運送会社がいま機器やAIに任せられるのは、点呼と、整備費などの請求書の入力です。 業務前の点呼は、国が認定した機器で自動化できます。一方、2026年4月の法改正で、作らなければならない書類は増えました。

この記事でわかること

  • 自動点呼で体温や血圧に異常が出て点呼が中断したとき、再開するかは運行管理者が決めます
  • 実運送体制管理簿は、必要な事項が記載されていれば、今の配車表をそのまま使えます
  • 書類の下書きと点検も、AIに任せる会社が増えるとみています
この記事の目次(8節)
  1. 書面交付と管理簿作成、貨物利用運送事業者にも義務
  2. 点呼は認定機器で自動化できる
  3. 整備費の請求書、AIが費目を仕分け
  4. 運送会社の事務を4つに分けると
  5. 書類の下書きと点検にもAIが広がりそう
  6. 業務の判断と運賃交渉は人が担う
  7. 運転者の個人情報の取り扱い
  8. 導入前の確認事項

書面交付と管理簿作成、貨物利用運送事業者にも義務

トラック運送事業者には、2025年4月から、運送契約の書面交付と実運送体制管理簿の作成が義務づけられています。 2024年に成立した物流関係の法改正によるものです。その後、2025年6月にトラック適正化二法が成立し、2026年4月1日にその一部が施行されました。国土交通省はこの改正後の法律を「R8改正トラック法」と呼んでいます。13

2026年4月に施行された主な点は3つです。23

  • トラックの運送を利用する貨物利用運送事業者も、委託先への書面交付が義務になりました。元請けになる場合は、真荷主との書面交付と管理簿の作成も義務です
  • 元請けからの再委託を2段階(二次請け)までに抑える努力義務が課されました
  • 国の許可を得ずに有償で運ぶ白ナンバーのトラック(白トラ)に運送を委託した荷主等も、処罰の対象になりました

協力会社に運送を頼むことの多い元請けでは、作る書類がさらに増えています。

書面に書く6つの事項

真荷主とは、メーカーや卸のように、自社の事業のために運送を頼む者です。運送事業者と利用運送事業者は含みません。真荷主と運送契約を結ぶときは、次の事項を書いた書面を互いに交付します。3

  1. 運送の内容と対価
  2. 荷役作業や附帯業務の内容と対価
  3. 有料道路利用料や燃料サーチャージなどの料金
  4. 当事者の名称と住所
  5. 運賃・料金の支払方法
  6. 書面の交付年月日

積込みや取卸しの料金は、原則として運賃とは別建てにします。交付した書面の写しは1年間保存します。相手の承諾を得れば、メールの本文に法定事項を書いて送る方法も認められています。3

管理簿に配車表を使える

実運送体制管理簿は、真荷主から1.5トン以上の貨物を引き受け、他の事業者の運送を利用したときに作ります。記載するのは、実運送事業者の名称、貨物の内容と区間、請負階層の3つです。運送が完了した日から1年間、営業所に備え置きます。3

国土交通省のQ&Aでは、管理簿に決まった様式はなく、必要な事項が記載されていれば既存の配車表も使えるとしています。検索や管理がしやすいとして、電子データでの作成・保存を勧めています。3

点呼は認定機器で自動化できる

点呼は原則として対面ですが、国が認定した機器を使う自動点呼も認められています。 運行管理者は、運転者ごとの点呼の予定をあらかじめシステムに入力しておきます。運転者は予定に沿って点呼を受け、運行管理者は後から結果を確認します。4

国土交通省の一覧では、2026年9月30日時点で、業務前の自動点呼で28件、業務後の自動点呼で34件の機器が認定されています。5 業務後の自動点呼と配車計画の自動化は、配車計画と点呼をどこまで任せられるかの記事で詳しく取り上げました。

異常があれば中止か中断

自動点呼では、生体認証で本人確認ができてから、アルコール検知器などが作動します。酒気帯びが検知されれば点呼は中止されます。体温や血圧が平時の値と異なれば、点呼は中断されます。どちらの場合も運行管理者に通知が届き、中断した点呼は、運行管理者が運行の安全を確保できると判断したときに再開できます。4

点呼の結果はシステムに自動で記録され、1年間保存されます。点呼記録簿への記入の手間が減り、記録の管理も確実になります。4

例えば、早朝の出庫が多い運送会社なら、午前4時台の点呼を機器に任せられます。ただし、異常が出たときに運行管理者が対応できる体制は整えておく必要があります。機器が故障したときに対面点呼を行う担当者も、決めておく必要があります。4

整備費の請求書、AIが費目を仕分け

経理の入力作業でも、AIが使われ始めました。アセンドは2026年8月20日、配車計画・原価管理のクラウド型システム「ロジックス」に、AI-OCRで整備費の請求書を読み取る機能を加えたと発表しました。トラックの点検・整備費の請求書や整備明細から「何の費用か」「どの車両か」を読み取り、費目を自動で仕分けます。先行導入企業での実証では、入力時間が従来より最大70%減ったとしています。6

整備工場が見積もりや点検整備記録簿などの事務作業にAIをどう使うかは、自動車整備のAI活用の記事にまとめました。

運送会社の事務を4つに分けると

運送会社の事務を4つに分けてみると、機器や製品がすでにあるのは点呼と請求書の入力です。

運送会社の事務を4つに分けると 運送契約の書面 配車と 実運送体制管理簿 点呼 請求と支払い 法定事項は6つ 相手の承諾があれば メールで交付できる 様式は自由 配車表や 電子データで作れる 国が認定した機器で 業務前・業務後とも 自動化できる 整備費の請求書を AI-OCRで 仕分ける製品がある 自動化できる機器や製品がある 様式は自由。電子での交付・保存を認める
運送会社の事務を4つに分けた図。色を付けた2つは、自動化できる機器や製品がすでにある分野です。点線の2つは、様式が自由で、電子での交付や保存が認められている分野です。
分野いまの決まりや作業電子化・自動化の手段
運送契約の書面6つの法定事項を書き、写しを1年間保存する相手の承諾があれば、メールの本文で交付できる3
配車と実運送体制管理簿3つの事項を記録し、1年間備え置く様式は自由で、配車表や電子データで作れる3
点呼原則は対面。記録は1年間保存する認定された機器で、業務前・業務後とも自動化できる45
整備費などの請求書の入力請求書を見て、費目ごとに手で入力する整備費の請求書をAI-OCRで仕分ける製品がある6

書面と管理簿は様式が自由で、電子メールでの交付や電子データでの保存が認められています。AIで下書きや点検をするための土台は、すでにあるといえます。

書類の下書きと点検にもAIが広がりそう

ここからは筆者の見立てです。 書面と管理簿は様式が自由なので、下書きと点検をAIに任せる会社が増えるとみています。

記載漏れをAIで確認

運送依頼のメールは、荷主ごとに書式がまちまちです。6つの法定事項がそろっているかを生成AIで確認し、足りない項目を担当者に知らせる使い方が考えられます。配車表のデータから管理簿の3つの事項を抜き出す作業も、プログラムで自動化しやすいでしょう。

運賃と原価の記録が交渉の材料に

R8改正トラック法のうち、許可の更新制と、国土交通大臣が定める「適正原価」を下回る運賃・料金の制限は、公布から3年以内に施行される予定です。3 施行後は、便ごとの運賃と、燃料費や整備費などの原価を並べた資料が、荷主との運賃交渉の材料になるでしょう。整備費の仕分けのような手近な作業から、データをそろえておくとよいはずです。

業務の判断と運賃交渉は人が担う

自動点呼でも、点呼は運転者が所属する営業所の運行管理者が行ったものとみなされます。中断した点呼を再開して業務に就かせるかを判断するのも、運行管理者です。4 機器やAIが担うのは、確認して記録し、異常を知らせるところまでです。

荷主との運賃交渉や、協力会社を選ぶ判断も、人の仕事として残ります。AIが書類をそろえても、どの仕事をいくらで引き受けるかは経営者が決めます。

運転者の個人情報の取り扱い

自動点呼では、生体認証に使う情報や体温・血圧の測定結果を扱います。事業者は、その取り扱いについて、事前に運転者の同意を得る必要があります。4

点呼の記録や運転者の情報を生成AIに入れる場合は、さらに注意が要ります。個人情報保護委員会は、生成AIに個人情報を入力する場合、利用目的の範囲内かを十分に確認するよう求めています。7 入力してよい情報の線引きは、IPAが挙げる生成AIのセキュリティ対策が参考になります。

導入前の確認事項

機器やAIに任せる前に、その結果を誰が確認するかを決めておくと、現場が混乱しにくくなります。

手間のかかっている仕事導入前に確認すること
早朝の点呼利用中の運行管理システムに、認定を受けた自動点呼の機能があるか。機器の故障時に対面点呼を行う人を決めてあるか
運送契約の書面荷主ごとの運送依頼に、6つの法定事項がそろっているか。メールで交付することに相手の承諾を得たか
実運送体制管理簿配車表に、実運送事業者の名称・貨物の内容と区間・請負階層の3つの事項があるか
整備費などの請求書の入力読み取った結果を、誰がどの頻度で見直すか

どの仕事も、始める前に今の手順を書き出しておくと、機器やAIに任せる範囲を決めやすくなります。請求書をAIで確認する仕組みは、経費精算のAIチェックの記事で導入の段階ごとに整理しています。

早朝の点呼の負担が大きい会社は、まず認定機器の一覧に、利用中のシステムのメーカーが載っているかを確認してください。協力会社に運送を頼むことが多い会社なら、書面と管理簿から手を付けると、記載漏れを減らせるかどうかを早く確かめられます。

出典

  1. 国土交通省「物流:トラック適正化二法について」(参照 2026-09-30)
  2. 国土交通省「令和8年4月1日から改正トラック法(貨物自動車運送事業法)が施行されます」(トラック運送事業者の皆様へ)(参照 2026-09-30)
  3. 国土交通省「改正貨物自動車運送事業法 Q&A」(令和8年3月31日時点)(参照 2026-09-30)
  4. 国土交通省「遠隔点呼・自動点呼 解説パンフレット」(令和7年11月発行)(参照 2026-09-30)
  5. 国土交通省「運行管理高度化ワーキンググループ(旧:運行管理高度化検討会)」(遠隔点呼、自動点呼の実施に関する情報・認定を受けた自動点呼機器一覧)(参照 2026-09-30)
  6. アセンド株式会社「生成AIの活用により、点検・整備費のデータ入力工数を70%削減」(2026年8月20日)(参照 2026-09-30)
  7. 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日)(参照 2026-09-30)

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