医薬品や衛生材料の在庫を手作業で管理していると、欠品や過剰在庫が起きやすくなります。欠品すれば診療に支障が出ますし、在庫が多すぎれば期限切れによる廃棄ロスが出ます。在庫管理システムで在庫量を記録し、決めておいた数(発注点)を下回った品目を知らせるようにすれば、欠品と過剰在庫を減らせます。

この記事でわかること

  • クリニックが医薬品の業務手順書に定める、購入と保管の項目
  • 箱のバーコードと、箱から出したシートのバーコードの違い
  • 現場に定着させる導入の順番
この記事の目次(7節)
  1. 医薬品の購入と保管について手順書に定めること
  2. バーコードで読める情報
  3. 病院向けの7つの比較ポイント
  4. 在庫の把握方法は3通り
  5. 選定でよくある4つの失敗
  6. 導入前に確認すること
  7. 確認したあとの進め方

医薬品の購入と保管について手順書に定めること

クリニックも手順書の作成が義務

医療法と医療法施行規則により、病院・診療所・助産所の管理者は、医薬品の安全使用のための業務手順書を作り、手順書に基づいて業務を行わなければなりません。クリニックも診療所としてこの対象です。4

手順書の作り方は、平成29年度厚生労働科学特別研究の研究班がまとめた作成マニュアルに示されています。平成19年の初版を見直した平成30年改訂版で、以下「改訂版マニュアル」と呼びます。4 厚生労働省は2018年12月の事務連絡で、改訂版マニュアルを参考に手順書を見直すよう、病院などへの周知を都道府県などに依頼しました。4

改訂版マニュアルの購入と保管の項目

改訂版マニュアルには、医薬品の購入と保管について、手順書に定める項目の例が示されています。在庫管理システムが関わるのは、次の4つです。5

  • 発注: 発注した品目と発注内容を記録する
  • 検品: 商品名・規格・数量・期限(原文では「使用期限年月日」)を確かめ、発注記録と照合する。照合の方法の例に、GS1コードの照合が挙がっています
  • 規制医薬品の在庫数: 麻薬や毒薬・劇薬などの規制医薬品は、適切な在庫数を決め、定期的に在庫量を確かめる
  • 期限管理: 期限(原文では「有効期間・使用期限」)を定期的に確かめ、期限の短いものから先に使う(先入れ先出しなどの工夫)
CHECK 01 02 03 04 発注 検品 在庫数 期限管理 手順書の項目(改訂版マニュアルの例・順不同) 発注した品目と 数量を記録する 発注記録と照合し 期限を確かめる 規制医薬品の 在庫数を決める 期限を確かめ、 短いものから使う 在庫管理システムが手伝えること 発注点を下回った 品目を知らせる 期限と製造番号を 箱から読み取る 入出庫と 在庫量を記録する 期限と製造番号を 記録し、検索する
医薬品の業務手順書作成マニュアル(平成30年改訂版)の項目例のうち、在庫に関わる4つと、在庫管理システムが手伝えることを並べました。4つは工程の順番ではありません。

紙の台帳でも、これらは記録できます。システムを入れると、検品の照合はバーコードの読み取りで済み、期限や在庫量の確認はシステムの通知に任せられます。手順書の項目とシステムの機能を突き合わせると、必要な機能を見極めやすくなります。

バーコードで読める情報

箱のバーコードには有効期限と製造番号が入る

販売包装単位は、卸売業者などから医療機関に販売される最小の包装単位です。例えば、PTPシートが100シート入った箱や、10アンプル入りの箱です。2

2019年12月の薬機法などの改正により、2022年12月1日から、医療用医薬品の販売包装単位へのバーコード表示が法制化されました。表示するのは製造販売業者です。2 販売包装単位には、商品コード・有効期限・製造番号(または製造記号)の3つの表示が義務づけられています。2 医療機器と体外診断用医薬品も、同じ日から販売包装単位へのバーコード表示が法制化されています。3

2024年9月末時点の厚生労働省の調査(2026年3月公表)では、販売包装単位の有効期限の表示割合は、内用薬・注射薬・外用薬のどれも98%以上でした。2 納品時にこのバーコードを読み取れば、検品で確かめる期限に加えて、製造番号も手書きせずに記録できます。

箱から出したシートやアンプルには、期限が入っていないことが多い

箱の中のPTPシートやアンプルは、調剤包装単位と呼ばれます。この単位では、商品コードの表示は必須ですが、有効期限と製造番号は特定生物由来製品を除いて任意です。2 同じ調査で、生物由来製品を除く有効期限の表示割合は、内用薬5.3%、注射薬3.4%、外用薬4.9%でした。生物由来製品は17.1%でした。2

箱から出してシート単位で棚に置くと、バーコードから期限を読み取れない場合があります。納品時に箱のバーコードから期限を記録する運用にし、その読み取りに対応した製品を選びます。

病院向けの7つの比較ポイント

スマートマットクラウドを提供するエスマットは、自社のコラムで、病院の在庫管理システムの比較ポイントとして次の7つを挙げています。1

  1. 在庫の把握方法と入力負荷: 手入力・バーコード・重量センサーのどれを使うか
  2. 有効期限・製造番号(ロット)の管理: 期限と製造番号を記録・検索できるか
  3. 発注点アラートと発注支援: 発注点を下回ったら知らせ、発注を手伝うか
  4. 既存システムとの連携: 電子カルテ・医事会計システムと連携できるか
  5. 多部署・多拠点での一元管理: 部署をまたいで在庫をまとめて管理できるか
  6. 使用量データの活用: 使用量のデータを、定数(部署ごとに常備しておく数量)の見直しに使えるか
  7. サポートと導入実績: 医療機関での導入実績と、初期設定のサポートがあるか

病院向けのポイントをクリニックに当てはめると、とくに大事なのは1の入力負荷と3の発注点アラートです。発注点アラートがなければ、担当者の勘と経験に頼った発注に戻りがちです。 院内で医薬品を保管するなら、2の管理のために、箱のバーコードを読み取れるかも確かめます。

在庫の把握方法は3通り

把握方法仕組み向いている場合
手入力・台帳定期的に棚卸しをして数を記録する品目が少なく、システムにかける費用を抑えたい
バーコード・QRコード入出庫のたびに読み取って記録する品目が多く、入出庫の場面が決まっている
重量センサーマットに載せた品物の重さの増減から、在庫を自動で計測する入力の手間をできるだけ減らしたい

重量センサー方式とバーコード方式の手間

重量センサーを手がけるエスマットは、バーコードの読み取りも手入力も要らないため、運用が定着しやすいと説明しています。1 ただし、使えるのは、マットに収まり、耐荷重を超えない品目です。7 バーコード方式では、入出庫のたびに読み取る手間が残ります。読み取りや入力の手間が大きいと現場で使われなくなり、帳簿上の在庫数と実在庫がずれていきます。1

製品の例

バーコード方式の製品には、ZAICOの「zaico」があります。スマートフォンのカメラでバーコードを読み取って在庫数を更新でき、バーコードリーダーを別に用意する必要はないとしています。6 機能の一覧には、発注管理と「ロット・期限管理」があります。料金はスタータープランが月額8,980円(税抜。税込9,878円)で、14日間の無料トライアルがあります。6

重量センサー方式の製品には、エスマットの「スマートマットクラウド」があります。マットに品物を載せると、いつ・どれだけ出たか、入ったかが記録されます。7 最小のA6サイズ(耐荷重2kg)のマットで管理できる物の例として、小箱入りの医薬品が挙がっています。医療施設や宿泊施設の消耗品の在庫管理にも使われ、導入企業は1,400社を超えるとしています。7

どちらもクリニック専用の製品ではありません。期限管理の機能や発注点の設定機能がどのプランに含まれるかは、無料トライアルか資料請求で確かめます。

選定でよくある4つの失敗

前述のコラムは、在庫管理システムの選定でよくある失敗として、次の4つを挙げています。1

  • 現場で使われず、形骸化する
  • 機能が多すぎて、費用に見合わない
  • 電子カルテ・医事会計システムとの連携を後回しにし、二重入力が起きる
  • 運用が定着する前に、全部署・全品目へ一度に広げてしまう

同じコラムは、選定の段階で運用と要件を詰めておけば、これらを防げるとしています。使用頻度の高い品目で試し、現場に定着したのを確かめてから、対象を段階的に広げる進め方を勧めています。1

医療AIやITの導入で起きる典型的な失敗のパターンも参考になります。

導入前に確認すること

  1. いまの在庫管理を、誰が・どのくらいの間隔で・どの方法で行っているか
  2. 院内の医薬品の業務手順書に、発注・検品・期限の確認がどう書かれているか
  3. 電子カルテ・医事会計システムと連携する必要があるか、単独で使えば足りるか
  4. ワクチンのように、有効期限や製造番号の管理が欠かせない品目がどれだけあるか
  5. 最初に登録する品目をどこまで絞れるか(段階を踏んだ導入の手順を参照)

確認したあとの進め方

  • 品目が少なく、手順書の記録が台帳で足りているなら、台帳の様式を手順書の項目に合わせるところから始めます
  • 医薬品の期限と製造番号を記録したいなら、納品時に箱のバーコードを読み取れる製品の無料トライアルを申し込みます
  • 衛生材料の補充の手間を減らしたいなら、重量センサーの製品の資料を取り寄せ、置きたい品目の重さとマットの耐荷重を比べます
  • 費用を院内で説明する必要があるなら、稟議書の書き方を参考に、費用対効果を整理します

出典

  1. 病院の在庫管理システムの選び方|失敗しない7つの比較ポイント(参照 2026-10-02)
  2. 「医療用医薬品における情報化進捗状況調査」(令和6年9月末時点)の結果公表(厚生労働省・令和8年3月25日)(参照 2026-10-02)
  3. 「医療機器等における情報化進捗状況調査」(令和6年9月末時点)の結果公表(厚生労働省・令和8年3月25日)(参照 2026-10-02)
  4. 医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアルの改訂について(厚生労働省・平成30年12月28日 事務連絡)(参照 2026-10-02)
  5. 「医薬品の安全使用のための業務手順書」作成マニュアル(平成30年改訂版)(参照 2026-10-02)
  6. 在庫管理システム zaico(株式会社ZAICO)(参照 2026-10-02)
  7. スマートマットクラウド(株式会社エスマット)(参照 2026-10-02)

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