要点

対象:AI音声で動画や宣伝を作っている人

  1. 生きている俳優・声優の声は段階ごとに書面の同意
  2. 同意の有効期間は原則として最長1年
  3. 名前を指定して作った声も指針の対象

声のAI利用について、日本俳優連合(日俳連)が10月15日に指針を発表しました。正式名は「音声に関する生成AI利用ガイドライン」です。12

この記事の目次(5節)
  1. 亡くなった俳優・声優の声は、新しい作品には使えない
  2. 生きている俳優・声優の声は、段階ごとに同意を取る
  3. 声優の名前を入れて作った声も、指針の対象
  4. 法務省の見解と東京地裁の判断
  5. AI音声を使う人が確かめておくこと

俳優や声優の声をAIに学習させたり、AIで作った声を公開したりするときの、業界のルールです。亡くなった俳優・声優の声は、本人が関わっていない新しい作品や広告に使うことを、一切認めないとしています。2

法的拘束力はありません。ただ、指針の言う「事業者」は、AIを使って事業をする人で、会社だけでなく個人事業主や個人配信者も含みます。23 AI音声で動画や宣伝を作っているなら、声優の名前をプロンプトに入れていないかを確かめておくと安心です。

亡くなった俳優・声優の声は、新しい作品には使えない

日俳連は、生きている俳優・声優の仕事を奪うおそれが強いとして、新しい作品への利用を一切認めていません。2

場合指針の扱い
本人が関わっていない新しい作品・広告・イベント一切認めない
亡くなった時点で制作が始まっていた続編など未完成の場面を補う範囲なら、例外の余地がある

例外の続編でも、遺族と生前の所属先から書面で同意を得て、生前と同じか、それ以上の利用料を遺族に払う必要があります。遺族と所属先の両方がいない場合や、連絡が取れない場合は、続編でも認めません。2

生きている俳優・声優の声は、段階ごとに同意を取る

生きている俳優・声優の声をAIで使う事業者は、本人から書面で同意を取る必要があります。同意は、少なくとも次の3つの段階ごとに、別々に取ります。2

  1. 声をAIに学習させる
  2. その人の声を再現する音声モデルを作る
  3. 作った音声を作品などで配信・販売する

将来の使い方までまとめて同意を取る契約(いわゆるバイアウト契約)は、指針は認めていません。同意の有効期間は、原則として最長1年です。2

テレビCMやSNS広告に使うときは、商品や広告ごとに、セリフまで含めた同意が要ります。お金も、通常の出演料とは別に払います。2

声優の名前を入れて作った声も、指針の対象

指針は、特定の俳優・声優の声を再現した音声を「デジタル・レプリカ」と呼びます。声を学習させて作った声だけでなく、プロンプトで声優の名前や演じたキャラクターの名前を指定して作った声も、これに当たります。2

わざとでなくても、次の3つがそろうと、無断で作った声とみなされることがあります。2

  • 一般の人が聞き分けられないほど、特定の声優の声に似ている
  • 似ていると知っていたか、注意すれば気づけた
  • その声優の人気や評判にただ乗りしたり、傷つけたりする形で配信した

学習に声優の声が一部でも入っていれば、別の名前を付けた声でも、この3つがそろえば無断で作った声とみなされます。2

汎用の読み上げソフトの扱い

指針は、違反した事業者に、違反した事業の売上に当たる額の賠償を求めています。ただし、特定の人をまねない汎用の読み上げソフトを、個人の表現活動で使う場合は、この賠償の対象から外しています。2

会社やお店の宣伝がこの「個人の表現活動」に入るかは、指針は触れていません。宣伝に使うなら、読み上げソフトの利用規約で、商用の宣伝に使ってよいかを確かめておくと迷いません。

法務省の見解と東京地裁の判断

指針より前の8月に、法務省は、声の無断利用が権利の侵害に当たりうるという見解を示しました。3

9月には東京地裁が、声もパブリシティー権の保護の対象になりうると判断しました。ただし、この裁判では動画の削除の請求は退けています。3

パブリシティー権は、人を引きつける力を本人が独占して使える権利です。3 広告でどこから問題になるかは、AIで作った有名人風の声を店の広告に使えるかで取り上げました。

音声業界からは「厳しく手続きが大変だ」「AIに関する法律も無いのにこれを守れというのか」という声も上がりました。日俳連の池水通洋副理事長は、こうした声について「今までが簡単すぎた」と話しています。3

日俳連は、指針をまず業界の中の基準として広め、声の権利の法制化を国に働きかける方針です。13

AI音声を使う人が確かめておくこと

指針の手続きの多くは、声優と契約する会社に向けたものです。それでも、個人配信者を事業者に含め、名前を指定して作った声まで対象にしている点で、AI音声を使う人にも関わる指針だと考えています。

AI音声で動画や宣伝を作っている人が確かめておくことは、次の3つです。

  1. プロンプトや設定に、声優の名前・芸名・キャラクターの名前を入れていないかを見ます。2
  2. 読み上げソフトの声が誰の声をもとに作られたのか、その人が許しているのかを、提供元の説明や利用規約で確かめます。Google VidsのAIナレーションのように、ツールに最初から入っている声も同じです。
  3. 声の提供元がクレジット(声の出どころの表記)の書き方を決めていれば、動画の説明欄などにそのとおりに書きます。2

会社やお店で使うなら、この3つを社内のルールに書いておくと迷わずに済みます。国の「AI事業者ガイドライン」の利用者向けの項目も、あわせて見ておくと役立ちます。

声の出どころが規約で分からないときは、公開する前に、提供元に問い合わせてください。

出典

  1. 日本俳優連合「音声に関する生成AI利用ガイドライン」発表のお知らせ(2026年10月15日)(参照 2026-10-18)
  2. 日本俳優連合「音声に関する生成AI利用ガイドライン Ver 1.0」(2026年10月15日公表)(参照 2026-10-18)
  3. ITmedia AI+「「今までが簡単すぎた」――声のAI利用に新指針、日俳連 事業者に求める対応は」(2026年10月16日)(参照 2026-10-18)