みへの置き換えに近いものです。

例えば、10台のトラックで毎朝の配車を組む運送会社なら、まず担当者が「この荷主は午前指定」「この道は大型車が通れない」といった制約条件を書き出します。機械はその中で組み合わせを探し、担当者は結果を見て例外を直す、という分担になるでしょう。

点呼は、国の機器認定制度で自動化が進んだ

点呼は法令で義務づけられた業務で、原則は対面です。国土交通省は、対面による点呼と同等の効果がある方法として、遠隔点呼や自動点呼を制度化してきました。3

2023年1月からは、業務を終えたドライバーへの点呼を、点呼機器で自動的に行えるようになりました。事業者は、国の認定を受けた機器を使い、運輸支局長等へ事前に届け出ることで実施できます。国が挙げる狙いは、運行管理の高度化による安全性の向上と、ドライバーや運行管理者の働き方改革です。2

開始時の名称は「乗務後自動点呼」で、現在は「業務後自動点呼」です。23

点呼の自動化が進んだのは、AIの性能が急に上がったからというより、機械に任せてよいという国の認定の枠が整ったからだとみています。医療でも、AIにできることと、制度上AIに任せてよいことの間には、同じ種類のずれがあります。物流の点呼は、このずれを国の認定制度が埋めた例として読めます。

配車と点呼に共通する線引き

観点配車計画点呼
何を代替するか暗黙知による組み合わせの探索対面での確認
先に必要だったもの制約条件の明文化認定機器という制度の枠
人に残る判断制約条件そのものの設計、例外への対応異常な値が出たときの最終判断、機器の管理
導入の壁技術より、業務の明文化技術より、制度の整備

どちらでも、AIや自動化が担っているのは、決まったルールに沿って処理する部分です。ルールそのものを決める部分は、人に残っています。労働時間の上限規制で、ルールを決める仕事に人の時間を回す必要が高まり、決まった処理を機械に任せる動きが強まったとみています。

製造現場でAIに任せる工程の切り分け方は、製造現場の検査記録をAIで下書きする記事で扱っています。

この記事は、記事末の出典をもとにまとめました。

よくある質問

Q. AIを入れれば、ドライバー不足は解消されますか。
解消ではなく、緩和と考えるべきでしょう。国の試算にある輸送能力の不足(2024年に14.2%、2030年に34.1%の可能性)を前提にすると、配車の効率化だけで不足をすべて埋められるとは限りません。

Q. 認定を受けた自動点呼の機器は、どこで確かめられますか。
国土交通省の運行管理高度化ワーキンググループのページで、認定を受けた業務前・業務後の自動点呼機器の一覧が公表されています。

出典

  1. 知っていますか?物流の2024年問題 | 全日本トラック協会(参照 2026-08-10)
  2. 報道発表資料:乗務後自動点呼が実施できるようになります!~ICTを活用した運行管理の高度化に向けて~ | 国土交通省(参照 2026-08-10)
  3. 運行管理高度化ワーキンググループ(旧:運行管理高度化検討会) | 国土交通省(参照 2026-09-27)
  4. 【AI導入事例】配車計画最適化による業務効率の改善 | DOORS DX(参照 2026-08-10)
  5. 建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制 | 厚生労働省(参照 2026-09-27)

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