地域医療連携システムの選び方 — 紹介状のやり取りをどこまで電子化できるか
紹介状・逆紹介のやり取りを電子化する地域医療連携システムを、タイプ別に比較する。日本医師会総合政策研究機構の実態調査(有効回答279箇所)の数字を基に、導入のハードルと効果を整理した。
紹介状(診療情報提供書)は、今も手書きやFAXでのやり取りが残る医療機関が多い。一方で、電子カルテの自動転記機能や地域医療連携システムを使えば、作成と送付の両方を電子化できる。この記事は、どちらから手を付ければよいかを整理する。
この記事でわかること
- 紹介状の作成負担は電子カルテの自動転記機能、送付・共有の負担は地域医療連携システムで、それぞれ別の道具が対応する
- 地域医療連携システムは目的別に5つのタイプに分かれ、全部を導入する必要はない
- 全国調査(有効回答279箇所)では、平均参加施設数は143.0施設、平均システム構築費用は約2億5,409万円(1参加施設あたり約163万円)と、単独クリニックが自前で作る規模の話ではない
地域医療連携システムとは
地域医療連携システムとは、複数の医療機関が診療情報(紹介状・検査結果・処方内容など)を電子的に共有するための仕組みである。
紹介状の「作成」を楽にするのは電子カルテ側の自動転記機能で、紹介状の「送付・共有」を楽にするのが地域医療連携システムという、役割の異なる2つの道具がある点を最初に区別しておく必要がある。
紹介状作成の負担は電子カルテの機能で減る
電子カルテベンダーの解説記事によれば、紹介状などの定型文書を開いた時点で患者のID・氏名・年齢・住所等の基本情報は自動転記され、カルテに記載済みの内容をクリックするだけで紹介状に転記できる機能を持つ製品がある。これは新しいシステムを追加導入しなくても、既存の電子カルテの機能で解決できる部分である。
紹介・逆紹介の重要性は診療報酬上も位置づけられており、患者の同意を得たうえで診療情報を提供した場合に医療機関・情報提供先ごとに算定できる診療情報提供料の算定回数は、増加傾向にあるとされる。
地域医療連携システムのタイプ
SaaS比較サイトの解説では、地域医療連携システムは目的によって5つのタイプに分かれるとされている。
| タイプ | 主な用途 | 製品例 |
|---|---|---|
| 前方・後方支援対応型 | 診療所・訪問看護・介護事業所との包括的な連携 | MINET |
| 診療情報全般共有型 | 投薬・検査・画像情報の相互利用 | MIO Karte(参加費用無償) |
| 検査画像特化型 | DICOM画像の共有・遠隔読影 | LOOKREC(初期費用なし・専用設備不要) |
| CRM型 | 連携医療機関情報の一元管理・分析 | メディマップ(16万件以上の医療機関情報を活用) |
| 予約管理特化型 | 紹介予約のWeb受付業務効率化 | e連携(月額30,000円〜、24時間365日受付) |
このほか、富士通のHumanBridgeは「紹介状連携」や「診察・検査のオンライン予約」を機能として持ち、治療を受けている患者を中核病院へ紹介する前方連携(紹介先での治療計画を確認できる)と、中核病院からリハビリ施設・かかりつけ医へ紹介する後方連携の両方を想定して設計されている。エスイーシーのID-Linkは、地域に分散した診療情報を電子カルテと連携させて共有するネットワークサービスで、診療情報提供書だけでは伝えきれない検査データや医用画像データなどを共有できるとされる。
「どの情報を共有し、どの業務を効率化したいか」で選ぶべきシステムが変わる、というのが比較記事に共通する指摘である。全部入りの製品を探すより、自院がまず解消したい負担(作成・送付・予約・画像共有のどれか)を先に絞るほうが選定は早い。
実態調査が示す規模感
日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が2012年度から続けている全国調査(2023年度版、有効回答279箇所)は、次の実測値を示している。
- 全国で稼働している地連NW(地域医療連携ネットワーク)の平均運用年数は9.3年、1地連NWあたりの平均参加施設数は143.0施設
- 平均システム構築費用(累積)は2億5,409万1千円、2024年度の平均年間運営予算は1,185万円
- 1参加施設あたり163万4,761円、1患者あたり1万2,770円の構築費用がかかっている
- 運営側が「電子的診療情報評価料」について具体的な説明を行っている地域ほど、その診療報酬を算定している割合が高かった
この数字が示すのは、地域医療連携システムの多くは単独の医療機関が自前で構築するものではなく、地域の医師会・拠点病院が主導して複数の医療機関が参加する枠組みだということである。自院単独で「地域医療連携システムを導入する」という判断にはなりにくく、実務上は「既存の地連NWに参加するか」「参加できない場合にHumanBridgeやID-Linkのような個別の連携サービスを使うか」という選択になりやすい。
選び方
- まず自院の地域に地連NWが既にあるかを確認する。 既存の枠組みがあれば、新規構築より参加のほうが費用・期間とも小さくて済む可能性が高い
- 解消したい負担を1つに絞る。 紹介状作成の手間なら電子カルテの自動転記機能、紹介予約の電話対応なら予約管理特化型、というように用途で選ぶ
- 診療報酬の算定条件を運営側に確認する。 電子的診療情報評価料などの算定は、地連NW運営側の周知度合いによって算定率が変わるとされている
- 参加費用と運営費用の負担者を確認する。 MIO Karteのように参加費用が無償とされるサービスもあれば、月額課金型もあり、自院負担の有無は個別に確認が必要である
FAQ
Q. クリニック単独で地域医療連携システムを導入できますか。 新規構築は地域の医師会・拠点病院が主導する規模の取り組みが一般的です。単独クリニックは、既存の地連NWへの参加や、HumanBridge・ID-Linkのような個別サービスの利用という形になりやすいです。
Q. 紹介状の作成だけを楽にしたい場合、地域医療連携システムは必要ですか。 必要とは限りません。紹介状の作成負担は、電子カルテの自動転記機能で解消できる場合があります。地域医療連携システムが対応するのは、主に送付・共有の負担です。
Q. 参加費用はどの程度かかりますか。 製品・枠組みによって異なります。MIO Karteのように参加費用が無償とされるサービスがある一方、日医総研の調査では地連NW全体の平均で1参加施設あたり約163万円の構築費用がかかっているとの実測値もあります。個別の枠組みごとに確認が必要です。
Q. 導入すれば紹介状の対応工数はどれくらい減りますか。 一律の数字は示されていません。電子カルテの自動転記機能は基本情報の転記作業を減らすとされていますが、削減量は既存の運用や紹介件数によって変わるため、自院の現状を先に可視化してから見積もる必要があります。
自院の紹介状運用の現状把握や、地域医療連携システムへの参加検討・電子カルテとの連携設計についてのご相談を承っています。
出典
- ICTを利用した全国地域医療情報連携ネットワークの概況(2023年度版) 日医総研ワーキングペーパー No.485(参照 2026-08-14)
- 地域医療連携システム14選。メリットや機能、タイプ別の選び方(参照 2026-08-14)
- 紹介状作成は電子カルテで手間を削減(参照 2026-08-14)
- HumanBridge EHR ソリューション - 地域医療ネットワーク - 富士通株式会社(参照 2026-08-14)
- 地域医療連携ネットワーク ID-Link - 株式会社エスイーシー(参照 2026-08-14)