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新人指導のフィードバック文をAIで整える — 伝わる書き方に直す使い方

新人へのフィードバックが伝わらないのは、内容ではなく書き方でつまずいていることが多い。評価は自分が決め、言い回しだけAIに整えさせる分担と、そのままの形では使ってはいけない場面を整理します。

指導のフィードバックにおける生成AIの役割とは

指導のフィードバックにおける生成AIの役割とは、評価そのものを決めることではなく、決まった評価を伝わる言葉に直すことである。

この分担を守れるかどうかで、使ってよい道具にも、使ってはいけない道具にもなる。

筆者は前職が看護師である。新人に何を伝えるべきかは、たいてい指導者の中で決まっている。書けない理由は判断がついていないことではなく、厳しく書けば刺さりすぎ、やわらかく書けば伝わらないという言葉の調整に時間がかかることのほうが多い。生成AIが効くのは、まさにその調整の部分である。

分担を先に固定する

決めること誰がやるか
できている/できていないの判断指導者(人)
次に何を練習するかの優先順位指導者(人)
その内容を伝える語順・語調・長さAIに下書きさせてよい
提出物としての最終的な文責指導者(人)

判断を先に自分の言葉で書き切ってから、AIに渡す。 順序を逆にして「この場面をどう評価すべきか」から相談すると、評価の根拠が自分の観察ではなくAIの一般論になる。それは指導ではない。

使い方の型

事実と評価を分けて書き直させる

伝わらないフィードバックは、事実と評価が混ざっていることが多い。

あなたは病棟の教育担当です。以下のメモを、新人看護師に渡すフィードバック文に整えてください。構成は「観察した事実」「そこから考えたこと」「次に取り組んでほしいこと(1つだけ)」の3段。メモに書かれていないことは補わないでください。人格や性格に触れる表現は使わないでください。(メモ)

制約の2つが要である。書かれていないことを補わせない指示は、AIが観察していない事実を作文することを防ぐ。人格に触れる表現の禁止は、書き手が疲れているときほど効く。

「次の1つ」に絞らせる

以下のフィードバック案から、今回伝える項目を1つだけ選び、残りは別紙の申し送り用に箇条書きで分けてください。選んだ理由を1行で添えてください。(フィードバック案)

一度に複数を指摘すると、受け手はどれから直せばよいか分からない。優先順位を決めるのは人だが、分けて並べる作業は機械が速い。

語調だけを変えて2案出させる

以下のフィードバック文の内容は変えずに、語調だけを変えた2案を作ってください。A案は簡潔で事務的に、B案は具体的な行動を添えて丁寧に。内容の追加・削除はしないでください。(フィードバック文)

比べると、自分がどちらを渡したいのか判断しやすい。AIに選ばせず、並べさせて自分が選ぶ。

自分の書き方を例として渡す

Anthropic のプロンプト設計指針は、出力の形式・語調・構造を安定させる方法として例示(few-shot)を挙げ、最良の結果を得るには3〜5個の例を含めることを推奨している。過去に自分が書いたフィードバック文を数本そのまま貼ると、指示の言葉で調整するより速く自分の文体に寄る。

やってはいけないこと

もうひとつ、見落とされやすい点がある。生成AIは事実と異なる内容をもっともらしい文体で書くことがあり、Anthropic はこれを最も高度なモデルでも起こりうる現象として説明したうえで、重要な情報は常に検証するよう明記している。フィードバック文で作文されて困るのは、日付・場面・回数といった具体である。 渡す前にそこだけ元のメモと突き合わせる。

副次的に起きること

書き方の調整をAIに渡すと、指導者の側に「何を観察したか」を先に書き出す時間が生まれる。フィードバックの質を決めているのは文章力ではなく観察の記録量なので、効いてくるのはむしろこちらである。文章を整える時間が減った分を観察のメモに回すと、翌週の指導が具体的になる。

FAQ

Q. 新人に「AIで書いた」と伝えるべきですか。 施設の方針によります。方針にかかわらず、内容の文責は指導者にあります。渡す前に自分の言葉として読める状態にしてください。

Q. 評価表の点数もAIに相談してよいですか。 点数は評価基準と自分の観察で決めます。AIに相談すると、観察していない一般論が根拠に混ざります。

Q. 厳しい内容をやわらげすぎてしまいます。 「事実は変えず、語調だけを変えた2案」を出させて自分で選ぶと、やわらげすぎを自覚できます。

Q. どこまで具体を伏せればよいですか。 氏名・部署・日付は伏せます。場面は「点滴の準備中」程度の粒度まで抽象化すれば足りることが多いです。


指導の記録や研修の運用まで含めて、書き物の負荷をどこまで機械に渡せるかを検討する段階になりましたら、設計のご相談を承っています。

出典

  1. Anthropic — プロンプティングのベストプラクティス(参照 2026-08-09)
  2. Anthropic — ハルシネーションを減らす(参照 2026-08-09)