デジタル化・AI導入補助金2026は、従業員300人以下の医療法人も対象に含まれます。ただし、申請にはほかの要件も満たす必要があります。一方、設備向けの省力化投資補助金(一般型)では、医療法人は原則として対象外です。「医療機関は補助金の対象外」という説明は、制度によって正しいこともあれば、誤りのこともあります。
この記事でわかること
- 申請に要るGビズIDプライムは、発行までおおむね2週間かかります
- 補助率が1/2なら、補助額150万円以上の区分に届くのは費用300万円以上のときです
- 日程は締切回ごとに公表され、2026年9月27日の時点では12月1日締切の7次まで出ています
この記事の目次(9節)
デジタル化・AI導入補助金とは
中小企業や小規模事業者などがITツールを導入する費用の一部を、国が補助する制度です。 2026年に「IT導入補助金」から名称が変わりました。以下、本補助金と書きます。16
使えるかどうかは、「医療機関かどうか」では決まりません。法人格と制度の組み合わせで決まります。 ここを取り違えると、使える制度をあきらめたり、使えない制度の準備に時間をかけたりすることになります。
医療法人は対象か 制度で扱いが異なる
2026年の代表的な2つの制度を並べると、医療法人の扱いは正反対です。128
| 制度 | 医療法人の扱い | 公募要領の根拠 |
|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金2026 | 対象(常時使用する従業員300人以下) | 中小企業等の定義表 ⑨「医療法人、社会福祉法人」 |
| 中小企業省力化投資補助金(一般型) | 原則対象外。歯科医業を営む医療法人だけが例外 | 「医療法人(キで定めるものを除く。)は補助対象となりません」 |
省力化投資補助金(一般型)で対象になる歯科の医療法人には、2つの条件があります。医療法第44条に基づき都道府県知事の認可を受けて設立されていること、従業員が300人以下であることです(第7回の公募要領)。8
個人で開業している場合は、医療法人の行ではなく業種分類で判断します。本補助金の事務局サイトでは、医療はサービス業に含まれています。2
補助額と業務プロセスの数
名称に「AI導入」が入ったため、AIを入れると補助率が上がる、AI専用の優遇枠がある、という解説も見かけます。通常枠の公募要領には、そうした記載はありません。1
公募要領は、ITツールを「労働生産性の向上に資するソフトウェア(AIを含む。以下同じ。)」と定めています。1
通常枠の補助率と補助額は次のとおりです。業務プロセスは、公募要領が決めた業務の分類です。ソフトウェアがいくつの業務プロセスに対応するかで、申請できる補助額が変わります。13
| 補助対象経費 | 補助率 | 補助額 | 業務プロセスの数 |
|---|---|---|---|
| ソフトウェア購入費、導入関連費 | 1/2以内 | 5万円〜150万円未満 | 1プロセス以上 |
| 同上 | 1/2以内 | 150万円〜450万円以下 | 4プロセス以上 |
補助額は、経費に補助率を掛けて決まります。業務プロセスの数は、補助額150万円以上の区分に申請できるかどうかの条件です。補助率が1/2の場合、ソフトウェアと導入の費用が200万円なら、補助額は最大100万円です。補助額が150万円以上になるのは費用が300万円以上のときで、その場合は4プロセス以上に対応するツールが必要です。
補助率が2/3以内に上がる条件もありますが、AIとは関係なく、賃金に関するものです。2024年10月〜2025年9月のうち3か月以上、最低賃金に近い水準で雇う従業員が全体の30%以上いた場合です。ここでの「最低賃金に近い水準」は、その時点の地域別最低賃金以上で、2025年度改定後の地域別最低賃金未満を指します。1 補助率が2/3なら、費用225万円で補助額が150万円に届きます。
補助額を大きくしたいなら、「AIらしさ」より、4プロセス以上に対応するようにツールを組み合わせられるかを考えます。 制度をどこまで理解しているかで、受け取れる額が変わります。
医療機関がまず見る枠は2つ
本補助金には、インボイス枠の2つの類型を別々に数えて、5つの枠があります。通常枠、インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠、複数者連携デジタル化・AI導入枠です。医療機関が検討しやすいのは、通常枠とセキュリティ対策推進枠です。6
セキュリティ対策推進枠は、補助率が小規模事業者で2/3以内、中小企業で1/2以内、補助額は5万円〜150万円です。対象は、情報処理推進機構(IPA)の「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載され、かつITツールとして登録されたサービスに限られます。4
通常枠の申請は、1法人・1個人事業主あたり1回だけです(不採択なら、次の締切回までに申請し直せます)。通常枠と同時に申請できるのは、インボイス枠とセキュリティ対策推進枠に限られます。1
申請の前に用意するもの
申請の要件のうち、早めに手続きしたいものが2つあります。1
- GビズIDプライム:国の補助金の電子申請に使うアカウントで、申請に欠かせません。発行までおおむね2週間かかるので、早めの申請が求められています1
- SECURITY ACTION の宣言:IPAの制度で、「★ 一つ星」か「★★ 二つ星」のどちらかを宣言します。宣言内容の確認のため、事務局がIPAと交付申請の情報の一部を共有することへの同意も必要です
ほかにも、次のような要件があります。1
- 日本国内に、法人なら本社と補助事業の実施場所、個人事業主なら補助事業の実施場所があること
- 直近の月の事業場内最低賃金が、地域別最低賃金以上であること
- 申請者が自分で管理する携帯電話の番号を1つ登録すること(SMSでパスワードなどが届きます)
さらに、労働生産性(働いた時間1時間あたりに生み出す付加価値)に関する3年間の事業計画を策定し、実行する必要があります。1年後に労働生産性を3%以上高め、計画期間の年平均の伸び率も3%以上にするのが要件です。IT導入補助金2023〜2025の通常枠などで交付決定(補助金の交付が正式に決まること)を受けたことがある事業者には、どちらも4%以上が求められます。1
GビズIDプライムの取り方は、GビズIDプライムの取得手順にまとめました。
つまずきやすい6点
公募要領の「補助対象外となる経費」と手続きの規定から、実務で問題になりやすい点を抜き出しました。1
| # | つまずきやすい点 | 公募要領の記載 |
|---|---|---|
| 1 | 先に発注してしまう | 交付決定の前に契約・発注・納品・支払いなどを行うと、補助金を受けられない |
| 2 | 好きなAIツールを選べると思う | 対象は、IT導入支援事業者(ツールを登録して販売・導入する事業者)が提供し、事務局に登録されたITツールに限られる |
| 3 | リース・レンタルで導入する | リース・レンタル契約のITツールは対象外(お助け隊サービスを除く) |
| 4 | 申請代行費を経費に入れる | 補助金の申請・報告にかかる代行費は対象外 |
| 5 | 消費税を含めて計算する | 公租公課(消費税)は対象外 |
| 6 | 国のほかの補助金と重ねる | 国や中小機構などのほかの補助金と重なる事業は含められない |
1と2は、性質が違います。1は順番の問題で、やり直しがききません。例えば、9月にIT導入支援事業者から見積もりを取ったクリニックが、交付決定を待たずに発注したとします。そのツールの費用は、補助の対象になりません。1
2は、選べるツールが限られるという問題です。導入したいツールが登録されていなければ、本補助金の対象になりません。中古品や、対外的に無償で提供されているもの(誰でも無料で使えるソフトなど)も対象外です。1
スケジュール
2026年9月27日に事務局サイトで確認した、通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠の直近の締切回(5次)の日程は、次のとおりです。5
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 5次締切分 | 2026年9月29日(火)17:00 |
| 交付決定日 | 2026年11月9日(月)(予定) |
| 事業実施期間 | 交付決定〜2027年4月30日(金)17:00(予定) |
| 事業実績報告期限 | 2027年4月30日(金)17:00(予定) |
5次のあとも、6次(10月30日締切、12月10日交付決定予定)と7次(12月1日締切、2027年1月19日交付決定予定)の日程が公表されています。公表されるのは、日程が確定した締切回だけです。複数者連携デジタル化・AI導入枠は、日程が別になっています。5 申請の前に、最新の締切回を事務局サイトで確認してください。
歯科の医療法人なら、省力化投資補助金(一般型)も選択肢になります。第8回の応募申請の受付は、2026年9月18日に始まっています(9月27日に確認)。補助上限額は従業員数に応じて750万円(5人以下)から8,000万円(101人以上)で、大幅賃上げ特例に当たれば1,000万円から1億円です。補助率は中小企業が1/2、小規模企業者などが2/3です。9 従業員6人以上なら上限額の桁が1つ違うので、設備を伴う省力化を考えているなら比べる価値があります。
歯科の医療法人を対象とする扱いは、第7回の公募要領によるものです。第8回も同じ扱いかは、第8回の公募要領で確認してください。
補助金より先に「何を任せるか」を決める
要件をすべて満たしても、導入したものが現場で使われなければ、労働生産性を3%高める計画は達成できません。本補助金の手続きは、補助を受けて終わりではなく、事業実績報告と、3年間の効果報告まで続きます。
調べる順番としては、補助金を使えるかどうかより先に「どの業務を、どこまでAIに任せるか」を決めましょう。それが決まっていれば、4プロセス以上に対応できるかも、登録済みのITツールで足りるかも、早く判断できます。制度から入ると、要件に合わせて業務のほうをゆがめることになりがちです。
よくある質問
Q. 個人で開業しているクリニックも対象になりますか。
A. 事務局サイトでは、医療はサービス業に含まれています。個人事業主なら、サービス業の区分(常時使用する従業員100人以下)に当たるのが目安です。自院の業種分類は、事務局のコールセンターで確認すると確実です。
Q. 自院向けに開発してもらうAIも対象になりますか。
A. 対象は事務局に登録されたITツールに限られます。登録の有無を、IT導入支援事業者に確認してください。
数値は2026年8月12日に公募要領で、日程は9月27日に事務局サイトなどで確認しました。補助金の制度は改定されます。 申請するときは、最新の公募要領を必ず確認してください。
出典
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)(参照 2026-08-12)
- 申請の対象となる方 | デジタル化・AI導入補助金2026(参照 2026-09-27)
- 通常枠 | デジタル化・AI導入補助金2026(参照 2026-08-12)
- セキュリティ対策推進枠 | デジタル化・AI導入補助金2026(参照 2026-08-12)
- 事業スケジュール | デジタル化・AI導入補助金2026(参照 2026-09-27)
- トップページ | デジタル化・AI導入補助金2026(参照 2026-08-12)
- 資料ダウンロード | デジタル化・AI導入補助金2026(参照 2026-08-12)
- 中小企業省力化投資補助事業(一般型)第7回公募要領(参照 2026-08-12)
- トップページ(一般型)|中小企業省力化投資補助金(参照 2026-09-27)
- 中小企業省力化投資補助事業(一般型)の第7回公募要領を公開しました | 中小企業庁(参照 2026-08-12)

