パナソニックで利用禁止の生成AIに3 3万人分の個人情報、学習オフでも3 0日残る
悠 Yu Niibori AIエンジニア プロフィール
出典 8件
要点
対象:社員が仕事で生成AIを使う会社
家族の分には氏名も含まれていた 削除後30日は運営事業者が保持 1,000人を超える漏えいは報告が義務 パナソニック オペレーショナルエクセレンスは1 0月23日、社内で利用を禁じている外部の生成AIに、約33万人分の個人情報がアップロードされていたと発表しました。人事情報システムを導入するプロジェクトの担当者がアップロードしました。1 2
この記事の目次(5節) 家族の分には氏名も含まれていた 運営事業者は削除後3 0日 間保持 1,000人を超える漏えいは報告が義務 9月にはR IZAPでも 学習の設定と保持の日数は製品ごとに違う
同社は、パナソニックホールディングス傘下の会社です。3
データは学習に使わない設定(学習オフ)でアップロードされていました。それでも運営事業者は、利用者が削除した日から3 0日間データを保持します。担当者は発覚の直後に削除したので、3 0日がたつ1 0月2 5日 以降は、運営事業者のもとにも残りません。1
同社はこの生成AIの利用を禁じていましたが、担当者のアップロードを止めることはできませんでした。1
家族の分には氏名も含まれていた
対象は、2 026年4月 時点で人事情報システムに登録されていたデータの一部です。同社は、使った生成AIの名前を明らかにしていません。1
対象 人数 含まれていた情報 従業員 約7万5千人 社員番号・住所・電話番号・メールアドレス(氏名は含まれていない) 元従業員(1978年 〜2026年 度に退職) 約17万8千人 同上 従業員の家族 約5万5千人 緊急連絡先として登録された家族の氏名・住所・電話番号・メールアドレス 2016年 以降に退職した元従業員の家族 約2万6千人 同上
4つを合わせると、約3 3万 人です。1
外部からの不正な操作ではなく、担当者が社内のルールに違反してアップロードしました。1 社内のシステムが違反を検知して発覚したと、産経新聞が報じています。3
運営事業者は削除後3 0日 間保持
発覚の直後に、担当者はチャットの履歴と、業務で使ったパソコンの中のデータを削除しました。1
同社が運営事業者に問い合わせたところ、回答は次のとおりでした。1
アップロードしたとき、データを学習に使う機能は無効だった。ほかの利用者が関連する質問をしても、そのデータを回答に使うことはない
セキュリティと法令順守のため、運営事業者は、利用者が削除した日から3 0日間データを保持する
運営事業者は保持中のデータへのアクセスを厳しく管理し、監査などの要請がない限りアクセスしない。1 0月2 5日 以降は運営事業者のもとにも残らない
アップロードからデータが消えるまで
01
02
03
04
05
9月下旬
発覚の直後
9月29日
10月23日
10月25日以降
人事情報システムのデータの一部を、
利用を禁止している外部の生成AIにアップロード
担当者がチャットの履歴と、
パソコンの中のデータを削除する
個人情報保護委員会に報告
本人への通知の代わりに公表
消してから30日が過ぎ、
AIの運営事業者のもとからも消える
アップロードしてから、運営事業者のもとからもデータが消えるまで。パナソニック オペレーショナルエクセレンスの1 0月23日のお知らせと日本経済新聞の報道をもとに作りました。
学習に使わない設定にしていても、削除したデータがすぐ消えるとは限りません。例えばC hatGPTでは、削除したチャットは、3 0日以内にO penAIのシステムから完全に削除されます。7
安全上の理由や法令で求められるときは、それより長く保持されることがあります。7 この件で使われた生成AIがC hatGPTかどうかは、分かっていません。
ChatGPTの学習の設定がプランごとにどうなっているかは、画像53件の流出の記事 で取り上げました。
1,000人を超える漏えいは報告が義務
漏えいした、またはそのおそれがある個人データが1 ,000人 分を超えると、会社は個人情報保護委員会に報告しなければなりません。5 会社は、漏えいを知ってからおおむね3 〜5日 以内に速報を出します。確報の期限は3 0日 以内です。4
同社は9 月29日に委員会へ報告しました。1
同社は1 0月23日の公表を、本人への通知の代わりとしました。対象者に求める手続きはないとしています。1
委員会は2 023年6月 、生成AIを使う会社に注意を呼びかけました。本人の同意なく個人データを入力した会社は、そのデータが答えを出す以外の目的に使われると、法律に違反するおそれがあります。6
そのため会社は、個人データを入力する前に、運営事業者がそのデータを機械学習に使わないことなどを十分に確かめる必要があります。6
入力してしまったあとの聞き取りと報告の流れは、私用の生成AIに個人情報を入れたときの対応 にあります。
9月にはR IZAPでも
9月3日には、R IZAPも、社員が個人で使っていた外部の生成AIに、特定保健指導の対象者のデータの一部を誤ってアップロードしたと公表しています。8
2件とも、社内のシステムに登録されていた個人データが、外部の生成AIにアップロードされていました。利用を禁じて、あとから違反に気づくだけでは足りず、入力する前に止める仕組みも要ると考えています。
学習の設定と保持の日数は製品ごとに違う
学習の設定と保持の日数は、使う生成AIとプランによって違います。どのA Iを使ってよいか、どのデータを入力してよいか、入力してしまったら誰に知らせるかは、会社が決めて社員に伝えておく必要があります。
社内のルールに何を入れるかは、AI事 業者ガイドラインがA Iを使う会社に求める7 項目 が参考になります。
1,000人 分を超える一覧は、1 回の入力だけで委員会への報告の対象になりえます。社内で使っている生成AIのヘルプを開き、削除したデータを何日保持するかと、学習に使わない設定になっているかを確かめておいてください。
次に読む