要点
対象:社内の決まりを毎日聞かれる総務の人
- 質問20問中18問で正しい文書が1番目
- 答えが無い質問にも近い文書を返す
- 候補を3件見せて人が選ぶ形に(筆者)
Googleは2026年10月6日(米国時間)、言葉の意味で文書を探すためのAIモデル「EmbeddingGemma 2」を無料で公開しました。文章を書くAIではなく、質問と文書の意味がどれだけ近いかを測る、検索用のAIです。1
この記事の目次(4節)
社員の聞き方と、社内の文書の書き方は、たいてい違います。「給料はいつ入る?」と聞かれても、文書の題は「給与の振込日」です。言葉が重ならなくても意味で探せるなら、総務に届く「あれはどこに書いてある?」の手間を減らせるかもしれません。
日本語の文書でどこまで当たるのかを、筆者が工務店を想定した文書で試しました。社内に入れるには、ふつうは開発会社などに頼むことになるので、頼む前に知っておきたいことも書きます。
何をするAIか
文章を数値の並びに変換する
EmbeddingGemma 2は、文章を数値の並びに変換します。質問と文書をそれぞれ数値の並びにして近い順に並べれば、言葉が違っても内容の近い文書が見つかります。1
写真・動画・音声も探せますが、社内の文書を探すだけなら、そのための一部だけを動かせば足ります。1
ネットにつながずに動かせる
Googleは、スマートフォンやパソコンの中で動かせることを売りにしています。インターネットにつながずに動かせ、手元で処理することはデータを守る助けになる、と説明しています。1
ライセンス(利用条件)はApache 2.0で、商用でも無料で使えます。1
モデルカード(Googleの説明書き)は、100を超える言語に対応する一方、言語によって性能に差が出ることがあるとしています。2
日本語の文書でどこまで当たるかは、発表にも、筆者が読んだ日本の報道にも書かれていませんでした。14
工務店を想定した文書20件で試す
試したこと
2026年10月10日に、このサイトの記事を書いている計算機で動かしました。CPU(計算を受け持つ装置)は4コアで、画像処理用の装置(GPU)はありません。
文書だけを扱う設定にし、モデルカードのとおり、質問と文書の頭にそれぞれ決まった言葉を付けて使いました。2
文書は、従業員15人ほどの工務店を想定して筆者が作った20件です。有給休暇の申請、経費の精算、社用車の使い方、見積書の作り方、雨の日の作業などを、2〜3文ずつ書きました。
質問も20問作りました。19問は、文書と同じ言葉を使わない言い方にしています。冒頭の「給料はいつ入る?」もその1つです。残る1問は「名刺がなくなりそう」で、文書と同じ「名刺」を使いました。
結果
EmbeddingGemma 2は、20問のうち18問で、正しい文書を1番目に挙げました。残りの2問も2番目でした。
比較のため、キーワード検索のように、質問と文書の文字がどれだけ重なるかで探す方法も試しました。こちらで1番目に挙げられたのは6問でした。
「会社の軽トラを借りたいときの決まり」で「社用車の使い方」を出すことも、「施主さんが怒って電話してきた」で「お客様からの苦情」を出すことも、文字で探す方法ではできませんでした。
1番目を逃した2問では、どちらも、質問と似た言葉を含む別の文書が先に出ました。
「自腹で払ったガソリン代を返してほしい」では、給油のことが書かれた「社用車の使い方」が1番目でした。
「お客さんに出す金額の書類、いつまで有効にする?」では、「お客様」で始まる個人情報の文書が1番目でした。
目立つ言葉が似ていると、そちらに引っ張られるようです。
保存に要る容量を抑える設定もあります。容量を3分の1にすると17問、6分の1にすると13問が1番目で、当たる数が減りました。2
答えが無い質問にも、近い文書を返した
文書に答えが無い質問も3問試しました。「退職金はいくらもらえる?」には「慶弔の届け」を、「会社の忘年会はいつ?」には「健康診断」を、「お客様の家の鍵を預かったときの決まり」には個人情報の文書を、それぞれ1番目に挙げました。
EmbeddingGemma 2は、質問と文書の近さを点数で返します。点数が大きいほど近いという意味です。正しい文書を1番目に挙げた18問は0.66〜0.81、答えの無い3問は0.65〜0.72で、ほぼ同じ範囲に入っていました。
点数を見るだけでは、答えが無いことを見分けられませんでした。筆者は、このAIに任せるのは「探す」ところまでにし、答えを決めるのは人に残すのがよいと考えます。文書の題名が3件並べば、目当ての文書が無いことに、人ならたいてい気づくはずです。
かかった時間と、要るメモリ
最初にAIモデルのファイル(約1.4GB)をダウンロードしました。文書20件を数値の並びに変換するのに約1.4秒、同じ20件を10回繰り返して200件分にすると約10秒でした。動かしているあいだは、約2GBのメモリを使いました。
Googleは、スマートフォン(Pixel 11 Pro)向けに軽くし、文字だけを扱う場合は、使うメモリが約191MBで済むとしています。今回は軽くしていないので、約2GBでした。1
使いどころ
社内の決まりや手順書、過去の見積書のように、文書はあるのに探すのに手間がかかる場面に向きます。社員がふだんの言葉で聞いても、近い文書を挙げられます。
質問への答えを文章で返すには、文章を書くAIと組み合わせます。探した文書を渡して答えを書かせる仕組みは、院内マニュアルをAIに扱わせる記事で説明しています。3
答えを書くAIまで社内で動かすなら、無料で使える日本語のAI(ELYZA)のような選択肢もあります。文書を外のサービスに預けてもよい会社なら、Geminiのノートブックに社内資料を読ませる方法もあります。
点数がいちばん高い文書を、そのまま答えとして社員に返す使い方は、避けたほうがよいと筆者はみています。
開発を頼む前に確かめること
文書を外に送らない作りか
検索用のAIは社内で動かせても、答えを書くAIなどを組み合わせると、その部分で文書が外のサービスに送られる作りもありえます。どこを社内で動かし、どこに何を送るのかを、頼む相手に聞いておきましょう。
答えが無いときにどう見せるか
答えが無い質問への対応を、先に決めておきましょう。候補を3件、文書の題名つきで見せる形なら、社員が自分で見分けられます。
自社の文書で当たり具合を測ったか
この記事の数字は、筆者が作った短い文書20件での結果です。実際の社内文書は長く、言い回しも会社ごとに違います。社員がふだん聞く質問で、何問で正しい文書を1番目に挙げるかを、頼む相手に測ってもらうと安心です。
安全対策は誰が用意するか
モデルカードには、Googleが定める禁止事項(Gemma Prohibited Use Policy)に従うことが書かれています。
検索で取り出したものから不適切なものを除くといった安全対策は、開発・導入する側が見極めて用意するものだとしています。2
社員からよく聞かれる質問を、ふだんの言い方のまま20問書き出しておくと、頼むときにそのまま当たり具合を測る材料になります。
出典
- Google「EmbeddingGemma 2」(The Keyword・2026年10月6日)(参照 2026-10-10)
- google/embeddinggemma-2 のモデルカード(Hugging Face)(参照 2026-10-10)
- Google AI for Developers「EmbeddingGemma」(2026年10月6日更新・EmbeddingGemma 2の項)(参照 2026-10-10)
- PC Watch「写真も動画も声もまとめて0.74Bで検索。ローカルRAG向け『EmbeddingGemma 2』」(参照 2026-10-10)
- Google「Gemma Prohibited Use Policy」(参照 2026-10-10)

