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新人からの質問にどう答えるかをAIで下ごしらえする — 説明の順序を組み立てる

新人の「なぜですか」に答えられるのに、うまく説明できない。その原因は知識ではなく説明の順序にある。答えの中身は指導者が持ったまま、前提知識の階段づくりだけを生成AIに渡す手順と、渡してはいけない範囲を整理します。

説明の下ごしらえとは

説明の下ごしらえとは、答えの中身を用意する作業ではなく、どの順で話すかを先に決める作業である。

筆者は前職が看護師である。新人に「なぜこの順で確認するんですか」と聞かれて、答えは分かっているのに言葉にならない、ということがあった。手が覚えている手順は、頭の中で順序立っていない。その場で口をついて出るのは結論だけになり、新人には「そういうものらしい」としか残らない。

足りていないのは知識ではなく、相手が今どこまで知っているかから逆算した順序である。この順序づくりだけなら、外部に渡せる。

何を渡し、何を渡さないか

渡すもの渡さないもの
質問文そのもの患者の情報、特定の事例
新人の経験月数・既習範囲医学的な正誤の判断
自分が書いた説明の下書き最終的に何を教えるかの決定

線引きは単純で、中身は指導者が持ち、順序だけを機械に組ませる。この線を越えると、自分が説明できないことを新人に話すことになる。

手順

  1. 新人から出た質問を、聞かれたままの言葉で書き出す
  2. 相手の前提(入職からの月数、既に経験した範囲)を添える
  3. 説明の順序だけを組ませる。答えは書かせない
  4. 出てきた順序を見て、自分の言葉で説明を埋める
  5. 埋められない段があれば、そこが自分の理解の穴である

5が本題である。順序に落としたときに埋まらない段は、たいてい自分が根拠を確認しないまま運用してきた箇所である。ここは機械ではなく手順書か先輩に当たる。

使い方の型

前提知識の階段を出させる

入職4か月の新人から「この確認をなぜこの順でやるのか」と質問されました。説明する順序だけを、前提知識の浅いほうから5段までで組んでください。各段は見出しだけにして、内容は書かないでください。相手が既に知っていると仮定してよい前提も併記してください。

内容を書かせないのが要点である。中身が付いてくると、正誤の確認に時間を取られて、順序の検討という本来の目的が消える。

自分の説明を渡して抜けを探させる

以下は私が新人向けに書いた説明の下書きです。入職4か月の新人が読んで、前提知識が足りずに詰まる箇所だけを指摘してください。書き直しはしないでください。

Anthropic の指針は、モデルを「あなたの規範やワークフローに関するコンテキストを持たない、優秀だが新しい従業員」と考えるよう述べ、黄金律として最小限のコンテキストしか持たない同僚に指示を見せて、その人が混乱するならモデルも混乱するとしている。この見立ては裏返しても使える。前提を持たない読み手として読ませると、経験者には見えない段差が出てくる。

例を作らせて、自分で選ぶ

同社は例(few-shot / multishot)について、出力を誘導する最も信頼性の高い方法の1つとし、最良の結果には3〜5個を含めることを勧めている。説明でも同じで、たとえ話は1つより3つ作らせて自分で選ぶほうが早い。医学的に不正確なたとえが混ざりうるので、選ぶのは必ず人が行う。

「わからない」と言わせておく

指示の末尾に「判断がつかない場合は、判断がつかないと書いてください」と入れておく。同社はハルシネーション対策の基本として、不確実性を認める許可を明示的に与える手法を最初に挙げ、これだけで誤った情報を大幅に減らせるとしている。

指導の場面では、もっともらしい説明が最も危ない。断定が返ってきたときほど、自分で根拠を確認してから話す。

FAQ

答えの中身まで出させたほうが速くないですか。 速いですが、自分が確認していない説明を新人に渡すことになります。指導では説明の正しさの責任が指導者に残ります。

新人の名前や具体的な場面を書いてもよいですか。 書きません。質問の内容と経験月数があれば順序は組めます。個人が特定できる記述は落としてください。

手順書の内容を渡すのはどうですか。 院外に出してよい文書かを先に確認してください。確認が済んでいない文書は渡さず、質問文だけで組ませます。

自分の説明が否定されたらどうしますか。 指摘は候補であって判定ではありません。採否は指導者が決めます。納得できない指摘は捨ててかまいません。

出典

  1. Anthropic — プロンプティングのベストプラクティス(参照 2026-08-09)
  2. Anthropic — ハルシネーションを減らす(参照 2026-08-09)