会社で契約したMicrosoft 365 CopilotとGoogle WorkspaceのGeminiでは、誰がいつAIを使ったかが、初期設定のままでも監査ログに記録されます。保持期間は、Copilotが標準の監査機能で180日、Geminiが6か月です。ただし、社員が入力したプロンプトの内容は、監査ログには記録されません。入力内容を確かめるには電子情報開示の機能が要り、どちらも使えるプランが限られます。
この記事でわかること
- 利用のルールを作った企業は7割を超えますが、実際の使われ方を点検している企業は1割に届きません
- Gmailなどに組み込まれたGeminiの利用は、入力内容がVaultの保存の対象になりません
- 利用記録を確かめる前に、社内規程に書いておく4つのことがあります
この記事の目次(8節)
入出力を記録している企業は約1割
生成AIの入出力データを記録・保管している企業は11%です。 デロイト トーマツが2026年5〜8月に上場・非上場企業に実施し、397社が回答した調査(9月29日公表)の結果です。9割超の企業が、すでに何らかの形でAIを使っています。1
ルールはあっても、点検はしていない
ガイドラインを作って周知している企業は72%、研修などの対策をとっている企業は54%でした。一方で、AIの出力について、定期的な監査や人によるレビューを行っている企業は8%です。デロイト トーマツは、AIの利用状況や出力内容を組織が確認する取り組みが広がっていないとみています。1 この調査は9月30日のAIニュースでも取り上げました。
記録が要るのは問題が起きたとき
例えば、社員20人の会社に、取引先から「うちの見積もりの金額をAIに入れていないか」と問い合わせが来たとします。記録がなければ、社員一人ひとりに聞いて回るしかありません。監査ログで確かめられるのは、誰がいつAIを使ったかまでです。金額を入力したかどうかは、後で説明する電子情報開示の機能で調べます。
監査ログと電子情報開示の違い
監査ログとは、誰が・いつ・どのアプリでAIを使ったかの記録です。 入力内容は、MicrosoftもGoogleも、電子情報開示(訴訟や社内調査のためにデータを保全・検索すること)の機能で調べます。
| 項目 | Microsoft 365 Copilot | Google WorkspaceのGemini |
|---|---|---|
| 監査ログ(誰がいつ使ったか) | Purviewの[監査]。初期設定で記録 | 管理コンソールの[監査と調査]。初期設定で記録 |
| 監査ログの保持期間 | 180日(監査(Standard)) | 6か月 |
| 入力内容を調べる機能 | 電子情報開示 | Vault(Geminiアプリの会話) |
| 入力内容を検索できるプラン | Microsoft 365 E3・E5などにCopilotライセンスを追加した契約 | Business Plus、Enterprise Standard、Enterprise Plusなど |
監査ログは、どちらの製品も初期設定のまま使えます。一方、入力内容の検索は、プランによっては使えません。
Microsoft 365 Copilotの利用を確かめる方法
監査ログはPurviewの[監査]で検索する
Copilotのライセンスを持つ社員がCopilotを使うと、そのやり取りが監査ログに自動で記録されます。組織で監査が有効なら、Copilot用に設定を足す必要はありません。2 標準の監査機能「監査(Standard)」は、Microsoft 365 Business Basic/Business Standard/Business Premiumにも含まれます。4
記録される項目は、使った人、日時、アプリ(WordやTeamsなど)です。応答の作成にCopilotが参照したファイルやメールの名前と、その秘密度ラベル(社外秘などの区分)も記録されます。一方、プロンプトと応答はIDだけが記録され、本文は含まれません。2
検索は、Microsoft Purviewポータルの[監査]で、[アクティビティ - 操作名]欄に「CopilotInteraction」と入力して行います。2 監査(Standard)の保持期間は180日で、検索結果はCSV形式でエクスポートできます。3
入力内容は電子情報開示で検索する
Copilotへのプロンプトと応答は、使った社員のメールボックスに保存されています。管理者は、電子情報開示で検索できます。検索するには「電子情報開示マネージャー」の役割グループに入っている必要があります。5
ただし、使えるプランは限られます。「Microsoft Purview サービスの説明」によると、Copilotのやり取りを検索・エクスポートできる契約は、Microsoft 365 E3・E5などにCopilotを追加したものです。同文書のライセンス一覧に、Microsoft 365 Business Basic/Business Standard/Business Premiumは載っていません。4 Businessプランの会社は、入力内容まで確認できるかを、販売代理店かMicrosoftに問い合わせておきましょう。
Google WorkspaceのGeminiの利用を確かめる方法
監査ログは[監査と調査]で検索する
Google ドキュメントやGoogle スプレッドシートなどでのGeminiの利用は、管理コンソールで検索できます。場所は[レポート]→[監査と調査]→[Gemini for Workspace のログイベント]です。検索には「監査と調査」の管理者権限が要ります。6
記録される項目は、操作した人のメールアドレス、日時、操作の種類です。操作の種類は、会話・生成・要約などに分かれます。ヘルプに載っている項目の一覧に、入力内容はありません。検索結果は、スプレッドシートかCSV形式で10万行までエクスポートできます。6 保持期間は6か月で、管理者は変えられません。7
Geminiアプリの会話はVaultで検索する
Geminiアプリ(ウェブとスマートフォン)の会話は、Google Vaultで検索でき、プロンプトと回答をエクスポートできます。Vaultは、データの保持と電子情報開示のためのGoogleのツールです。89 2026年6月からは、保持ルールで保持期間を決めたり、記録保持(リティゲーション ホールド)を設定したりもできます。社員が会話を削除しても、Vaultの設定が優先されてデータは残ります。9
Googleの告知によると、対象のプランはBusiness Plus、Enterprise Standard、Enterprise Plusなどです。Business StarterとBusiness Standardは対象外です。また、GmailやGoogle ドキュメントに組み込まれたGeminiの利用(メールの下書きなど)は、この保持ルールの対象になりません。Googleは、これらの機能でのやり取りは、Geminiアプリの会話とは保存の仕組みが違うと説明しています。9 社員がGmailでGeminiに返信の下書きを書かせても、会社が確かめられるのは使ったという記録までです。
ChatGPTを会社で使っているとき
公式ヘルプで仕様を確認できなかったため、ChatGPTの法人向けプランは比較の対象から外しました。契約しているなら、誰がいつ使ったかの記録があるか、保持期間は何日か、入力内容を会社が検索できるかの3点を確認しておきましょう。
社員が私用のアカウントでAIを使った場合、その利用は会社の監査ログに残りません。その場合の対応は、私用の生成AIに個人情報を入力したときの対応で扱っています。
利用記録を確かめる前に社内規程に書くこと
個人情報保護委員会のQ&A(Q5-7)は、個人データを扱う社員をビデオやオンラインで監視(モニタリング)するときの留意点として、次の4つを挙げています。10
- モニタリングの目的をあらかじめ決め、社内規程などに書いて社員に示す
- モニタリングの責任者と、その権限を決める
- 実施のルールを作り、運用する人に徹底する
- ルールどおりに行われているかを確かめる
AIの利用記録を確かめる場合も、これに準じて決めておけば、社員に説明しやすくなります。総務省と経済産業省のAI事業者ガイドラインが求める事項は、AI事業者ガイドラインの7項目で扱いました。
導入時に確かめる5つの項目
問い合わせが来てから初めて監査ログを開こうとすると、権限がなくて見られないことがあります。次のチェックリストのうち、2つ目の確認は管理者が試せば5分ほどで終わります。
監査ログのチェックリスト
□ 監査ログを確認できる管理者を2人選任済み
□ 自分でAIを1回使い、その操作が監査ログに出ることを確認済み
□ 保持期間(Copilotは180日、Geminiは6か月)を社内で共有済み
□ 自社のプランで入力内容まで検索できるかを確認済み
□ モニタリングの目的と責任者を社内規程に記載済み
管理者が1人だけだと、その人が休んでいる日に調べられないため、2人にしておくと安心です。2つ目は、画面に慣れておくための確認です。Geminiの記録は、数分以内に表示されるとされています。7
自社の状況別にやること
- 180日より長く残す決まりがあるなら、Microsoft 365では上位の「監査(Premium)」で1年まで延ばせます。追加のライセンスで最長10年です。Geminiの保持期間は変えられないので、定期的にエクスポートして保管しておきましょう。37
- 何を入力してよいかのルールがまだないなら、監査ログを確かめる前にIPAの5項目に沿ったセキュリティ対策の点検から始めてください。
- 顧客の個人情報をAIで扱うなら、個人情報保護法の改正を受けて、AIを使う会社が確かめる項目を次に見ておきましょう。
出典
- デロイト トーマツ「企業の不正リスク調査白書 Japan Fraud Survey 2026-2028」ニュースリリース(2026年9月29日)(参照 2026-09-30)
- Copilot および AI アプリケーションの監査ログ(Microsoft Learn)(参照 2026-09-30)
- Microsoft Purview の監査ソリューションについて説明します(Microsoft Learn)(参照 2026-09-30)
- Microsoft Purview サービスの説明(Microsoft Learn)(参照 2026-09-30)
- 電子情報開示で AI アプリケーション データを検索および削除する(Microsoft Learn)(参照 2026-09-30)
- Gemini for Workspace のログイベント(Google Workspace 管理者ヘルプ)(参照 2026-09-30)
- データの保持期間とタイムラグ(Google Workspace 管理者ヘルプ)(参照 2026-09-30)
- Vault を使用して Gemini アプリを検索する(Google Vault ヘルプ)(参照 2026-09-30)
- Google Vault now supports retention rules and litigation holds for Gemini app(Google Workspace Updates・2026年6月11日)(参照 2026-09-30)
- 「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A(個人情報保護委員会)(参照 2026-09-30)

