自分の業務を棚卸しして、任せられる部分を切り出す — AIに渡す前の分解
生成AIを何に使えばよいか分からないのは、使い道が無いからではなく、業務が工程に分解されていないからです。判断が要る工程と要らない工程を見分ける棚卸しの手順と、AIに渡してよい範囲を整理します。
業務の棚卸しとは何か
業務の棚卸しとは、日々の業務を工程単位に分解し、判断が要る工程と要らない工程を見分ける作業である。
「生成AIを業務に使ってみたいが、何に使えばよいか分からない」という声の多くは、業務を「勤務」や「係」といった大きな単位でしか見ていないことが原因である。大きな単位のままでは、AIに渡せる部分と渡せない部分が見分けられない。まず工程単位に分解しないと、使い道は見えてこない。
工程の性質で分ける
| 工程の性質 | 例 | AIに渡せるか |
|---|---|---|
| 型が決まっている | 定型文の言い換え、記録の要約下書き | 渡せる(人が確認する前提) |
| 判断が要る | 何を優先するか、誰にどう伝えるか | 渡さない(人が持つ) |
| 患者情報を含む | 記録の内容そのもの | 規程の確認が先(別稿で扱う) |
型が決まっている工程から着手する。 判断が要る工程を無理に渡そうとすると、確認の手間がかえって増える。
手順
- 1日または1週間の業務を、思い出せる範囲で箇条書きに書き出す。細かさは気にせず、まず全部出す
- 書き出した項目を「判断が要る」「型が決まっている」の2つに分類するようAIに依頼する。分類の理由も添えさせる
- 「型が決まっている」に分類された工程のうち、患者情報を含まないものから渡す候補にする
- 患者情報を含む工程は棚卸しの段階では保留にする。何を入力してよいかの線引きは別稿(院内で生成AIを使うときの「入力してよいもの」の線引き)で扱う
- 候補の中から1つだけ実際に試す。うまくいってから他の工程に広げる。最初から全部を切り替えようとしない
Anthropicのプロンプトのガイドは、Claudeを「あなたの規範やワークフローに関するコンテキストを持たない、優秀だが新しい従業員」と考えるよう述べている。業務を工程単位に分解して渡すという発想そのものが、この黄金律の実務への応用である。何を任せたいかが曖昧なまま丸ごと渡しても、精度の高い分類は返ってこない。
分類に迷う工程は「わからない」と言わせる
判断が要るか型が決まっているかの境界があいまいな工程も出てくる。Anthropicのハルシネーションに関する解説は、不確実性を認める許可を明示的に与えることで誤った情報を大幅に減らせるとしている。「判断できない場合は無理に分類せず、判断が必要な理由を書いてください」と指示しておくと、あいまいな工程を型ありと誤分類する事故を防げる。
FAQ
Q. 棚卸しにどのくらい時間がかかりますか。 最初の書き出しは15分もあれば十分です。細かく完璧に書こうとせず、まず粗い一覧を作ることを優先してください。
Q. 「型が決まっている」に分類された工程は、そのまま自動化してよいですか。 自動化ではなく、下書きをAIに作らせて人が確認する、という分担から始めてください。確認の手間がどれだけ減るかを見てから次の工程に進めます。
Q. 棚卸しは1人でやるものですか。 まず1人の業務で試すのが早く始められます。手応えがあれば、同じ型を部署単位に広げる話に進められます。
棚卸しの先にある「実際にどこまで任せられる仕組みを作るか」の設計まで検討する段階になりましたら、ご相談を承っています。
出典
- Anthropic — プロンプティングのベストプラクティス(参照 2026-08-09)
- Anthropic — ハルシネーションを減らす(参照 2026-08-09)