クラウドセキュリティサービスを手がけるHENNGE(へんげ)は10月1日、子会社「HENNGE AI」を設立しました。HENNGEが国内に子会社を設けるのは初めてです。新会社は取締役2人のほかに従業員を置かず、AIエージェントが実務を担います。AIエージェントは、自ら手順を考えて作業を進めるAIです。営業と一部のバックオフィス業務は、親会社のHENNGEに委託します。13
この記事でわかること
- AIだけで会社が回るかは、利点と課題を洗い出しながら確かめる段階です
- HENNGE社内では、部門や社員が自分でAIの予算を管理できるようになってきたといいます
- 同じような管理の決まりは、サービスの提供を待たずに社内で決められます
この記事の目次(6節)
取締役2人とAIエージェントの分担
新会社の取締役は、代表取締役の今泉健氏と、取締役の永留義己氏の2人です。2人ともHENNGEの役員で、今泉氏は執行役員、永留氏は取締役副社長です。新会社の役職は、いずれも兼務です。12
役割ごとのAIエージェント
今泉氏はHENNGEの公式noteで、新会社の様子を紹介しています。役割ごとのAIエージェントが議論し、仕事を分担して進めているといいます。例えば、取締役の役割を持つAIエージェントに進捗を音声で尋ねると、答えが返ってきます。そのAIエージェントは、分からないことをほかのAIエージェントにSlackで問い合わせてから答えます。2
役割ごとのAIエージェントは、いまも増やしているところだといいます。AIエージェントの動きを監視し、決められた範囲を超えようとしたら止める仕組みも、導入していく考えです。2
従業員を置かない体制は実証の段階
AIだけで会社が回るかは、これから確かめる段階です。設立の狙いの1つは、AIエージェントを最大限に使ってゼロから組織を作ったとき、どんな形がよいかを探ることです。HENNGEは、利点と同時に課題も洗い出すとしています。1
今泉氏もnoteで「正直、うまくいかないことのほうが多いでしょう」と書いています。既存の顧客と事業を持つ会社の中では組織の前提を変えにくいため、根本的な実験は別の会社で行うと説明しています。親会社のHENNGEは、採用を加速させています。2
新会社が開発するAI Gateway
AI Gatewayは、社員と複数のAIモデルのあいだに立ち、接続を一元化して管理する仕組みです。どの社員がどのモデルを使い、利用コストがいくらかかったかを1か所で把握できます。HENNGEが社内で使っている仕組みをもとに、企業向けのサービスとして提供します。1
| 予定している機能 | 内容 |
|---|---|
| ユーザー別のAIモデル管理 | 社員やグループごとに、使えるAIモデルを割り当てる |
| 利用コストの可視化と制御 | モデルごとの利用コストを算出し、予算に応じて上限を設ける |
| セキュリティ設定 | 全社共通のルールから、グループや個人ごとの権限まで設定する |
| HENNGE Oneとの連携 | 同社のID管理サービスと組み合わせ、シングルサインオンや利用端末の制限に対応する |
| 人以外のIDの認証(将来構想) | AIエージェントなど人以外が使うIDを管理・認証する基盤に広げる |
連携先には、ClaudeやChatGPTなどの生成AIチャットツール、Visual Studio Codeなどの開発ツール、Difyなどのエージェント構築基盤を挙げています。提供開始は、同社の2027年9月期中(2027年9月まで)の予定です。料金と利用条件は、サービス開始時に公表するとしています。1
HENNGE社内での使い方
HENNGEの社内では、AI Gatewayの元になった「AI Proxy」という仕組みを通して、ClaudeやGeminiを使っています。最初は、AIモデルの利用コストが全社で議論になりました。いまは部門や社員がそれぞれ工夫し、自分たちで予算を管理できるようになってきたといいます。2 AIへの接続を一元化する考え方は、LLM(大規模言語モデル)を使うアプリの費用を後から説明できるようにする方法でも解説しています。
AIを使う社員が増えた会社の課題
HENNGEによると、IT部門以外の社員が、自分でAIエージェントを作ったり使ったりする場面が増えています。一方で、セキュリティを確保しにくいことや、運用の費用が膨らむことが壁になっています。その結果、概念実証(PoC)の段階にとどまる会社も少なくないとしています。1
例えば、営業と経理の担当者が、別々のAIサービスを個人契約で使っている場合を考えます。会社は、誰がどのAIに会社の情報を入力し、毎月いくら払っているかを把握しにくくなります。退職後もアカウントが残り、会社の情報に触れられる状態が続くおそれもあります。
法人向けのAIサービスには、社員が使える機能を、管理者が役割ごとに絞れるものもあります。ChatGPTの例は、ChatGPTのプラグインを会社で使う前の設定で解説しています。
AIを使う前に社内で決めておくこと
AI Gatewayの機能を見ると、AIを使う会社が先に決めておくべきことが分かります。サービスの提供を待たなくても、次の3つは社内で決めておけます。
使えるモデルと月の上限額
誰がどのAIサービスを使えるか、月の上限額をいくらにするかを決めます。上限を超えそうになったとき、誰に通知するかも決めておきましょう。
法人契約か個人契約か
法人契約のアカウントで使うのか、社員の個人契約を認めるのかを決めます。法人契約なら、退職した社員のアカウントを会社の側で停止できます。
AIエージェントを監視する仕組み
AIエージェントに実務を任せるなら、その動きを監視し、範囲を超えたら止める仕組みが要ります。HENNGE AIも、こうした仕組みを導入していく考えです。外側から動きを制限して監視する基盤は、NVIDIAが発表したエージェントの安全基盤の記事で解説しています。
自社の状況に合わせて、まず取り組むこと
- 社員が個人契約でAIを使っているなら、まず誰がどのサービスを使っているかを書き出しましょう
- 法人契約のプランを使っているなら、管理画面で、社員が使える機能と費用の上限の設定を確かめてください
- AIエージェントに実務を任せるつもりなら、まず権限・監査・緊急停止の設計を読んでおきましょう
出典
- HENNGE「HENNGE、AI活用支援サービスを展開する新会社『HENNGE AI』を設立」(2026年10月1日)(参照 2026-10-02)
- HENNGE公式note「HENNGE AI株式会社を設立しました、提供したいのはAI活用の組織カルチャー」(今泉健)(参照 2026-10-02)
- ITmedia AI+「人間は『取締役2人だけ』 実務をAIが担う新会社、セキュリティサービスのHENNGE」(2026年10月1日)(参照 2026-10-02)

