クリニックの勤怠管理システムは、夜勤・当直・オンコールの有無と、医師の副業・兼業の有無を確かめてから選ぶのが近道です。 汎用の製品では、夜勤・当直手当のような医療機関に特有の計算が、Excelでの手作業として残りがちです。
この記事でわかること
- クリニックにも、労働時間を客観的な方法で把握する責務があること
- 医師の副業・兼業先の労働時間を、自院の労働時間とどう通算するか
- 主な製品が、様式9の出力や労働時間の通算にどう対応しているか
この記事の目次(6節)
汎用の勤怠管理システムで手作業が残る点
- 勤務形態: 少人数の職員が、常勤・パートの別、時短勤務、2交代・3交代制、オンコール(呼び出しに備えた待機)を組み合わせて働く
- 診療科: 救急患者を受け入れる診療科や整形外科では、当直・オンコールが欠かせない
- 手当の計算: 職種ごとに締め日が違い、夜勤・当直手当の計算方法も職種や契約で変わる
- 副業・兼業: 医師の副業・兼業(いわゆる外勤)先での労働時間を、自院の労働時間と通算して管理する必要がある
看護師が2交代で働き、当直もあるクリニックを考えます。事務職と同じ締め日と計算方法で集計すると、夜勤・当直手当の分は、給与計算の担当者がExcelで計算し直すことになりかねません。こうした場面では、システムを入れても一部の計算に手作業が残ります。
クリニックにも労働時間を把握する責務がある
始業・終業時刻は客観的な記録で確認する
労働時間を適正に把握することは、病院でもクリニックでも使用者の責務です。厚生労働省のガイドラインは、労働基準法の労働時間の規定が適用されるすべての事業場を対象にしており、職員を雇うクリニックも含まれます。4
ガイドラインは、始業・終業時刻を確認し記録する方法として、原則として次の2つを挙げています。4
- 使用者が「自ら現認することにより確認し、適正に記録すること」
- 「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録」を基礎として確認し、適正に記録すること
自己申告で記録するのは、やむを得ない場合に限られます。その場合、使用者は必要に応じて実態調査をし、申告と実際の労働時間がずれていれば補正しなければなりません。4
紙の出勤簿に職員が自分で時刻を書く方式は、自己申告にあたります。勤怠管理システムの打刻やICカードに切り替えれば、ガイドラインの原則どおりの記録になります。
医師の労働時間は医療法でも把握が求められる
2024年4月から、医師の働き方改革に関する医療法の規定が適用されています。医療法上、管理者は医師の労働時間を、タイムカードによる記録やパソコンの使用時間の記録などの「客観的な方法その他の適切な方法」で把握しなければなりません。5
厚生労働省のQ&Aによると、医療法の面接指導の対象には、病院だけでなく診療所に勤める医師も含まれます。時間外・休日労働が1か月に100時間以上となることが見込まれる医師には、管理者が面接指導を行わなければなりません。5
当直やオンコールの多い医師がいるなら、月ごとの時間外・休日労働の合計を随時集計できる製品が向いています。
副業・兼業先の労働時間も通算して管理する
厚生労働省のQ&Aは、自院で雇う医師の副業・兼業を把握している場合、「医師本人の自己申告等」で副業・兼業先の労働時間を把握し、自院の労働時間と通算して管理する必要があるとしています。副業・兼業先の勤務予定や労働時間を把握する仕組み作りが重要だともしています。5
副業・兼業先の労働時間は、自院の勤怠管理システムには記録されません。製品を比べるときは、医師が副業・兼業先の勤務予定と実績を自分で入力できるか、自院の労働時間と合わせて集計できるかを確かめましょう。
様式9が要るのは、入院基本料を算定する病院
様式9は、入院基本料・特定入院料の施設基準(その入院料を算定するための、人員配置などの条件)を満たしていることを示す届出の添付書類です。様式は厚生労働省が定めており、看護要員の配置や勤務実績を記入します。3
様式9をExcelで作ると、1つのシートに19項目を手で入力することになり、ミスが起きやすくなります。そのため病院では、勤怠データから様式9を自動で出力できるかが製品選びの決め手になります。3
令和8年度診療報酬改定(2026年6月1日施行)の後も、一般病棟入院基本料と療養病棟入院基本料の届出には様式9を添付します。療養病棟入院基本料では、様式9に加えて様式9の2も添付します。有床診療所入院基本料は様式12(12の2〜12の8を含む)を使い、様式9は使いません。6
この記事で「様式9の出力」と書くときは、様式9の2を含みません。様式9の2まで出力できるか、令和8年度改定後の様式に合っているかは、提供元に確かめましょう。
製品ごとの対応
様式9の出力や副業・兼業先の労働時間の通算は、製品ごとに対応が違います。次の表は、比較サイトの記事2(2026年8月に閲覧)で取り上げられている主な製品の特徴です。令和8年度改定への対応は確かめていません。
| 製品 | 比較サイトの記事にある主な特徴 |
|---|---|
| Dr.JOY | 自己研鑽(本来業務とは別に行う勉強や研究)と労働時間を切り分けられる。副業・兼業先を含めて労働時間を通算できる |
| OLude | 副業・兼業先の労働時間を通算できる。様式9のデータを出力できる |
| ADVANCE勤怠クラウド Hospital Edition | 様式9を自動で作成・出力できる。自己研鑽と労働時間を切り分けられる |
| CWS就業管理システム | ワンクリックで様式9を出力でき、実績データとの突き合わせの手間を減らせる |
| KING OF TIME | 病院向けシフト管理システム「快決!シフト君NEO メディカル」と連携すれば、様式9を自動で出力できる |
| ジョブカン勤怠管理 | CSVやExcelを介して、様式9のフォーマットにデータを出力できる |
| ジンジャー勤怠 | 人事労務・給与の製品と組み合わせれば、勤怠の集計から給与計算までつながる |
機能や提供条件は変わることがあるので、最新の情報は各社の公式サイトで確かめましょう。
自院で確かめる3つの問い
まずは、いまの勤怠管理を誰がどの方法で行っているかを書き出しましょう。そのうえで、次の3つの問いにそれぞれ答えます。
- 夜勤・当直・オンコールがあるか。 あるなら、夜勤・当直手当を自動で計算できることを必須の条件にします。
- 医師が副業・兼業しているか。 しているなら、副業・兼業先の労働時間を自院と通算できることを必須の条件にします。
- 入院基本料を算定する病院か。 病院なら、様式9を出力できることを必須の条件にします。
3つとも「いいえ」なら、汎用の勤怠管理システムでも足ります。
どの場合でも確かめること
- いまのシフト表のデータを移せるか。 手書きやExcelのシフト表から移す手間は、見落とされがちです。シフト作成システムを別に使っているなら、連携できるかも確かめましょう
- 診療報酬や届出様式の改定に早く追随できるか。 保守契約の範囲で、追加費用なく改修する製品もあります。提供元が改定のたびにどれだけ早く改修するかも確かめましょう2
シフト表を作る前の希望の集め方は、勤務希望の集約をAIで整えるで扱っています。
出典
- クリニック導入実績のある勤怠管理システム15選|機能比較と導入判断ガイド【一覧表付き】(参照 2026-08-14)
- 病院・クリニック向け勤怠管理システムおすすめ13選!(参照 2026-08-14)
- 様式9とは?計算方法や勤怠管理システムの選び方をわかりやすく解説(参照 2026-08-14)
- 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(厚生労働省)(参照 2026-10-01)
- 「医師の働き方改革に関するQ&A」等について(周知依頼)(厚生労働省 医政局医事課 令和6年7月23日)(参照 2026-10-01)
- 基本診療料の届出一覧(令和8年度診療報酬改定)(関東信越厚生局)(参照 2026-10-01)

