内閣府、デジタル庁、経済産業省は10月2日、AIを開発・提供・利用するうえで妨げになっているルール(規制や制度)について、情報を募ると発表しました。13

この記事の目次(5節)
  1. 送り方と書き方
  2. 前回寄せられた610件の分類
  3. 前回の募集のあと、国が決めたこと
  4. 個人情報で迷ったら
  5. 困りごと別の相談先

受け付けは10月19日から30日の午後5時までです。法律だけでなく、省庁が法律の運用を示す通知や通達も対象です。AIを作る会社だけでなく、使うだけの会社やお店も送れます。1

内閣府は2〜3月にも同様の募集をし、610件の情報が寄せられました。国の資料の図を筆者が読むと、禁止されているという理由は少なく、何を満たせば法律上問題ないのか分からないという理由が最も多くなっていました。2

筆者の見方では、使えない理由が禁止ではなく、基準があいまいなことにある場合があります。それなら法律を変えなくても、国が解釈をはっきり示せば解決できるかもしれません。

ルールが分からずにAIを使うのをやめておいた経験も、送る価値があるはずです。

規制の見直しを話し合う政府の会議(規制改革推進会議)の6月の資料は、法令の解釈や運用をガイドラインなどで明確にすることを挙げています。7

送り方と書き方

情報は、内閣府の募集のページの専用フォームから送ります。フォームは、受け付けが始まる19日から使えます。1

どのルールで止まったのか分からなくても、AIに任せたかった仕事の流れと、何が不安でやめたのかを具体的に書くとよいでしょう。19日までにメモしておくと、送るときに迷いません。

たとえば、「見積書づくりをChatGPTに任せたかったが、顧客の名前を入力してよいか分からず、やめた」といった内容です。取引先の名前や顧客の個人情報は、書かないほうが安全です。

送った内容は、関係する省庁と共有されたり、詳しく聞くために内閣府などから連絡が来たりすることがあります。募集のページには、送った人に個別に返事をするとは書かれていません。1

内閣府などは、寄せられた情報を、規制の見直しの議論などに生かすことも考えている、としています。1

前回寄せられた610件の分類

分類の結果は、6月29日の規制改革推進会議の資料で公表されました。分類したのは、寄せられた情報のうち、募集の趣旨に沿ったものや、規制や制度の見直しに関わるものです。2

理由(資料の区分名)件数(およそ)
何を満たせば適法で安全か、承認されるかが分からず、審査が進まない(基準欠如)330
ルールが人や従来のITを前提にしていて、AIを想定していない(制度未対応)230
禁止かどうか分からず、責任や監査を恐れて使えない(萎縮)180
確認や手続き、管理の負担が重く、割に合わない(過剰負担)110
AIの利用が禁止されていると解されている(禁止)40

資料は、分野と理由の組み合わせごとの件数を、数字ではなく図の色の濃さで示しています。表の件数は、筆者が色から読み取った値を理由ごとに足した、おおよその数です。29

資料は、1つの情報が複数の分野や理由に当たるときは、それぞれに数えています(延べ件数)。そのため、分類の対象を絞っていても、表の数を足すと610件を上回ります。2

理由とは別に分野ごとに見ると、筆者の読み取りでは、件数が多いのは個人情報の扱い、著作権、医療や薬の規制の順です。この3分野とも、基準が分からないという理由が多くなっています。2

前回の募集のあと、国が決めたこと

前回(2〜3月)の募集から10月の募集まで 01 2026年2月10日〜3月10日 前回の募集(内閣府) 610件が寄せられる 02 6月29日 規制改革推進会議が2026年の答申をまとめる 03 7月14日 人工知能基本計画(第Ⅱ期)を閣議決定 04 7月21日 答申をもとに規制改革実施計画を閣議決定 05 10月2日 内閣府・デジタル庁・経済産業省が今回の募集を発表 06 10月19日〜30日午後5時 内閣府の情報提供フォームで受け付け 内閣府・デジタル庁・経済産業省は、寄せられた情報を次の検討に生かすことも念頭に置いている 規制改革推進会議の審議/人工知能基本計画の今後の改定/省庁をまたいだ規制やルールの見直し
6月の答申と7月の実施計画は、前回と今回の募集のあいだに出ました。

6月29日の会議では、ルールの見直しについての提言(答申)もまとまりました。政府はこれをもとに7月21日、取り組む項目と期限をまとめた計画(規制改革実施計画)を決めました。51011

6月の資料は、前回の情報に関連する答申事項として、11項目などを挙げています。前回の情報がきっかけになったのかどうかは、書かれていません。2

その一つが、採用の仕事をAIで代わりに行うサービスについて、国の許可が要るかどうかと、許可を受けるための条件をはっきりさせる項目です。2

7月の実施計画によると、厚生労働省の指針に判断の基準はありますが、具体的な場面では判断が難しいという指摘や声があります。許可が要るかどうかの理解が事業者ごとに分かれ、事業者どうしの競争が不公正になっているという内容です。11

筆者は、これも基準が分からないという理由に当たる困りごとだとみています。

不動産仲介でも、国土交通省が、契約の前に行う重要事項の説明の書類作りなどにAIを使うときの、具体例や注意点をまとめる予定です。11 詳しくは不動産仲介のAI活用の記事で取り上げました。

個人情報で迷ったら

前回の分類は、個人情報の分野の課題を次のように定義しています。AIにデータを入力する段階などで個人情報保護法の解釈や適用がはっきりしないことや、法律を必要以上に厳しく当てはめることです。2

顧客の名前をChatGPTなどの生成AIに入力してよいかどうかは、まず社内で方針を決めておくと迷いません。どの情報なら入力してよいか、どのサービスを使うかを決めます。

法律上の注意点は、改正個人情報保護法(2026年7月成立)の記事で扱っています。

困りごと別の相談先

始めたい事業に規制がかかるかどうか、答えがほしいときは、別の制度があります。事業の計画を示して、前もって国に確かめる仕組み(グレーゾーン解消制度)です。4

正式に問い合わせれば、担当の省庁は原則1か月以内に回答することになっています。ただ、正式な問い合わせの前に、省庁と相談する期間があります。8

その相談から数えると、2024年6月から2026年3月までに受け付けた案件の2割ほどが、半年以上かかっています。8

困りごと相談先・やること
AIを使おうとして、ルールのせいで止まった今回の募集(10月19日〜30日)に送る
新しい事業が規制に当たるか、前もって知りたいグレーゾーン解消制度で国に確かめる
社内にAIの使い方の決まりがないAI事業者ガイドラインを参考に社内で決める

AI事業者ガイドラインは、AIを使うだけの会社も対象になる国の指針です。社内で決まりを作るときは、まず使うだけの会社にも求められる7項目に目を通してみてください。

出典

  1. 内閣府「AIの社会実装において、障害となる又は不十分な効果をもたらす規制・制度についての情報提供のお願い」(2026年10月2日発表)(参照 2026-10-06)募集の正式な対象は「障害となっている又は不十分な効果をもたらす規制・制度(法律、政令、省令、規則、告示、通知・通達等)」です。今回の募集は、7月14日に閣議決定された人工知能基本計画(第Ⅱ期)を受けたものです。3府省庁は、情報の使い道として、規制改革推進会議の審議、人工知能基本計画の今後の改定、府省庁をまたいだ規制・ルールの見直し・整備に向けた検討を挙げています。AIと関係のない規制・制度の要望は、規制改革・行政改革ホットライン(縦割り110番)で受け付けています。
  2. 規制改革推進会議(2026年6月29日)参考資料3「AIの社会実装において障害等となる規制・制度についての情報提供を踏まえた対応状況」(参照 2026-10-06)前回の募集は2026年2月10日から3月10日で、内閣府の規制改革推進室と人工知能政策推進室が担当しました。分類は資料2ページ目の図にあり、課題26項目と阻害要因8項目を縦横に並べています。阻害要因のほかの区分は、ルールに合わせた結果AIの強みが封じられる(機能抑制、約60)、法律上はできても業界団体などの自主規制で使えない(社会阻害、約30)、その他(数件)です。これらの数も筆者の読み取りです。
  3. CNET Japan「AI活用を邪魔する『国の規制』ありませんか? --政府が意見募集へ 専用フォーム開設」(2026年10月2日)(参照 2026-10-06)
  4. 消費者庁「グレーゾーン解消制度」(参照 2026-10-06)産業競争力強化法に基づく制度で、具体的な事業計画に即して、規制の適用の有無を前もって確認できます。
  5. 内閣府「第28回 規制改革推進会議 議事次第」(2026年6月29日)(参照 2026-10-06)
  6. 内閣府 科学技術・イノベーション「AI戦略 トピックス」(人工知能基本計画(第Ⅱ期)の閣議決定、2026年7月14日)(参照 2026-10-06)
  7. 規制改革推進会議(2026年6月29日)「AI時代に対応する規制・制度改革の在り方」(参照 2026-10-06)規制改革推進会議の6月29日の資料「AI時代に対応する規制・制度改革の在り方」は、見直しを検討する期限を前もって決めることも挙げています。2月26日の規制改革推進会議では、委員から、結論を得るまでに数年かかる進め方では、行政が企業のイノベーションの足を引っ張ってしまうという意見も出ていました。
  8. 規制改革推進会議(2026年6月29日)「AI時代に対応する規制・制度改革の在り方(参考資料)」(参照 2026-10-06)事前相談を含め、調整を始めてから180日以上たった案件は、2023年11月末時点で調整中の案件の4割でした。事前相談の受付件数を公表する仕組みができた後、2024年6月21日〜2026年3月31日に受け付けた125件では2割です。
  9. デジタル庁「(参考資料)ガバメントAI源内の展開状況」(2026年5月)(参照 2026-10-06)分類には、デジタル庁が政府の職員向けに用意した生成AI「ガバメントAI源内」が使われました。デジタル庁の2026年5月の資料では、全府省庁の職員が使えるよう、6月以降も順次広げるとしていました。
  10. 首相官邸「規制改革推進会議」(総理の一日、2026年6月29日)(参照 2026-10-06)高市早苗首相は6月29日の会議で、答申の提言を規制改革実施計画として速やかに閣議決定し、実行に移すと述べました。
  11. 内閣府「規制改革実施計画」(2026年7月21日閣議決定)(参照 2026-10-06)2026年の規制改革実施計画は7月21日に閣議決定されました。採用代行の項目は、AI採用代行サービスが職業安定法上の職業紹介に当たるか、有料職業紹介事業の許可が要るかを明確化するものです。判断が難しい具体的な場面として、AIがスカウトメールを作って送ることや、AIによる面接での自律的な質問や評価、AIによる問い合わせ対応が挙がっています。指針は、職業紹介事業者などが適切に対処するための告示(平成11年労働省告示第141号)で、いまは厚生労働省が担当しています。不動産の項目には、録画した動画で行う重要事項説明(ビデオ重説)を見るときに、宅地建物取引士(宅建士)の立会いが不要だと明確にすることも入っています。購入者が望み、質疑応答の機会の確保などの措置がとられている場合です。

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