全身麻酔(薬で痛みを感じなくさせ、意識をなくす方法)が欧米の手術に広く使われるようになったのは、19世紀の半ばのことです。転機は1846年、ボストンで行われたエーテル麻酔の公開実験でした。

この記事でわかること

  • 1846年より前の欧米では、手術の痛みを和らげる確かな方法がありませんでした
  • 有名な「諸君、これはいかさまではない」という一言は、何を指していたのかがはっきりしていません
  • 麻酔が広まると、複雑な手術にも使われるようになりました
この記事の目次(5節)
  1. 麻酔のない時代の手術
  2. 1846年、エーテル麻酔の公開実験
  3. 痛みを取る技術から、安全を守る専門分野へ
  4. 術中モニターのデータとAI
  5. よくある質問

麻酔のない時代の手術

1846年より前の欧米では、外科医が痛みに対して打てる手はわずかでした。頼ることが多かったのは、酒と、口にかませるもの、それに患者の我慢でした。中世ヨーロッパでは、薬草の液を染み込ませた「眠りのスポンジ」を使った記録もあります。ただ、長い手術には効かないと見られ、16世紀の終わりにはすたれていきました。2

当時の図や記録には、患者を押さえつける場面が、手術の一部として必ずといってよいほど描かれています。2 手術をするのは命にかかわる病気のときに限られ、出血を抑えるために手早さが重視されました。1

こうした時代からの看護記録の移り変わりは、看護記録はどう進化してきたかでたどっています。

1846年、エーテル麻酔の公開実験

1846年10月16日、ボストンのマサチューセッツ総合病院で、医師たちが見守るなか、ある手術が行われました。歯科医のウィリアム・モートンが、患者にエーテルを吸入させました。患者が意識を失ったところで、外科医のジョン・コリンズ・ウォーレンが首の腫瘍の一部を切除しました。13

患者は1825年生まれのエドワード・ギルバート・アボットで、当時20歳前後でした。意識が戻ったあと、強い痛みは訴えなかったと伝えられています。3

手術のあと、ウォーレンは見守る医師たちに「諸君、これはいかさまではない」と言ったとされます。医学史でよく知られた一言です。13

前の年には、ホレス・ウェルズが亜酸化窒素(笑気)を使った麻酔の公開実験を行いましたが、患者が痛みでうめき、失敗に終わっていました。ウォーレンの一言は、その失敗を指していたと考えられてきました。ただし、ウォーレンは、1847年にウェルズ本人から言われるまで、その実験を覚えていなかったと書き残しています。そのため、この見方には疑問も出ています。3

痛みを取る技術から、安全を守る専門分野へ

この公開実験の知らせは、またたく間に世界へ広まりました。1 その後、麻酔は複雑な手術にも使われるようになっていきました。2

いまの麻酔科医は、手術中の意識・呼吸・循環を管理し、患者の全身状態を守ります。手術は、麻酔科医・執刀医・看護師が役割を分担するチーム医療で行われます。

例えば、新人向けの勉強会で麻酔の歴史を5分で紹介するとします。「麻酔のない時代の手術」と「1846年の公開実験」を並べると、麻酔が何を変えたのかが伝わりやすいでしょう。

術中モニターのデータとAI

麻酔科は、医療の中でも、術中に扱うモニターのデータが特に多い分野です。心拍・血圧・呼吸・麻酔の深さを連続して監視するので、異常の検知や傾向の分析の技術とも相性がよいと考えられます。

医療AIのニュースが研究段階か承認済みかの見分け方は、医療AIニュースの読み方にまとめています。

よくある質問

Q. 麻酔が普及する前の手術には、どんな危険がありましたか。
A. 感染対策もまだ確立しておらず、手術の約8割で重い感染症が起き、患者の半数ほどが亡くなったとされます。

Q. なぜマサチューセッツ総合病院の実験が「最初」とされているのですか。
A. 麻酔の試みは、それ以前にも記録されています。この実験は医師たちの前で公開され、記録も残ったため、近代麻酔の始まりとされています。

出典

  1. History of general anesthesia - Wikipedia(参照 2026-08-12)
  2. A Short History of Anaesthesia Before 1846 - ESAIC(欧州麻酔・集中治療学会)(参照 2026-08-12)
  3. Edward Gilbert Abbott - Wikipedia(参照 2026-08-12)

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