要点
対象:AIカメラを勧められた小売店の店長
- 万引きの認知件数は3年続けて増加
- 顔識別を使うなら、そのことも知らせる
- 防犯の画像を販促に使うなら同意が要る
2025年の万引きの認知件数(警察が把握した件数)は10万5,135件でした。刑法犯の認知件数全体の13.6%にあたります。1
人手の少ない店では、売場を見回る余裕がないことも多いでしょう。そうした店に向けて、カメラの映像をAIで解析して知らせる「AIカメラ」の提案が増えています。
ただ、AIカメラが見つけるものは製品ごとに違います。筆者は、営業の話を聞く前に、AIに何をさせたいかを決めておくべきだと考えます。AIに何をさせるかで、来店客への知らせ方も、店員の動き方も変わるからです。
万引きは3年続けて増えた
警察庁の「令和8年版警察白書」によると、万引きの認知件数は2010年以降は減る傾向にありましたが、2023年から3年続けて増えました。1
白書は、化粧品や医薬品などを大量に万引きして海外で転売する組織的な例にも触れています。ドラッグストアの大量万引きについて、警察庁は防犯対策の指針を作りました。1
AIカメラが見つけるもの
この記事では、AIカメラを、見つけるものの違いで3つに分けて紹介します。
不審な動きを見つけて店員に知らせる
2018年に NTT東日本とアースアイズが発表した「AIガードマン」は、来店客の頭や体の骨格の動きから万引きが疑われる行動を見つけ、店員のスマートフォンに場所を知らせて静止画を送る仕組みでした。2
知らせを受けた店員が声をかけ、アプリの「声掛け完了」ボタンを押す流れです。先行導入した店では、万引きの被害額が約4割減ったと報じられました。2
発表時の価格はいずれも税別で、カメラが1台23万8,000円(設置費は別)、クラウドの利用料が1台月4,000円、映像の保存が月500円からでした。2
現在の価格は、同社のウェブサイトには載っていませんでした。アースアイズは現在、既存の防犯カメラを使う「AIガードマン the server」も案内しています。3
決めた場所を通った人数を数える
セーフィーのカメラ「Safie One」は、有料オプション「AI-App 人数カウント」を使うと、設定した線を通った人数や、売場の一角に入った人数を数えられます。4
販売元のキヤノンマーケティングジャパンの製品ページによると、このオプションは月5,000円(税別)です。録画は7日分の保存で月1,200円(税別)からで、録画プランの最低利用期間は12か月です。5
人数カウントと7日分の録画を合わせると、カメラ1台で月6,200円(税別)からになる計算です。カメラ本体は店が決める価格(オープン価格)で、ページには載っていません。5
セーフィーの利用マニュアルには、マネキンや、鏡・窓に映った人を人として数えることがある、と書かれています。4
棚の欠品を見つける
KDDIとローソンは2025年10月、店内を回って棚の欠品を見つけるロボットの実証実験を、ローソン S KDDI高輪本社店で始めると発表しました。ロボットのカメラで棚を撮り、AIで欠品を見つける計画でした。6
実証の結果は、この記事を書いた時点では確かめられませんでした。確かめられたのは、ローソンが1店で実証実験を始めると発表したところまでです。
顔識別を使うと、店がすることが増える
個人情報保護委員会は、カメラ画像の扱いについてQ&Aで考え方を示しています。それによると、顔識別を使うかどうかと、画像の使い道で、店がすることが変わります。7
防犯のために撮るだけなら
顔識別を使わない従来の防犯カメラなら、設置の様子から防犯目的と分かる限り、利用目的の通知や公表は不要と考えられる、とQ&Aはしています。7
ただし、カメラがあると気づきにくい場所なら、掲示などで気づけるようにしなければなりません。カメラだと見て分かる場所でも、作動中であることを掲示するのが望ましい、としています。7
見て分かる場所に防犯カメラが付いているだけなら、利用目的の通知や公表は要らないと考えられ、貼り紙は「望ましい」にとどまります。AIカメラに替えて顔識別を使い始めると、ここが変わります。
顔識別を使うなら
撮った人の顔の特徴を取り出し、登録した人の顔と照らし合わせる仕組みを、Q&Aは「顔識別機能付きカメラシステム」と呼びます。7 営業では「顔認証」と呼ばれることもあります。
外から見ても顔識別を使っているとは分からないので、店は利用目的を知らせるか公表しなければなりません。利用目的には、犯罪の防止だけでなく、顔識別を使っていることも書く必要があります。7
照合に使う顔のデータベースに誰を登録するかは、目的に必要な範囲を超えない基準にしなければなりません。登録する人は、防ぎたい犯罪をする可能性が高い人に厳しく絞るのが望ましい、としています。7
運用する店の名前・利用目的・問い合わせ先などは、入口やカメラの近くに掲示するのが望ましいとされています。7
登録した顔のデータを店が管理していて、開示や削除ができるなら、本人から開示などを求められたときに応じる必要があります。7
性別・年齢や人の流れだけを使うなら
性別や年齢のデータや、人の形を影絵に置き換えて動きだけを記録したデータ(人流データ)は、元の画像などと簡単に照らし合わせられる場合を除いて、個人情報に当たりません。7
ただし、そのデータを取るためにカメラで撮る時点では、撮られていると気づけるようにする必要があります。Q&Aは、カメラが作動中であることの掲示などを例に挙げています。7
防犯のために撮った画像を販促に使うなら
防犯のために撮ったカメラ画像や顔のデータを、マーケティングなどの商業目的に使うには、あらかじめ本人の同意が要ります。7
顔のデータのように個人データに当たるものは、保存期間を決め、要らなくなったら遅れずに消すよう努める決まりです。7
営業担当者に「顔認証もできます」と言われたら、注意が必要です。使うなら、利用目的の公表や登録の基準づくりが要るからです。
クラウドのサービスでは、顔の映像が海外のデータセンターに送られることもあります。受付の例をGeminiのアバターを受付に置く記事で取り上げました。
知らせを受けて動く人を決めておく
AIカメラは不審な動きや欠品を見つけますが、声をかけたり品出しをしたりするのは店員です。店員が1人でレジに立つ時間帯に知らせが来ても、すぐには動けません。
小さな店では、防犯より入店客を数える使い方の方がまず役に立つと筆者はみています。数える使い方なら、あとで数字を見れば済むからです。時間帯ごとの入店客の数が分かれば、レジや品出しの人の配置を考える材料になります。
防犯に使うなら、知らせを受けた人が声をかけるのか、店長に連絡するのか、記録だけ残すのかを、時間帯ごとに決めておく必要があります。
店の仕事でAIに任せやすいのは、カメラだけではありません。飲食店の例では、飲食店のAI活用の記事で電話注文の受付を挙げました。
AIカメラを試す前に確かめたいこと
| カメラの使い方 | 最初に確かめること |
|---|---|
| 不審な動きを見つけて知らせる | 知らせを受け取る人を、時間帯ごとに決められるか。顔識別の機能を使うか |
| 入店客を数える | 数えたい入口・レジ前・棚がカメラに映るか。マネキンや鏡が映り込まないか |
| 棚の欠品を見つける | 見つけた欠品を、誰がいつ補充するか。棚の全体が映る位置にカメラを付けられるか |
| 撮った画像を残す | 何日分を残すか。防犯以外には使わない、と店で決めたか |
上の3行は、AIが見つけたあとの人の動きの確認です。最後の行は、どの使い方でも要る確認です。
個人情報保護法の改正と施行の時期は、改正法の5項目の記事にまとめています。
まずはAIに任せたいことを1つ選び、その結果を誰が見て動くかまで書き出してみてください。
出典
- 警察庁「令和8年版 警察白書」第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動(参照 2026-10-09)
- ITmedia NEWS「人工知能が『万引きGメン』に 被害額は4割減」(2018年5月28日)(参照 2026-10-09)
- アースアイズ「万引きを見つけて知らせる[AIガードマン]」(参照 2026-10-09)
- セーフィー「AI-App 人数カウント ご利用マニュアル」(2025年12月25日)(参照 2026-10-09)
- キヤノン「Safie One」製品ページ(価格)(参照 2026-10-09)
- Impress Watch「KDDIとローソン、AI×ロボットで店舗DXをさらに加速」(2025年10月28日)(参照 2026-10-09)
- 個人情報保護委員会「カメラに関するQ&A」(「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&Aより抜粋)(参照 2026-10-09)

