今も紹介状(診療情報提供書)を手書きし、FAXや郵送で送っている医療機関は少なくありません。紹介状の作成は電子カルテの自動転記機能で、送付は地域医療連携システムで省力化できます。
この記事でわかること
- 地域医療連携システムの主な種類と、それぞれが減らす手間
- 地域医療情報連携ネットワーク(地連NW)の構築費用と運営予算の目安
- 国の電子カルテ情報共有サービスの開始時期と利用条件
この記事の目次(6節)
電子カルテの自動転記機能
電子カルテによっては、紹介状などの定型文書を開くだけで、患者のID・氏名・年齢・住所などが自動で入ります。カルテに記載した内容をクリックするだけで、紹介状に転記できる製品もあります。3 今お使いの電子カルテにこうした機能がないか、確認してみてください。
紹介・逆紹介は診療報酬で評価されており、PHCによると、診療情報提供料の算定回数は年々増えています。3 紹介状を書く機会が増えるほど、作成の手間を減らす意味は大きくなります。
地域医療連携システムとは
地域医療連携システムは、複数の医療機関が紹介状・検査結果・処方内容などの診療情報を電子的に共有する仕組みの総称です。 予約の受付や連携先の管理を支える製品もあります。このうち、病院や自治体、医師会などが地域で共同運営するものを、地域医療情報連携ネットワーク(地連NW)と呼びます。
院内の情報共有ツールは、医療機関向け情報共有ツールの選び方で取り上げています。
5つのタイプ
ASPICの比較記事では、地域医療連携システムを用途別に5つのタイプに分けています。2
| タイプ | 主な用途 | 製品例 |
|---|---|---|
| 前方支援から後方支援まで対応するタイプ | 病診連携から、退院後の在宅への移行まで | MINET |
| 診察・検査情報を共有するタイプ | 投薬・検査・画像などの診療情報の共有。検査画像の共有に特化した製品もある | MIO Karte(閲覧のみの参加は無料)、LOOKREC(画像に特化。初期費用なし・専用設備不要) |
| CRMタイプ(連携先の情報を管理する) | 連携先の医療機関の情報の一元管理・分析 | メディマップ(全国16万件以上の医療機関データを収録) |
| 後方支援(退院・転院調整)に特化したタイプ | 退院・転院の調整 | CAREBOOK、MegaOak 地域連携室 |
| 予約管理に特化したタイプ | 紹介予約のWeb受付 | e連携(初期費用70万円、月額3万円から、24時間365日受付) |
地連NWで使われている製品
日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の調査では、地連NWが使う製品を262地域が答えました(複数回答)。最も多いのは独自開発などの「その他・独自」で149か所、次いでID-Linkが79か所、HumanBridgeが67か所でした。1
前方連携は、診療所などから中核病院へ患者を紹介する流れです。後方連携は、中核病院からリハビリ施設やかかりつけ医へ紹介する流れです。富士通のHumanBridgeは両方に対応し、紹介状の連携や、診察・検査のオンライン予約ができます。HumanBridgeでは、紹介元が紹介先での治療計画を確認できます。4
エスイーシーのID-Linkは、地域に分散した診療情報を、電子カルテと連携させて共有するサービスです。エスイーシーは、患者が同意した場合、紹介状だけでは伝えきれない検査データや医用画像なども共有できるとしています。5
地連NWは単独の診療所が作る規模ではない
日医総研が2024年2月に実施した調査(2023年度版、有効回答279か所)では、地連NWの規模は次のとおりでした。1
- 1つの地連NWあたりの参加施設数の平均は143.0施設
- システムの構築費用(累積。回答のあった189地域)の中央値は2,500万円、平均は2億5,409万円。中央値は、金額順に並べて真ん中に来る値です。一部の大きな地連NWが平均を押し上げています
- 参加施設1か所あたりの構築費用は、平均163万4,761円
- 2024年度の年間運営予算(調査時点の見込み)の平均は1,185万円
このため、まず地域の地連NWに参加できるかを確かめるのが現実的です。
国の電子カルテ情報共有サービス
厚生労働省は、地連NWとは別に「電子カルテ情報共有サービス」の運用に向けて準備を進めています。 地連NWと違い、地域に関係なく紹介状を送れます。6
紹介状を送る流れ
紹介状を送る機能(文書送受信サービス)では、紹介元は口頭で患者の同意を得たうえで、電子カルテから共有サービスに紹介状を登録します。紹介先は、登録された紹介状をすぐに閲覧できます。6
必要に応じて、退院時サマリーや検査レポート(PDF)、キー画像(所見を示す代表的な画像。PNG・JPEG・TIFF)も添付できます。厚生労働省によると、紹介元は印刷・郵送の事務が、紹介先はスキャンの手間が減ります。6
利用開始の時期と要件
モデル事業は2025年2月(令和7年2月)から順次始まっています。厚生労働省は、2026年度(令和8年度)の冬ごろの全国的な運用開始を目標にしています(概要案内2.1.0版、2026年7月)。2026年末から2027年初めごろにあたります。準備が整った医療機関から使い始める予定です。6
利用には、オンライン資格確認の導入が必要です。どのベンダーの電子カルテが対応しているか、改修費用、対応時期は、医療機関等向け総合ポータルサイトに掲載されています。補助金の案内も同じポータルサイトにあります。6 7
地連NWとの比較
| 比較項目 | 地連NW | 電子カルテ情報共有サービス |
|---|---|---|
| 連携できる範囲 | 同じ地連NWに参加している医療機関 | 対応した電子カルテを入れた全国の医療機関 |
| 運営 | 病院・自治体・医師会など | 国(厚生労働省) |
| 共有できる情報 | 地連NWや製品による。検査データや医用画像を共有できる製品もある | 3文書(診療情報提供書・退院時サマリー・健康診断結果報告書)と臨床情報(傷病名・感染症・薬剤アレルギー等・その他アレルギー等・検査) |
| 紹介状の保存期間 | 地連NWや製品による | 登録から180日。紹介先が受け取ってから1週間ほどで自動的に消去 |
| 紹介前の受け入れ調整 | 地連NWや製品による | 専用の機能はない(受け入れ打診時の紹介状の送信には使える) |
国のサービスで共有されるのは上の文書と情報で、カルテ本文(SOAP)の所見やメモは共有されません。処方情報は、別の電子処方箋管理サービスの側で扱われます。地連NWの列は日医総研の調査とID-Linkの製品ページ、国のサービスの列は厚生労働省の資料によります。1 5 6 7
紹介状は、送る側と受ける側が同じ仕組みを使っていないと届きません。よく紹介する先が地連NWに参加しているか、国のサービスに対応しているかを先に確かめると、どちらを優先するか判断しやすくなります。
どのシステムから始めるかは、今の電子カルテと地連NWの有無で決める
- 今の電子カルテに、紹介状の自動転記機能がないかを確認しましょう。 あれば、新しいシステムを入れずに作成の手間を減らせます
- 自院の地域に地連NWがあるかを、地域の医師会などに問い合わせましょう。 あれば、参加を申し込むのが早道です。紹介予約の電話対応を減らしたいなら、予約管理に特化したタイプも候補になります
- 電子カルテのベンダーに、電子カルテ情報共有サービスへの対応時期と改修費用を確認しましょう。 このサービスは、地連NWがない地域でも紹介状を電子送付する手段になる予定です
- 参加費と運営費を、自院・運営側・自治体のどこが負担するかを確認しましょう。 MIO Karteのように閲覧のみの参加は無料のサービスもあれば、月額課金のサービスもあります
- 運営側に、電子的診療情報評価料などを算定できる条件を説明してもらいましょう。 日医総研の調査では、運営側が具体的な説明を行っている地域の方が、算定している割合が高くなっていました1
たとえば、紹介状を手書きしてFAXで送っている診療所なら、この1〜3の順に確かめます。新しいシステムを入れずに済む部分から手を付けやすくなります。
よくある質問
Q. 参加費用はどの程度かかりますか。
製品や地連NWによって違います。自院の負担があるかどうかは、地域の地連NWの運営側に確認しましょう。
Q. 導入すれば、紹介状にかかる手間はどれくらい減りますか。
目安となる公表データは見当たりません。今の運用や紹介の件数で変わるので、紹介状1通の作成から送付までの時間を、先に測っておくと見積もりやすくなります。
出典
- ICTを利用した全国地域医療情報連携ネットワークの概況(2023年度版) 日医総研ワーキングペーパー No.485(参照 2026-08-14)
- 地域医療連携システム14選。メリットや機能、タイプ別の選び方(参照 2026-08-14)
- 紹介状作成は電子カルテで手間を削減(参照 2026-08-14)
- HumanBridge EHR ソリューション - 地域医療ネットワーク - 富士通株式会社(参照 2026-08-14)
- 地域医療連携ネットワーク ID-Link - 株式会社エスイーシー(参照 2026-08-14)
- 電子カルテ情報共有サービス 概要案内 2.1.0版(令和8年7月)厚生労働省医政局(参照 2026-10-02)
- 電子カルテ情報共有サービス | 医療機関等向け|厚生労働省(参照 2026-10-02)

