要点

対象:委員会の資料づくりを担う病棟の看護師

  1. 確認は数字・固有名詞・引用元・日付に絞る
  2. 過去の資料を2〜3件貼ると書式がそろいやすい
  3. 考えを問われる文書は下書きから任せない

看護業務で生成AIをまず取り入れやすいのは、看護記録以外の書類作成です。 委員会の議事録、勉強会のレジュメ、係の年間計画、研修の振り返り、マニュアルの改訂案がこれに当たります。どれも患者の情報を含めずに済むことが多く、看護の本来業務ではありません。

この記事の目次(6節)
  1. 足りないのは清書の時間
  2. 指示文の書き方
  3. そのまま使える指示文の型
  4. AIが作った文章をそのまま提出しないために
  5. 使わないほうがよい場面
  6. よくある質問

足りないのは清書の時間

委員会の資料づくりが負担になるのは、材料はそろっていても、清書する時間が取れないためです。

例えば、感染対策委員会で議事録の担当(書記)が回ってきたとします。メモは手元にあっても、清書は勤務の後に回りがちです。メモを生成AIに貼り付けて下書きを作らせれば、清書の手間を減らせることがあります。残るのは、下書きをメモと突き合わせて直す作業です。

患者の個人情報や診療情報を外部のサービスに入力してよいかは、施設の規程と、そのサービスとの契約条件で決まります。 使い始める前に、規程の内容を医療情報部門(情報システム担当)に確認してください。この記事で扱うのは、個人情報を含めずに済む書類です。

指示文の書き方

Anthropic は、指示文(プロンプト)の指針で判断の目安を1つ示しています。指示文を事情をよく知らない同僚に見せたとき、その同僚がそのとおり動けるかどうかです。指針に並ぶ主なコツのうち、次の4つは書類作成にもそのまま使えます。1

コツ何をするか
はっきり、具体的に書く望む出力の形式と制約を明記する。順序が大事なら、番号付きの手順にする
理由を添えるなぜそうしてほしいのかを書く。目的が分かると、出力が的確になる
例を見せる例を3〜5件示すと、形式・語調・構成が安定する。例は実際の用途に近いものにする
役割を与える「あなたは〇〇の立場です」と1文置くだけでも、語調と観点が変わる

指針は、例を3〜5件示すと最もよい結果が得られるとしています。1 院内文書は様式が決まっていることが多いので、過去の資料を2〜3件貼るだけでも、書式がそろいやすくなります。貼る前に、資料の中の氏名は役職名に置き換えておきましょう。

そのまま使える指示文の型

議事録の下書き

あなたは病院の委員会事務局の担当者です。以下のメモから議事録の下書きを作ってください。1. 決定事項、2. 継続審議、3. 次回までの宿題(担当と期限つき)の3つの見出しに分けてください。メモに書かれていないことは補わず、不明な点は「要確認」と明記してください。個人名は役職名に置き換えてください。(メモ本文)

効くのは「補わない」「要確認と明記する」の2つの制約です。不明な点を「要確認」と書かせておくと、確認すべき箇所が一目で分かります。

勉強会レジュメの構成案

あなたは病棟の教育担当です。新人看護師15名向けに30分の勉強会をします。テーマは「輸液ポンプの操作でヒヤリ・ハットが起きやすい場面」です。以下の条件で構成案を3案出してください。条件: 導入5分・演習10分を含む / 一方的な講義にしない / 各案の狙いを1行で添えてください。医学的な内容の正誤は私が確認するので、構成の骨組みだけ作ってください。

要になるのは最後の1文です。内容の正確さには自分が責任を持つ、と書いておくと、AIに任せる範囲がはっきりします。

過去の資料の書式に合わせる

以下の3つが当院の年間計画書の書式です。(過去の資料3件)この書式に合わせて、来年度の褥瘡対策係の年間計画の下書きを作ってください。数値目標の欄は「(要記入)」として空けてください。

この型は、例を見せて、その書式で書かせる使い方です。書式が独特な院内文書ほど効きます。

AIが作った文章をそのまま提出しないために

生成AIは、事実と違う内容を、もっともらしい文章で書くことがあります。これをハルシネーションと呼びます。Anthropic は、最も高度なモデルでも起こりうるとしたうえで、減らす方法を公開しています。書類作成に効くのは次の3つです。2

  • 「分からない」と答えてよいと、指示文に書いておく。 この工夫だけで、ハルシネーションが大きく減るとされています
  • 元の資料の中だけで書かせる。 一般的な知識を混ぜないよう、はっきり書きます
  • 根拠を引用させる。 記述ごとに、根拠になる元の資料の箇所を引用させ、根拠が見つからない記述は削らせます

それでも、ハルシネーションが完全になくなるわけではありません。2 大事な情報は、必ず自分で確かめましょう。

全部を疑うと時短にならないため、実務では、数字・固有名詞・引用元・日付の4種類に絞って、元の資料と突き合わせます。言い回しが多少崩れていても、実害は大きくありません。

使わないほうがよい場面

  • 患者の情報を含む文書(施設の規程と契約条件の確認が済むまでは対象外)
  • 医学的な内容の正誤そのものを判断させること(出典に当たる作業は人が行う)
  • 提出先に「作成者の考え」を求められている文書(振り返りレポートなど)

見落としやすいのは3つ目です。考えを問われる文書を下書きから任せると、書いた本人が中身を説明できなくなります。 自分で書いた文章を整えてもらう使い方にとどめましょう。

よくある質問

Q. AIが作った文章が自分の文体と違って浮いてしまいます。どうすればよいですか。
過去の自分の文書を2〜3件、例として貼ると、AIが作る文章が自分の文体に近づきます。指示で調整するより、例を見せるほうが早道です。

Q. 委員会で「AIで作った」と言う必要はありますか。
施設の方針によります。内容の責任は作成者にあるという点は、どちらの方針でも変わりません。

出典

  1. Anthropic — Prompting best practices(プロンプト設計のベストプラクティス)(参照 2026-08-09)
  2. Anthropic — Reduce hallucinations(ハルシネーションを減らす手法)(参照 2026-08-09)