エンジニアtypeは2026年10月5日付の記事で、プログラマーの和田卓人さん(t-wada)の「レビュー解体」を紹介しました。1 AIがコードを書く速さに人の確認が追いつかない問題への対策として、和田さんは、コードレビューが担ってきた役割を5つの工程に分けることを勧めています。1 レビューを機械に任せても、人がシステムを理解する役目までは手放せないとも述べています。1

この記事でわかること

  • 5つの工程のうち、自動で確かめられるものと、人に残るものの違い
  • 「認知負債」とは何か、2025年版のDORA報告は何を指摘したか
  • AIにコードを書かせている会社が、今週のうちに確かめておきたい3点
この記事の目次(4節)
  1. レビューの負担は調査にも表れている
  2. レビューの役割を5つの工程に分ける
  3. レビューを機械に任せても人に残る「理解」
  4. AIにコードを書かせている会社が確かめておきたい3点

レビューの負担は調査にも表れている

和田さんは、AIの書くコードの量と速さが人の処理を上回ったいま、最大のボトルネックは「コードレビュー」だと述べています。1 コードレビューとは、他の人が書いたコードを、リリース前に読んで確かめる作業です。

和田さんの見立てを裏づける調査もあります。 キッカケクリエイションが2026年2月に行ったインターネット調査では、業務でコードレビューを担当するITエンジニア322人のうち、86.3%が「レビュアーの負担が増えた」と答えました。2 レビューで問題として最も多く挙がったのは、「提出者本人がコードの内容を説明できなかった」で、49.5%でした。2

調査は1社が実施したもので、回答は自己申告です。 対象はレビュー担当者に限られます。バグの原因がAIの書いたコードかどうかも、回答者の判断です。2

レビューの役割を5つの工程に分ける

和田さんが挙げた5つの工程は、次のとおりです。1 右端の列は、筆者が職場の言葉に言い換えたものです。

工程和田さんの説明職場の言葉にすると
1 上流の仕様レビューAIで仕様の矛盾や抜けを洗い出し、設計の段階で直す作らせる前に、完成の条件を文章で確かめる
2 テスト駆動開発(TDD)先にテストを書かせ、そのテストを通るコードを書かせる完成の条件を、先にテストとして決めておく
3 型システムと制約によるガードレール型システムなどの静的な検査を、実行して確かめるテストに組み合わせる機械で見つけられる誤りは、機械に見つけさせる
4 ビジネスの影響度に基づくリスクマッピング(事業への影響の大きさによる色分け)影響の小さい領域はAIにレビューを委ね、すぐ元に戻せる体制にする影響の大きい部分だけ人が読み、小さい部分は戻せる準備をして任せる
5 継続的な理解の形成(理解を保ち続ける)AIとのやり取りやプロンプトの設計を、チームで見せ合う誰がどう指示して何が返ったかを、チームで共有する

1〜3はAIやツールに確かめさせる工程、4は人が読む場所を絞る工程、5は人の理解を保つ工程です。 5つ目は機械に任せられません。4つ目も、人が読む場所は残ります。

テストは先に書かせる

2つ目の工程でテストを先に書かせるのは、実装のあとに書かせると、AIが自分のコードに都合のよいテストを作ることがあるためです。1 先にテストを書かせてから実装させれば、そのテストが、人が確かめるときの基準になります。

型と静的解析は見落としを拾う

AIは、指示された範囲では正しく動くコードを書けても、システム全体への影響を見落とすことがあります。1 型システムは、型の食い違い(数字を入れる欄に文字を入れるなど)を実行前に見つける仕組みです。 静的解析は、実行せずにコードの誤りを調べるツールです。 この2つを自動テストに加えれば、AIが全体を見通せなくても、誤りを機械が見つけやすくなります。1

レビューを機械に任せても人に残る「理解」

和田さんは、技術的負債(直しにくいコードや設計)はAIで減りつつあるものの、別の負債が増えていると述べています。 別の負債とは「認知負債」です。1 人が自分でコードを書いていた頃は、書く過程でシステムの全体像が頭に入りました。 いまはAIが実装まで済ませてしまうため、AIが書く速さに理解が追いつかない、というのが和田さんの指摘です。1

DORA(開発チームの成果を調べる研究プログラム)の2025年版の報告は、AIが組織にもともとある強みも問題も増幅すると指摘しています。3 和田さんはこの報告を引いて、AIを入れれば全員の能力が上がるというのは幻想だと述べています。1

エンジニアtypeの記事は、1983年のベインブリッジ氏の論文「自動化の皮肉」も紹介しています。 自動化で人が操作する場面が減っても、機械が対応できないときは人が引き受けなければならず、その判断は平常時より難しくなるという内容です。1 論文の原文は確かめておらず、記事に書かれている範囲で紹介しています。

AIにコードを書かせている会社が確かめておきたい3点

以下は、和田さんの提案を筆者が読み替えたものです。 たとえば、AIに予約管理の画面や社内の集計マクロを作らせている会社は、次の3点を確かめてみてください。

  1. 完成の条件を先に書いたか。 予約が二重に入らない、金額の合計が合う、といった条件を、作らせる前にテストとして決めます
  2. 人が読む範囲を決めたか。 お金・個人情報・外部への送信に関わる部分は人が読み、見た目だけの部分はAIに任せます
  3. コードを提出した人が、その動作を説明できるか。 調査で最も多く挙がった問題は、提出者が説明できないことでした。止まったときに直せる人がいるかが問われます

AIにレビューさせる手順は、AIレビューの検証を扱った記事にまとめています。 検査が機能するかをわざと壊して確かめる方法は、故障注入の記事で紹介しています。 AI任せの開発の全体像は、AI駆動開発とバイブコーディングの違いで整理しています。

  • 外部の開発会社に頼んでいるなら、上の3点をそのまま発注先に確かめてみましょう
  • ノーコードのツールで作っているなら、1点目の完成の条件を先に決めるところから始めるのが現実的です
  • AIが書いたものを確かめられる人がいないなら、お金と個人情報に関わる部分の開発は、AIだけに任せないでください。先に確認する人を決めます

和田さんの5つの工程は、効果を測定した結果ではなく、プログラマー1人の提案です。 まずは影響の小さい部分で試すのが現実的です。

出典

  1. エンジニアtype「AIでコード生成は加速、でも人間の確認が追いつかない問題。t-wadaが示す「レビュー解体」という答え」(2026年10月5日)(参照 2026-10-06)
  2. キッカケクリエイション「AI生成コードのレビュアー負担に関する調査」(2026年4月21日・PR TIMES)(参照 2026-10-06)
  3. Google Cloud Blog「Announcing the 2025 DORA Report」(2025年9月23日)(参照 2026-10-06)

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