要点

対象:自社のサイトや問い合わせフォームを持つ会社

  1. 問い合わせフォームとログイン画面も標的
  2. 制作会社と確かめたい5項目
  3. 一定の漏えいは3〜5日以内に速報

日本企業のサイトの問い合わせフォームに、AIエージェントが約210件を立て続けに送っていました。別の攻撃では、ログインの総当たり(パスワードを片端から試すこと)を約250件試しています。1

この記事の目次(5節)
  1. 9月前後から相次ぐ国内の情報漏えい
  2. AIエージェントかどうかを見分ける仕組み
  3. 3つのIPアドレスからの攻撃
  4. 自社のサイトで確かめたい5項目
  5. 攻撃の手間が減れば、小さな会社も調べ上げられる

AIエージェントは、自分でサイトを開き、次の操作を決めながら動くAIです。

クラウド型WAF「Scutum」の開発者が観測し、10月14日に公表しました。WAFは、サイトへの攻撃を手前で止める仕組みです。攻撃元のIPアドレスは、少なくとも3つありました。1

攻撃者がAIを使っていても、対策の基本は大きくは変わりません。1 サイトを制作会社に任せているなら、まず直近1か月のアクセスログを点検してもらってください。3

9月前後から相次ぐ国内の情報漏えい

2026年9月前後から、国内の企業や団体のシステムで、不正アクセスによる個人情報の漏えいが相次いでいます。国内のセキュリティ事故の対応を支援するJPCERT/CCは、10月8日に注意喚起を出しました。2

マクニカは、Webシステムから個人情報が漏れたと会社が公表した事案のうち、この一連の漏えいと似た特徴のものを数えています。今年は119件です。うち81件は7月以降でした。3

10月上旬の時点では、マクニカもサイバーセキュリティクラウドも、AIが使われた直接の痕跡は見つけていませんでした。それでも両社とも、AIが使われた可能性はあると見ていました。34

AIエージェントかどうかを見分ける仕組み

AIエージェントは、サーバーの応答を読んで次の手を変えます。Scutumの開発者は、その性質を手がかりに、AIエージェントかどうかを見分ける仕組みを作りました。1

開発環境で8種類のAIモデルを試したところ、すべて検出できました。そのうえで、10月10日夜から本番環境での監視を始めています。1

この仕組みで見つかった攻撃元は、AIエージェントとみてほぼ間違いありません。ただし、見逃しはありえます。見つかった3つのIPアドレスのほかにも、AIエージェントによる攻撃を受けているサイトがあるかもしれません。1

3つのIPアドレスからの攻撃

Scutumの開発者は、3つのIPアドレスを公表しています。手口はそれぞれ違い、別々の攻撃者かもしれません。1

攻撃元のIPアドレスアクセスの数(概数)何をしたか
1つ目(38.54.56[.]121)1,000件管理画面や「.git」など、本来は外に公開しないファイルがあるかを探しただけ
2つ目(185.196.220[.]130)1,440件弱点を探し、データベースへの攻撃を試したあと、問い合わせフォームへ連続送信した
3つ目(192.236.229[.]229)12,450件8時間弱、ツールを替えながら既知の弱点を試し、ログインの総当たりもした

IPアドレスの「[.]」は「.」のことです。誤ってリンクにならないよう、Scutumの公表でもこう書かれています。2つ目のIPアドレスからの攻撃は、次の順に進みました。1

2つ目のIPアドレスからの攻撃の段階 弱点を探す段階 攻撃の段階 01 02 03 04 05 探す通信の1回目 探す通信の2回目 約800か所のページを順に探す データベースへの攻撃を試す 問い合わせフォームへ連続送信 約330件 約70件 約800件 約30件 約210件
2つ目のIPアドレスからの攻撃は、5つの段階を順に進みました。弱点を探す通信を3回くり返したあと、データベースへの攻撃を試し、最後に問い合わせフォームへ連続送信しています。件数は、Scutumが示した段階ごとの概数です。

問い合わせフォームとログイン画面

3つ目のIPアドレスの攻撃者は、画面を表示しないブラウザ(ヘッドレスブラウザ)を使い、パスワードの再設定や新規登録の画面も開いていました。1

問い合わせフォームとログイン画面は、サイトに弱点がなくても、外から誰でも使える入口です。送信やログインの回数に上限がなければ、攻撃者は何度でも試せます。

自社のサイトで確かめたい5項目

JPCERT/CCとマクニカの対策から、会社のサイトに関わるものを5つ挙げます。23

確かめること見るところ
アクセスログ直近1か月に、同じIPアドレスから大量のアクセスが来ていないか。エラーが急に増えていないか。存在しないファイルを探す動きがないか
管理画面社外から開けてしまわないか。業務で使わない管理機能を公開したままにしていないか
ログイン画面ログインやパスワードの再設定に、試せる回数の上限を設けているか
ソフトのバージョン弱点(脆弱性)の知られた古いバージョンのままでないか。修正済みのアップデートを入れているか
残っているデータ保存の期間を過ぎたデータや、使い終えたデータを残していないか

自社でサイトを更新していなければ、この表を制作会社に見せて、どこまで済んでいるかを聞くのが早道です。怪しいアクセスが見つかったら、制作会社にログを消さずに残してもらい、ログが残っている範囲でさかのぼって調べてもらいます。3

ログと突き合わせるIPアドレスは、上の表の3つのほか、JPCERT/CCの注意喚起とマクニカの記事にも載っています。正規の利用者が含まれることもあり、アクセスがあっただけでは攻撃を受けたとは言い切れません。23

個人情報が漏れていたとき

個人データ(顧客の名簿など)が漏れたか、漏れたおそれがあり、次のどれかに当たるときは、個人情報保護委員会への報告が要ります。5

  • 要配慮個人情報(病歴など)が含まれる
  • 不正に使われると、お金の被害が出るおそれがある
  • 不正の目的で行われたおそれがある
  • 1,000人分を超える個人データが漏れた

報告は2回です。まず速報を、気づいた日から3〜5日以内に出します。そのあと、詳しい確報を30日以内に出します。5

不正の目的のおそれがあるときは、確報の期限が60日以内になります。5 速報と確報の流れは、社員が生成AIに個人情報を入力した場合の記事にも書きました。

攻撃の手間が減れば、小さな会社も調べ上げられる

AIエージェントを使った攻撃で通販の会社が侵入された報告は、10月6日のAIニュースで紹介しました。Scutumの開発者は、今後はほぼすべての攻撃者がAIエージェントを使うようになるとみています。1

ここからは見立てです。手間が減れば、攻撃者は小さな会社のサイトも、大きな会社と同じように念入りに調べるようになると考えています。

それでも、事前に漏れなく弱点をふさいでおくことが基本です。必要なら、攻撃を見分ける性能の高いWAFを入れるのも有効です。1

中小企業がセキュリティ対策に取り組むと自ら宣言する制度もあります。申し込み方はSECURITY ACTIONの記事にあります。

上の表の5項目を、制作会社と一度確かめておくと安心です。

出典

  1. Scutum技術ブログ「AIエージェントによるウェブサイトへの攻撃の注意喚起」(2026年10月14日)(参照 2026-10-15)
  2. JPCERT/CC「直近で相次いでいる国内組織における不正アクセスに関する注意喚起」(2026年10月8日公開・10月9日更新)(参照 2026-10-15)
  3. マクニカ セキュリティ研究センター「相次ぐWEBシステムからの情報漏洩事案について」(2026年10月7日)(参照 2026-10-15)
  4. サイバーセキュリティクラウド「国内で相次ぐ不正アクセス、AIエージェントによる攻撃の可能性」(2026年10月9日)(参照 2026-10-15)
  5. 個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」(参照 2026-10-15)